リカレント教育とは? 学び直しとアップデートで生き抜く人生100年時代

リカレント教育とは、学び直しに重点を置いた教育制度である。人生100年時代、キャリア70年時代と言われ、新たな環境が構築されるなか、社会人の学び直しや、知識・技術のアップデートは必須と言える。リカレント教育の現状や利用するメリットについて紹介する。

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2020.11.30
SOCIETY
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リカレント教育とは?

リカレント教育とはスウェーデン発祥の概念であり、経済協力開発機構(OECD)が提唱する生涯教育構想として注目されている。繰り返しや循環といった意味を持つ「リカレント(recurrent)」は、就労、学習、就労を繰り返す教育システムの名称に相応しいと言えるだろう。

「学び直し」とも呼ばれるリカレント教育は、社会人になってからも学校や類する教育機関へ戻り、新たな知識をたくわえるシステムである。再度社会へ戻るとき、新たな知識やスキルがキャリアに好影響を及ぼすことが期待できるのだ。

人生100年、キャリア70年時代と言われ、働く期間が長くなっている現代では、必要とされる知識やスキルが時代の流れの中で変化していく。学び直しは自身をアップデートし、市場価値を高めていくことにつながるだろう。

日本でも現在、文部科学省がリカレント教育を推進している。政策や給付金の浸透により、これからの普及が期待されるところだ。

リカレント教育が注目を浴びる背景とメリット

図書館の本棚

Photo by Susan Yin on Unsplash

リカレント教育が注目を浴びるようになった背景には、さまざまな事情が存在する。長寿化に伴う労働期間の長期化、ライフスタイルの多様化の2つが代表的だ。いずれもリカレント教育を求めるには充分な理由がある。

高齢化社会に即した、できるかぎり働きたい意識

日本の社会では、高齢化が進んでいる。同時に年金受給開始年齢が引き上げられた。定年を超えてもできるかぎり働き続けたいと希望するのは、当然の流れだ。

そのため、比較的若い時期から長期的なキャリアプランを立て、リカレント教育を利用する層が増加しているのである。

多様化したライフスタイルが求める学び直しの場

非正規雇用者の増加や女性の社会進出により、社会ではライフスタイルが多様化している。非正規雇用者は正規雇用へのキャリアチェンジを希望することが多い。

女性は産休・育休中にストップしたキャリアを再開させたい。そのためには学び直しが適している。

だが、生活に追われるなか思うような学習をすることは難しい。リカレント教育を推進する文部科学省をはじめ、国による安定した学習環境の構築が待たれている。

生産性と専門性の向上というメリット

文部科学省の調査によると、リカレント教育の経験者の平均年収がアップしている。リカレント教育を始めた2年後には平均年収が9.9万円、3年後には15.7万円もの増加が見られたのだ。(※)
(※)https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/pdf/p02023.pdf

また、就業率や専門性の高い職業への転職率アップも見られる。就業率はリカレント教育開始1年後には11.1%、3年後には13.8%となっていた。高い専門性が求められる職業への転職率も同様に上がり、1年後には2.8%、2年後には3.7%へ推移している。

生産性と専門性の向上が顕著なリカレント教育は、キャリアアップにも大きなメリットをもたらしてくれるのである。

国内外のリカレント教育事情

パソコンの前で笑う三人の男性

Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash

国内外のリカレント教育は、各国によって事情が異なっている。日本よりも早くリカレント教育に注目した欧米との違いを見てみよう。

欧米のリカレント教育事情

欧米ではリカレント教育が盛んである。歴史的に欧米の労働者市場は流動性が高い。転職時の自分の市場価値を高めるために学び直し、キャリアアップに繋げる地盤ができ上がっている。就職後、比較的長い期間をリカレント教育で学び直すことも推奨されている。

日本のリカレント教育事情

日本は欧米と異なり、長く終身雇用の慣習があった。教育機関に戻って学び直す必要がない層が多かったとも言える。リカレント教育が浸透していないのはこのような事情に加え、OJTがスキルアップの中心であったからだと考えられる。

しかし近年注目されるリカレント教育に対し、文部科学省を中心に国が本腰を入れて推進を始めた。人生100年時代、個人の生産性を上げて長く働くためには、必要な政策だ。大学、企業も積極的に乗り出している。リカレント教育希望者には、心強い流れである。

リカレント教育と国の政策

リカレント教育への関心が高まるなか、国の政策として文部科学省が積極的な動きを見せている。

「社会人特別選抜」は、社会人を対象とした大学入試制度だ。2019年には3000以上の大学が実施し、多くの社会人が学び直しの機会を獲得する後押しになっている。

また、四年制大学への編入を希望する短期大学、専門学校の卒業生が増加していることを受け、大学の編入学枠の設置基準改正が行われた。

地方では地域リカレント教育推進協議会が設置され、社会人が求める学習内容のニーズの把握、学習プログラムの開発が進められている。

大学

日本女子大学は、「女性のための再就職支援プログラム」として、リカレント教育課程を設けている。ライフイベントで離職した女性を対象にカリキュラムが用意されており、2学期(1年間)の学習が可能だ。

独自の求人webサイトを用意するなど、再就職支援にも力を入れている。

明治大学は、会員制の生涯学習拠点「リバティアカデミー」を開講している。個人での学び直しのほか、法人単位の入学が対象の「リバティアカデミー法人優待制度」が特徴的だ。スキルアップ制度、人材育成の一環として企業が利用している。

企業

サイボウズには、「育自分休暇制度」がある。35歳以下の社員が対象で、一度退社しても6年間は復職が可能だ。復職が約束されているため、安心して学び直しに打ち込むことができる。フルタイムでの学び直しが難しい日本社会では、垂涎の取り組みかもしれない。

リクルートマネージメントソリューションズは、社会人を対象とした支援事業を展開している。人材開発やキャリアアップ、組織マネージメントなど、多様なビジネススキルを学ぶことができる。個人に合わせた受講が可能である。

リカレント教育の取り組み事例

国の政策を受け、特徴的な取り組みを行っている大学や企業がある。いずれも社会人の事情を鑑みた内容となっている。

リカレント教育の需要が高まるなか、国の支援にも注目したい。まず45歳未満であれば「教育訓練給付金」の利用が可能だ。企業に対する助成金であれば「人材開発支援助成金」を利用したい。従業員のスキルアップ教育をする企業に給付される。

いまだ日本のリカレント教育には課題がある。それでも学び直しをしたなかには、結果を出している人々も多い。ライフイベントの中でリカレント教育の必要性を感じたとき、給付金や助成金をはじめ、国の制度を大いに利用して学び直しを実現しよう。

※掲載している情報は、2020年11月30日時点のものです。

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