CO2(二酸化炭素)削減が環境問題における喫緊の課題と言われるなか、日本ではカーボンリサイクルが推進され始めている。思うように削減できないCO2を炭素資源と捉えた技術開発は今後どのような道を歩んでいくのだろうか。ロードマップや現状、課題、事例などを解説していく。
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エレミニスト編集部
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カーボンリサイクルとは炭素資源(カーボン)+再利用(リサイクル)を合わせた言葉だ。その意味はCO2(二酸化炭素)を炭素資源と捉え、炭素化合物として再利用していくことである。
環境問題におけるCO2の排出量削減は以前から重要視されている。地球温暖化に大きな影響があるからだ。しかし日本ではなかなか理想通りの成果を上げられていない現状がある。そこで発想の転換ともいえる、このカーボンリサイクルが提唱されることになった。
もともと日本は世界各国のなかでもCO2排出量が多い国家である。2018年には12億4,400万tを排出している。これは中国、アメリカ、インド、ロシアに次ぐ世界5位の量にあたる。(※1)
日本のCO2排出量の多さは、エネルギー供給の原料が大きな原因だと考えられる。日本の発電の8割は化石燃料による火力発電であり、どうしてもCO2の排出を伴うため、経済活動に欠かせない発電エネルギーをすぐに大きく減らすことは難しい。だが、CO2の排出量、地球温暖化を考えると、早急な対策が望まれる事実に直面する。
そこでカーボンリサイクルが提唱された。カーボンリサイクルはCO2を資源として再利用する方法であるという性質に注目が集まった。CO2の再利用先として成功すれば、地球温暖化や化石燃料の削減に期待できる。
2019年1月、ダボス会議で安倍総理がCO2リサイクルの重要性に触れた。同年2月には資源エネルギー庁にカーボンリサイクル室が設置される。6月には「カーボンリサイクル技術ロードマップ」が発表され、本腰を入れた推進が始まった。(※2)
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2019年に本腰を入れ始めたカーボンリサイクルはまだ若い。ようやくロードマップが示され、開発と普及活動が始まったばかりだ。資源エネルギー庁のカーボンリサイクル技術ロードマップ検討会が発表したロードマップでは、CO2の再利用先を示してイノベーションの加速を試みている。
カーボンリサイクル先としてロードマップに示されているのは、「化学品・燃料・鉱物・その他」である。(※3)
化学品は主にポリカーポネートの代替品として、燃料は主にバイオ燃料やバイオマス由来のバイオ燃料として、鉱物は主にコンクリート製品やコンクリート建造物の製造過程に必要な資源としてのリサイクルが挙げられている。
いずれもイノベーションの加速によって段階的なフェーズクリアが予想されている。2020年以降のフェーズ1では研究・技術開発・実証と拠点整備への着手が計画されている。フェーズ2は2030年頃を予定し、実用化、製造技術の進展を目指す。2050年以降予定のフェーズ3は技術の低コスト化に重点を置く。(※4)
2020年に開催されたカーボンリサイクル産学官国際会議では、日本と米国の協力覚書を締結した。情報共有や専門家の相互派遣に重点を置いた内容だ。江島経済産業省副大臣は同会議において「カーボンリサイクル3Cイニシアティブ」を提示した。覚書の内容に加え、地方自治体への情報提供・広報の促進を記している。(※5)
民間主導のカーボンリサイクルを推進する動きもある。2019年8月、「一般社団法人カ
ーボンリサイクルファンド」が設立された。カーボンリサイクル技術のイノベーションや研究資金の調達、広報・普及、政策提言・調査を行い、民間のカーボンリサイクル研究を後押ししている。
カーボンリサイクル実施の基礎となる技術の開発事例である。排出されるCO2を効率的に回収するため、アミン法と呼ばれる化学吸収法を実施し、アミン飛散を評価され今後のカーボンリサイクル事業への活用を目指す。2030年以降には発電におけるCO2排出量3,600万tの削減効果が期待される。
製鉄所の高炉から排出される大量のCO2を分離回収・処理を行う。物理吸着法のひとつであるPSA(圧力スイング吸着)法を用いて実施した。プロセスのさらなる効率化とコスト削減を目指している。2030年には製鉄所の排出CO2を20%削減する目標を掲げている。
化石資源の大量消費によって発生するCO2の削減を目的とした技術である。代替資源として廃棄物を利用することが特徴的だ。廃棄物由来の資源からエタノールやエチレン、ブタジエンを合成するプロセスの開発を目指す。従来の方法による合成よりもCO2の排出量削減が期待できる。
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カーボンリサイクルは日本国内ですでに多くの企業が開発に着手している。CO2の削減が重視される現代、世界的な注目が集まることは必至だ。
しかし、最大の障壁としてコスト面が立ち塞がる。革新的な技術である分、コストがかかることはやむを得ない。それでも将来的な普及を考えたとき、コスト削減は必須と言えるだろう。
※1 2018年度(平成30年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について|環境省
https://www.env.go.jp/press/107410.html
※2 「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を策定しました|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190607002/20190607002.html
※3 カーボンリサイクル技術ロードマップ|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190607002/20190607002-1.pdf
※4 カーボンリサイクル 3C イニシアティブ プログレスレポート
https://www.meti.go.jp/press/2020/10/20201015005/20201015005-2.pdf
※5 「第2回カーボンリサイクル産学官国際会議2020」を開催|国立研究開発法人 新絵ネルギー・産業技術総合開発機構
https://www.nedo.go.jp/ugoki/ZZ_100985.html
※6 カーボンリサイクル技術事例集
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/carbon_recycling/pdf/tech_casebook.pdf
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