ビジネスと地域貢献の両立を目指す「インクルーシブビジネス」 推進する意味と役割とは?

企業のミーティング

地域社会の貧困層を組み入れるインクルーシブビジネスは、人々への支援だけではなく経済成長にもつながる。信頼関係を築き上げ、市場としての成功を得るにはインクルーシブビジネスの基本を理解しておく必要がある。

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2020.11.30
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インクルーシブビジネスとは

インクルーシブビジネスとは、発展途上国の貧困層とビジネスに関わりを持たせ、生活品質の向上と地域の事業活性化を目指す考え方である。消費者、顧客、生産者としての取り込みが基本になっており、ビジネスと地域貢献の両面を持つ。

2005年にWBCSD(World Business Council for Sustainable Development、持続可能な開発のための経済人会議)が提唱したインクルーシブビジネスは、発展途上国における持続可能なビジネスモデルとして注目されている。

貧困のために消費者、顧客、生産者の立場にアクセスできない人々は、世界に約40億人いるとされる。インクルーシブビジネスは、彼らに対する単なる慈善事業ではなく、彼らを市場として考え、経済活動に組み込むことを目的とする。

地域の人々は、さまざまな形でビジネスに参加する。サプライチェーン、雇用、製品サービス、流通チャネルと多種多様だ。雇用と給与が生まれれば地域活性化につながり、インクルーシブビジネスの慈善的意義の面を達成するだろう。

投資側からしてみると、開始当初は大きな収益が期待できないものの、長期的展望で成功すれば一大市場に化ける可能性が高い一面を持っている。

インクルーシブビジネスの課題

巨大ビル群を見上げた視点

Photo by Sean Pollock on Unsplash

ビジネスを通じた貢献活動のカラーが強いインクルーシブビジネスだが、一大市場として捉えれば、複数の課題が見えてくる。

投資対効果まで長期間を必要とする

インクルーシブビジネスは、収益性の観点からすると長期的な展望が望ましい。対象となる地域への投資を行い、地域の成長とともに利益を生じるようになるからだ。貧困層からの成長が急速に進む可能性は低いため、十分な収益を得るまでには、短期的展望を期待せず、長期間を要すると考えるべきだ。

インクルーシブビジネスに参画する企業によっては、短期的な収益を求める層が存在するかもしれない。企業内での目標設定や意識のすり合わせを重ね、投資対効果までの期間について理解を深める必要があるだろう。

インフラ整備の必要性

貧困層が生活する地域は、インフラ整備が不十分であるケースが多い。ビジネスに必要な道路や交通手段はもちろん、住宅や下水道も整っていないことがほとんどだ。大きな障害になることは間違いない。

この課題を解決するため、2014年、IFC(国際金融公社)主導の「インクルーシブ・ビジネス・ボンド」が発行された。日本の投資家から資金を募り、インフラ整備を含めた数々の課題解決に充てたのである。

2014年のインクルーシブ・ビジネス・ボンドは、約2億6,000万ブラジルレアル(約112億円)の資金を集める大きな結果を出した。今後も引き続き運用が期待される。

巻き込む対象地域との信頼関係構築

対象地域の人々の信用を得ることは、課題の1つである。貧困層のなかには、企業に不信感を持っている人も多い。彼らからの信用を得なければ、インクルーシブビジネスのスムーズな進行は難しいだろう。

インクルーシブビジネス参画団体

卓上に置かれたペンとノートとスマートフォン

Photo by Dose Media on Unsplash

インクルーシブビジネスには、100以上の団体が参画している。なかでも2008年に発足した国連開発計画が牽引するBCtA(Business Call to Action:ビジネス行動要請)は、イニシアチブ的存在だ。多数の国際的企業の関係者がこの取り組みに参加している。

また参画する企業は増加し続けている。ブラジル、ガーナ、日本、インド、イタリア、ケニア、メキシコ、オランダ、パキスタン、フィリピン、スパイン、トルコ、イギリス、アメリカと、その国はさまざまだ。

日本の企業参画で有名な事例としては、2017年に参画したカゴメだろう。カゴメはセネガルに加工用トマト栽培事業を展開し、現地での安価で高品質なトマト加工品の製造と供給を目指している。

※掲載している情報は、2020年11月30日時点のものです。

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