新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより生まれた新しい言葉の一つ「ロックダウンジェラシー」。どんなときに引き起こされることが多く、その状態に引き込まれやすい人はどんな人か。それに対して、どう対処すればいいかなど打開のアイデアも含めて記述する。
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ロックダウンジェラシー(Lockdown jealousy)とは、コロナ禍で誕生した新しいワードのひとつ。
欧米などで外出を厳しく制限する「ロックダウン」が各地で行われたが、それと嫉妬を意味する「ジェラシー」をかけ合わせた造語が生まれた。
実は、ロックダウンにともない、妬みや嫉妬を抱える人が増えたためだ。自宅に突如閉じこもることを強いられた人々は、自由を奪われたように感じ、同時に未知の感染症への不安にも怯えた。それらを紛らわすために、InstagramやFacebookなどのSNSを見る人はいつも以上に増えただろう。
しかし、そこで目にした他人の生活が輝いて見え、妬みや羨ましさを強く感じてしまうことを「ロックダウンジェラシー」と称した。
そもそも2020年4月、英メディア「Metro」でロックダウンジェラシーと同意義の「アイソレーションエンヴィ」という言葉が紹介され(※1)、そのような言葉が媒体で登場するようになったようだ。他の海外メディアでは「Lockdown envy」という表現も見受けられた。
Photo by Kate Torline on Unsplash
ロックダウン下で、なぜ嫉妬が増幅したのか。
先述したように、その大きな要因のひとつがSNSだと言われている。
たとえば、Instagramでつながる友達が、しゃれたインテリアに囲まれながら家族や恋人とくつろぐ写真をアップしたとする。または、ひとり暮らしの知人が、おうち時間を活かして写真映えする凝った料理をつくり、Facebookに投稿したことがあったかもしれない。
これまでも見ていたはずの友人・知人の日常が、ロックダウンを期に急に輝いて見えるようになったとしたら…。自分はこんなにも孤独でさえない日常を送っているのに、とつらい気持ちになっても仕方がないだろう。
在宅ワークの推奨などで、Zoomなどのオンラインミーティングのツールが普及したこともロックダウンジェラシーをさらに広めたかもしれない。
たとえば、日本の自粛期間中に話題になったZoom飲み会。バーチャルの背景も選べるとはいえ、知り合いの部屋が想像以上にスタイリッシュだったら軽くショックを受けるかもしれない。
いままで知る機会がなかった、誰かのプライベートをかいま見てしまったことで、心が揺らぐことがロックダウンによって急増した。さらに、孤独や感染症への不安と緊張感も常について回る。
それらが相まって、 「自分は寂しく苦しいのに、友達はロックダウンの間も充実していて妬ましい」という気持ちへと転換していくのだろう。
嫉妬や妬みは、他者に知られたくない恥ずべき感情だと感じる人が多い。そのため、暗い気持ちを誰にもシェアできず、どんどん闇を深くしてしまうという負のスパイラルに陥る人もいたようだ。
Photo by Dylan Ferreira on Unsplash
具体的にどんな人がロックダウンジェラシーのトラブルに巻き込まれてしまうのか、具体的に見ていこう。
嫉妬してしまう側になりやすいタイプや傾向はあるのだろうか?
どんな人が嫉妬しやすいかについて、「アイソレーションエンヴィ」を最初に取り上げた「METRO」では、以下ようなポイントがいくつか挙げられていた。
ひとり暮らしで比較的狭い部屋に暮らす人
記事では、ロンドン在住のフリーランスライターでシングルの女性のコメントを紹介。いままでは都市部にある小さくてきれいなアパートを気に入っていた。だが、ロックダウンで広くて庭のある郊外の家を持つ友人が、パートナーや家族と親密な時間を過ごすSNSで見るたびにうんざりしたと述べている。
フリーランスや非正規労働者などの就業や収入が不安定な人
上記の女性はライターとして活躍していたものの、ロックダウンで取材にも行けなかったとそうで、収入も一時的に途絶えたかもしれない。非正規雇用や、ロックダウンで倒産した企業や商店に勤める従業員も、家のなかで不安な時間を過ごしていた可能性は高い。
エッセンシャルワーカーなど、休めない仕事の人
逆にコロナ禍において、エッセンシャルワーカーは社会になくてはならないことを改めて知らしめた。社会活動を保つために、コロナへの感染リスクにおびえながら働き、疲れて帰った部屋で、知人の充実した「ひとり時間」の写真や映像はあまりにも眩しく見えただろう。
完璧を求める人
上記のような仕事でなくても、完璧を求める人、日ごろ他者からの評価が高い人も嫉妬心を抱きやすいようだ。知人や友人のように充実した「Stay Home」を発信しなければ…と、自分にプレッシャーをかけてしまうため、それが転じて嫉妬や妬みになっていくこともあるという。
嫉妬する人がいるということは、嫉妬をされる側もいるということ。
これまでに繰り返し述べているように、ロックダウン(または、自粛期間)の間、プライベートがいつも以上に充実して見えた人は要注意。
在宅ワークで家族との時間が増えた人
リモートワークによって、家族と過ごす時間が増えたことで、ふだんできなかったパートナーとのクッキングや、子どもたちとのキャッチボールを楽しんだ人たち……。ささやかな心温まるワンシーンが、孤独な誰かの妬みを買うこともなくはない。
豪華なインテリアや立派なガーデンを持つ家に住む人
SNS映えするような、おしゃれなインテリアの並ぶ部屋や、開放感のある緑あふれる庭を持つ家などに住む人。生活レベルが高い人は、それだけで憧れであり、嫉妬の対象にもなりうる。
正規に雇用され、比較的感染の不安や失職の不安がない人
ロックダウンでは経済活動も大きくチェンジした。
職を失ったり収入が減る人、感染する不安を抱えながらも生活のために働く人が少なくない。孤独と不安を抱える人々にとって、SNSのキラキラした世界にジェラシーを覚えないほうが難しいかもしれない。
Photo by Ross Sneddon on Unsplash
ロックダウンジェラシーのトラブルに巻き込まれないためにはどうしたらよいか。
もっとも手っ取り早いのは、SNSを見る時間を減らすことだろう。そうすることで、誰かと自分を比較しなくて済むからだ。
SNSのほか、とくにやることがないと嘆く人は、かつて好きだったこと、忙しくてできなかったことを思い出してみよう。いまこそ、再度トライするよい好機。熱中できることが見つかれば、他人の日常はさほど気にならなくなるものだ。
そして可能であれば、嫉妬で苦しんでいることを誰かに打ち明けてみよう。嫉妬や妬みは人に知られたくないよくない感情ととらえがちだが、誰もが持っている感情。考え方の近しい友達に思い切って打ち明けて、共感を示してもらえるだけで随分と心が軽くなるのではないだろうか。
また、緑の効果も積極的に取り入れたい。この11月、専門誌「ECOLOGICAL APPLICATIONS」に日本人研究者たちが発表した記事では、緑が窓から見えたり、緑のある公園などの施設に行く頻度が高いほど、孤独感を減らし、精神的な幸福度が保たれるという(※2)。
たとえば、天気のよい日に仕事の行き帰りや、スーパーマーケットへの買い物の途中に、少し公園や緑地まで足を延ばしてみる。小さくて懸命な命の営みやフレッシュな風を受け、心が徐々に穏やかになるの感じられることだろう。
※1
METOR.co.uk
https://metro.co.uk/2020/04/14/cope-isolation-envy-jealous-everyones-lockdown-setups-12553292/
※2
ECOLOGICAL APPLICATIONS
A room with a green viewhttps://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/eap.2248?casa_token=VeRT_XPFsBwAAAAA%3ABZDGqugtmif6KMgBqcXctF8L8VTGRVj24hRrUMcfiGiqvA9945dZZ9OT0WTT52n05LYyYv7bD28lBV8
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