都市と地方をつなぐデュアルスクール 豊かな価値観を育む新しい学校のかたちとは

2016年に徳島県が始めたデュアルスクールは、都市と地方をつなぐことによって地方創生や多面的な学びを目指した教育プログラムだ。暮らし方や働き方が多様になりつつあるいま、新しい学校のかたちとして注目を集めている。

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2020.10.28
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教育による地方創生? デュアルスクールとは

テーブルの上に置かれた2冊の勉強ノート

Photo by Aaron Burden on Unsplash

デュアルスクールとは、徳島県が「教育による地方創生」を目指して2016年に始めた取り組みだ。「デュアル=二重の」という言葉の通り、都市と地方の二拠点の学校を行き来することで、どちらの良さも体験できる「新しい学校のかたち」のことを指す。

現在、学校教育制度において複数の学校に在籍することは認められていない。そのため「区域外就学制度」を活用して学籍を異動させることによって、住民票を移すことなく2つの学校の行き来を可能にしている。また、受け入れ先での就学期間中も居住地の学校の出席日数としてカウントされるため、通常の学校と同じように問題なく卒業ができる。

子どもは豊かな自然や文化に触れながら、都市と地方の違いを学ぶことで多様な視点を育むことができるだろう。また、保護者はサテライトワークなどの新しい働き方の実践や、お試し感覚での移住が可能だ。徳島県はこのような取り組みをおこなうことにより、二地域居住や地方移住の促進を目指している。

地方で広がる新しい教育のかたち

デュアルスクールのような取り組みは、徳島県から派生してその他の地方でも実施され始めている。実際の事例を見てみよう。

徳島県

2016年から2019年までに徳島県の小中学校では、東京や大阪からデュアルスクールによる子どもの受け入れを16回実施している。三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏など)と徳島県内の公立小中学校に通学する小学1年生から中学2年生までの子どもが受け入れの対象となり、一定期間を保護者とともに移住する。

東京在住で徳島県美波町にサテライトオフィスを持つある家族は、2016年から計5回のデュアルスクールを体験した。子どもは釣りや川遊びなど自然の中でのアクティビティ、町内運動会や地域のお祭りへの参加など、地方ならではの体験ができたという。

また、保護者は住居とワークスペースが同じになることで、子どもと過ごす時間が増えたという報告がされている。

秋田県

秋田県では、2016年より県外の小中学校を対象に「秋田で学ぼう!教育留学推進事業」をスタートした。秋田県内に滞在しながら学校に通い、秋田県ならではのものづくりや自然体験、農業体験を通じて秋田の教育を感じるというものだ。

参加者の希望に応じて随時受け入れの対応をしているだけでなく、1週間や1年間など都合に合わせた期間の設定も可能。自治体の提供する施設への滞在や民泊など、滞在スタイルも自由に組み合わせることができ、子ども一人ひとりに合わせたオーダーメイドの教育留学を提供している。

長野県塩尻市

長野県塩尻市では、2019年より市内の小規模の小・中学校への区域外就学(国内短期留学)を実施しており、現在7つの小中学校が受け入れをおこなっている。

地元農産物を多く使った木曽漆器で食べる自校給食や、積雪の多い長野県ならではのスキーやスケート教室などが体験できるようだ。

複数の拠点を持つことは豊かな暮らしへの第一歩

本を読んでいる女の子

Photo by Jerry Wang on Unsplash

さまざまな地域で少しずつ広がりを見せているデュアルスクール。

しかし保護者が自由に働ける環境にいることや、受け入れ先の自治体によって滞在環境がサポートされていることなどが条件となり、そのハードルはまだまだ高いと言える。また、学校側は授業の進捗状況や学校内でのルールを事前にシェアし、子どもが新しい環境に馴染みやすいような工夫も必要となるだろう。

しかしデュアルスクールのように、多様な環境での教育が普及すれば、子どもにとっての価値観や将来の選択肢を広げることにつながるだろう。一つの場所に留まらず、教育や生活の拠点を複数持つことは生き方や働き方を多様にし、豊かな暮らしを手に入れる第一歩なのではないだろうか。

※掲載している情報は、2020年10月28日時点のものです。

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