キャンセルカルチャーとは? 日本と海外の事例からみる問題点

キャンセルカルチャーを印字した紙

SNSで著名人や企業の発言が炎上することが増えている。「炎上」は以前からあったが、近年は発言と炎上によって引き起こされる結果との釣り合いが取れていない事例が見られるようになった。キャンセルカルチャーとは何か。その問題点と日本・海外の事例を見てみよう。

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2023.02.08
SOCIETY
学び

エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

「キャンセルカルチャー」とは その意味は?

スマホのTwitter画面

Photo by Sara Kurfeß on Unsplash

キャンセルカルチャーとは、著名人や企業など特定の人の発言や行動を糾弾する、ボイコットのようなもの。SNS上でその人物や企業の「キャンセル」を叫び、切り捨てる行動からこのように呼ばれるようになった。

SNSの普及に伴って2010年代の中頃からアメリカなどを中心に見られるようになった。社会に大きな影響を与える人の言動が倫理的かどうか、過去の言動との整合性が取れているかを確認するために行われる。

#MeToo運動やアカデミー賞で白人ばかりが優遇されることを批判する#OscarsSoWhiteはキャンセルカルチャーの一種で、インタネットを中心に社会に影響を与える重要な対話を生み出してきた。

SNS社会に浮かび上がったキャンセルカルチャーの3つの問題点

白と黒のイメージ

Photo by Florian Rieder on Unsplash

ところが、キャンセルカルチャーにはいくつかの問題点がある。1つは、攻撃性と不寛容さが行き過ぎると、批判が誹謗中傷になってしまったり、異なる意見の人を沈黙させてしまったりすることだ。

批判する人には盛り上がりに参加しているだけという指摘もある。自分が社会的に正しいことをしているとのアピールがしたくて参加する人もいる。

一番の問題は、キャンセルカルチャーの発想には人は善か悪かしかなく、その中間がないことだろう。誰もが自分の行動の責任を取るべきだが、間違いとキャンセルとの釣り合いが取れていない事例が発生するようになり、社会問題化している。

世界の実例

ハリーポッターの著者、J.Kローリングの発言

ハリーポッターの著者、J.Kローリングがトランスジェンダーのコミュニティで行った発言で大炎上が起こった。これに対してJ.Kローリングは150人の学者やライター、作家とともに公開書簡で「反対の見方に対する不寛容と公の辱めや村八分の流行を助長する」と異議を唱えた。(※)

これを受けて、キャンセルカルチャーは権力を持つ側が責任逃れにつくり出したものであるという論調も一部にはある。しかし、表現の自由はヘイトする自由を与えるものではない。

「#MeToo」ムーブメント

性暴力やセクシャルハラスメントの被害体験を、「#MeToo」のハッシュタグをつけてSNSでシェアするムーブメント。これまで沈黙を貫いてきた人々が声をあげ、世の中を変えていこうという大きな動きになった。

多様性を求める「#OscarsSoWhite」

アカデミー賞には白人ばかりがノミネートされる事実について、「オスカーは白人だらけ」という意味の「#OscarsSoWhite」のハッシュタグが生まれた。これをきっかけに、多様性を受け入れる新しい基準が取り入れられた。

日本の事例

近年、世界中でSNSの誹謗中傷が原因で自死に至る芸能人が話題となっている。日本でもそうした事例はいくつか確認されている。

東京オリンピックの騒動

東京オリンピックのエンブレムについて、盗作疑惑が持ち上がり、デザインしたアートディレクターは撤回する前代未聞の事態となった。それ以外にも、開会式の音楽を担当するミュージシャンが過去にいじめを自慢していたことなどから辞任したり、キャンセルカルチャーの事例となる事態が相次いで起きた。

Amazonプライム解約運動

AmazonプライムビデオのCMに登場した人物に対して、反対する声がネットで沸き起こり、Amazonプライムの解約を呼びかける発言がSNSで起きた。

DHC不買運動

DHCグループの創業者が人種差別的ヘイト発言をしたことや、社員の不当解雇疑惑が起きたことから、DHCの商品の不買運動が起きた。

社会問題化するキャンセルカルチャー

キャンルカルチャーといじめには通じるものがあると指摘する専門家もいる。米国のバラク・オバマ元大統領はキャンセルカルチャーについて「批判が加速して優越感に浸るようであってはならない」と呼びかけた。「間違っていると指摘すること」と「気に入らないからとシャットダウンすること」は同義ではない。

これが言論の自由の難しさだ。いずれにしても「相手を黙らせて勝つ」という発想では物事は前進しない。本当の自由とは何か、真の勝利とは何かを再定義する必要があると言えるだろう。

※掲載している情報は、2023年2月8日時点のものです。

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