フードファディズムとは、食べものや栄養が健康に与える影響を、過大に信じたり、評価したりすることである。フードファディズムは健康に影響を及ぼすだけでなく、フードロスの原因にもなる。フードファディズムについて、実例や問題点を見ていこう。
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フードファディズムとは、食べものや栄養が健康に与える影響を、過大に信じたり、評価したりすることである。
1950年代にアメリカで提唱された概念で、日本では1990年代後半に、栄養学者の高橋久仁子氏によって紹介された。フードファディズムは、テレビ番組やCMなどで食べものや栄養の効果・効能が過大に宣伝され、さまざまな弊害を引き起こすようになり、問題視されるようになった。
とくに現代では、食べものが「おいしさ」や「価格」だけでなく、「健康的かどうか」という点からも評価されるようになり、特定の食べもののブームが定期的に発生するなど、フードファディズムは社会的に影響を持つようになっている。
2005年ごろ、テレビ番組で「寒天が健康にいい」と紹介されたところ、大規模な寒天ブームが発生した。寒天メーカーは大幅な需要増に対応するため増産に追われたが、ブームが終わると売り上げや利益は減少に転じ、立て直すまで数年を要した。
2006年に、とあるテレビ番組が「炭水化物の吸収を阻害する白インゲン豆を食べれは太らない」と紹介した。番組放送後、白インゲン豆を食べて食中毒になる人が続出し、報告された患者数は158人にのぼった。
白インゲン豆に含まれる人体に有害な成分は加熱することで無害化するが、加熱すると炭水化物の阻害物質も効果を失うため、番組が加熱せずに食べることを推奨したことが原因だった。
寒天ブームと同時期に、医師が書いた「牛乳は健康に悪い」という内容の本がベストセラーになった。この本の影響で、右肩上がりの成長を続けていた牛乳の生産量が減少に転じ、その後回復することはないなど、現在でもなお影響は続いている。
2020年、「納豆が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に有効」という噂から、納豆の買い占めが発生し、一時品薄になった。なお、納豆が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に直接有効であるという根拠はない。
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フードファディズムによる特定の食品へのブームは、生産者にとって過度の負担を強いることになる。ブームに対応するため増産に追われたメーカーや農家は、翌年は一層の需要増加に対応するために、その食品を増産する。しかし、ブームが終わって売れなくなると、最悪の場合経営難にもつながりかねない。
それだけでなく、フードファディズムはフードロス(食品ロス)を引き起こす可能性がある。農家が大量生産した野菜は廃棄野菜となる可能性が高く、食品メーカーが製造した食品は在庫過多となり、やがて廃棄される。
フードファディズムの原因は、企業による広告宣伝や、メディアによる情報の切り取り方によるところが大きい。フードファディズムを避けるために必要なことは、消費者が情報に踊らされず、それが正しいかどうかしっかりと見極めることだ。
食べれば万病を解決する食べものはこの世界に存在しない。逆に、体に毒でしかない食べものも存在しない。そして、ありとあらゆる食べものは、食べ過ぎれば体に悪い影響を及ぼす。いろいろな食べものをバランス良く食べることが、一番優れている健康法だということを改めて考えるべきだろう。
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