バングラデシュが起源とされる「マイクロクレジット」は、貧困層に向けられた無担保少額融資である。融資を受けられないほど貧しい人々に対し、経済的自立を成功させるための資金貸付は、貴重な取り組みとして評価されている。
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マイクロクレジットとは、無担保で小口融資を行う融資手段である。バングラデシュのグラミン銀行が初めて提供し、現在に至るまで大きな注目を集めている。銀行からの一般的な貸付を受けられないほど貧しい人たちが対象となる。
マイクロクレジットは、貧困層の自立支援の意味が強い。新規事業の立ち上げや職業訓練の受講費用、家族の生活環境を整える目的での利用が多く、とくに女性への融資が目立つ。
貧困層への無償援助ではなく、返済義務を負うものである。返済義務は借入する貧しい人々の自助努力を促し、貧困からの脱出を成功させる結果につながっている。
マイクロクレジットの理念をもとにした「マイクロファイナンス」も展開されている。いまや世界中で見られる金融サービスだ。マイクロクレジットは融資のみであることに対し、マイクロファイナンスは融資に加え、貯蓄や保険なども取り扱っている。
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マイクロクレジットの歴史は1970年代までさかのぼる。1976年、バングラデシュのグラミン銀行が世界初のマイクロクレジット事業に乗り出した。チッタゴン大学教授、ムハマド・ユヌス氏の発案・運営である。
運営開始当初、貧困層への無担保融資は貸し倒れにつながるという冷ややかな見方が多かった。しかし実際の返済率は98%という非常に高いものであった。マイクロクレジットは大成功をおさめたと言える。周辺の開発途上国でも次々に取り入れられた。
高い返済率を生じさせた理由は、グラミン方式と呼ばれるグループレンディングである。血縁関係にない5人でグループを組み、共同で借入を行う方法だ。1人が返済不能に陥ると他の4人も今後借入不能となる。その事態を避けるため、グループで協力して返済を行うのである。
このとき、グループを組むメンバーは意識的に「返済能力がありそうなメンバー」を選び合う可能性が高い。結果として金銭に対する責任感が強いグループが生まれ、高い返済率につながると言える。
しかしグループレンディングは相互監視や返済の肩代わりといったトラブルにつながるケースもあるため、その効果を疑問視する声が生まれた。2002年、グラミン銀行はグラミン方式を変更し、個人のみの返済も可能であるグラミン総合的システムへ移行した。
マイクロクレジットは発展途上国を中心に大きく広がり、多くの貧困層の自立を成功させている。90年代にはそのノウハウが世界中で注目され、97年に「マイクロクレジット・サミット」が開催された。
国連は2005年を「国際マイクロクレジット年」としている。また、2006年にはマイクロクレジットの祖であるムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞した。
現在マイクロクレジットはマイクロファイナンスとして発展し、世界中で貧困層に対する融資を行い、成果を出している。
2005年、サンフランシスコのマイクロファイナンス機関「Kiva」は、インターネットを通じて小口融資を募り、発展途上国へ融資する投資システムをリリースした。Kivaは投資先と投資家の顔が見える斬新なシステムの採用やインターネットの効果的な利用法として注目を集め、11億円のファンドを生み出した。
このような動きを経て、マイクロファイナンスは社会的意義のある投資に興味を持つ投資家にも、よりいっそう注目されるようになった。その投資金はマイクロファイナンス機関の貴重な資金となっているのである。
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前述のとおり、マイクロクレジットは5人のグループレンディングとなる。マイクロクレジットを普及させた優れた仕組みだ。現在はより柔軟なグラミン総合的システムに進化を遂げて継続されている。返済率は相変わらず高い水準を保っており、今後も貧困層の自立に大きな影響を与え続けると考えられる。
マイクロクレジットの優れた仕組みの1つとして、女性への融資を積極的に行うものがある。マイクロクレジットを行う団体のなかには、主な融資先を女性にしているケースもあるほどだ。
女性は家族の世話や子どもの養育を担うことが多い。そのため女性の貧困は、子どもの社会性や成長性を阻害する要因と考えられる。そして女性は収入を家庭のために使う傾向があり、収入が上がれば家庭内の地位も向上すると考えられる。
女性がマイクロクレジットを利用するメリットは、まさに地位の向上である。マイクロクレジットを元手に仕事を得ることにより社会的地位が、収入を確保することにより家庭内の地位が向上するのである。
発展途上国の女性の地位は社会的、家庭内のいずれも高いとは言えない。しかし、マイクロクレジットを利用して貧困からの自立をはかることで地位向上の効果が期待できる。
国連婦人開発基金はエルサルバドルに対し、マイクロクレジットを促進している。グラミン銀行でもマイクロクレジットに言及する際には女性への好影響を強調する。貧困層、とくに女性にとって、マイクロクレジットは意義のある継続的な事業だと言えるだろう。
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