ここ最近欧米を中心に注目を集めている、コラプソロジーとはなにを指すのか。言葉の意味や提唱されたいきさつ、どこでどう広まっているのかについて記述。また、人類が崩壊へと向かっているとされる考え方をどうとらえ、そこから何を得られるかについても考察する。
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コラプソロジー、日本語で崩壊学と訳される。フランスを中心に欧米を中心に盛り上がりを見せている学問分野。
近年の急激な気象変動や、資源の枯渇などによって、われわれが謳歌してきた現代的な生活、文明が短期間のうちに崩壊していくという考え方だ。
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コラプソロジーがフランスで盛り上がり始めたのは、ここ数年のこと。
そもそも、2015年に仏生物学博士、パブロ・セルヴィーニュとベルギー出身の環境コンサルタント、ラファエル・スティーヴンスによる共著「Comment tout peut s’effondrer:Petit manuel de collapsologie à l’usage des générations présentes」の表題が発端と考えることが多い。
(英語版「How Everything Can Collapse」、日本版「崩壊学――人類が直面している脅威の実態」(草思社)以下、「崩壊学」と記述)
学術本でありながらベストセラーになったことから、「崩壊学」という考え方がフランスを中心に注目されるようになった。
この著書では、気象学や農学、食料、燃料、エネルギー、経済、動物、植物学、医学、社会学、歴史学、災害史など、学問の枠を超えて多種多様な分野のデータを比較。
そこから、人類が崩壊へと向かっている道筋が明らかになったとしている。
ただ、AFPによれば「この理論を最初に提唱したのは、フランスの『モメンタム・インスティテュート』」とあり(※)、これが上記の著書で広く伝わったとしている。
一方、米進化生物学者のジャレド・ダイアモンド博士による2005年の著書「文明崩壊」までさかのぼるという見方もあるようだ。
※ AFP「コプラソロジー」私たちが知る世界は崩壊するのか?https://www.afpbb.com/articles/-/3282110
「崩壊学」の共同執筆者であるセルヴィーニュ氏によると、多くの人命が失われて文明が崩壊する要因は大別して3つあると指摘する。
1つは、「戦争」。
2つ目は、「病気」。
3つ目は「飢餓」だ。
これら3つの要因すべてが、人間性に依存するところが大きい。そのため、人間性の持つ概念、良識といったものが消えた途端に、人々が野蛮性をあらわにするため一気に崩壊へと向かうと氏は考えている。
ちなみに、「崩壊学」に対して、データの充実をたたえている一方で、データから導き出せるリスクをただ羅列しているに過ぎないとの懐疑的な見方もあるのを覚えておきたい。
フランスでは、2018年から断続的に「黄色いベスト運動」でデモが頻繁に発生。社会不安、貧富の格差への不満などが蔓延していたことも、この本がベストセラーになるのを後押ししたのではないかと言われている。 いつの世も予言の書は、次代に呼応するものだ。妄信せず、冷静に真実を読み解きたい。
上記の3つのほかに、人類が崩壊へと向かうトリガーになるとみられている要因について、さらに3つ見ていこう。
セルヴィーニュ氏によれば、2006〜2007年を頂点に、原油生産は減産に転じた。
電源を発電するためのエネルギーが失われれば、水や食料、移動手段の確保も困難になるため、産業経済の根幹がくずれてしまうという。
たしかに、世界的に循環型の再生エネルギーへ移行を進めているとはいえ、原油を代替となる決定打がいまのところまだない。
石油はエネルギーのほかに、プラスチックなどの原料にもなっているためだ。プラスチック製品は、ペットボトルや衣類などの気軽な日用品から、いまや医療分野でも欠かせない。物資の不足と医療の崩壊によって、連鎖的に人類生活も崩壊していくのだという。
世界レベルで異常気象が起きていることは疑いようがない。
アマゾン流域やオーストラリア、アメリカの西海岸の森がたびたび炎に飲み込まれている映像を毎年のように目にしている。
また、ハリケーンや台風は大型化し、風雨で街を破壊。日本国内で自然災害が起こるたび、ニュースは「〇十年に一度の異常気象」といった言葉を発している。
気象災害はインフラの不足や不整備など、他の要因が絡み合いながら、人類の破滅へと導く大きな要因であると考えることはそう難しくないだろう。
資源の枯渇や気象の急激な変化を感じ「いよいよ天変地異がいよいよ迫っている」と多くの人が悲観したらどうなるか。次に起こるのは貨幣価値の崩壊だという。
貨幣や金融商品は、信頼関係でその価値が決まっている。株価などが、社会情勢を反映しているのもそのため。
行き過ぎた資本主義や自然を顧みない開発が生み出す、不寛容や不平等などによって多くの人々が苦しめられている。
いまかろうじて保たれている薄氷のような均衡が、なにかのきっかけで崩れたら…。紙幣はただの紙切れになる確率もゼロとは言い切れないない。
2020年、新型コロナウィルス(COVID-19)によるパンデミックを生きる我々は、とくにそれを実感できるのではないだろうか。
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人類が後戻りできない危機的状況にあることは、データからも肌感覚からも疑いようがない。
では、このまま崩壊に進むしかないのか。「崩壊学」では、化石燃料の消費を大幅に、早急に減らすことが解決策として挙げられている。
すでに人類は自然からずっと警告を受けてきた。さらに真剣に受け止め、早急にリスク回避の行動をとるほかはない。
「崩壊学」というおどろおどろしい言葉に衝撃を受け、闇雲に不安を抱くのではなく、事実を冷静に受け止める。そして、エシカルな行動をさらに力強く推し進め続けていくことが求められている。
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