コミュニティ再生の場として期待高まる「都市農業」とは　国内外の事例と普及に向けた課題

都市農業とは？

都市農業とは、都市農業振興基本法第２条にで「市街地およびその周辺の地域において行われる農業」と定義されている。しかしただ都市住民の生活に近い場所で行われている農業、というわけではない。

都市農業には、６つの重要な役割がある。

１つ目は新鮮な農産物を都市住民に提供すること、２つ目は災害時の避難場所としてなど防災空間としての活用、３つ目は都市部の緑として雨水の保水など国土・環境の保全の役割、４つ目はやすらぎや潤いをもたらす緑地空間としての役割、５つ目は農業体験など生産者と消費者の交流活動の場、そして最後の６つ目は都市住民の農業への理解を促進する役割だ。（※１）

このように都市農業を行うメリットは、たくさんある。

また、都市部でも少子高齢化が進み、新たな開発よりもコミュニティーづくりに力を入れたほうが市民生活の支えになるのではないかという声が上がっている。

そのコミュニティー再生の場として、都市農業が注目されているのだ。

都市農業の事例

実際にどのようなかたちで都市農業が行われているのか、国内と海外の事例をいくつか紹介したい。

海外

アメリカ・シカゴでは、2013年３月15日に「Farmers for Chicago（ファーマーズフォーシカゴ）」という新しい都市農業計画が発表された。サウスサイド地区にある空き地を今後３年内に活気にあふれた都市農業地域に生まれ変わらせる、というものだ。

ラーム・エマニュエル市長は「この計画によって、地域住民はコミュニティ内で食物が育つ様子を観察できるだけでなく、食ビジネスの起業チャンスも得ることができる」と発言している。

食料品・日用品店が撤退した地区の空き地を農地に変えることで、買い物難民問題の緩和も期待されているのだ。

シカゴ市が都市農業のビジネス拠点となれるかどうかを決める重要な鍵となるプロジェクトのため、地元のNPOはスタッフの養成や農業従事希望者に対して、食品ビジネスの起業ノウハウを指導する技術支援に力を入れた。

国内

「Urbanfarmers club（アーバン・ファーマーズ・クラブ）」は、都会のビルの屋上やベランダなどを活用し、サステナブルでオーガニックな都市型農業ライフスタイルの実践している。

現在は原宿、渋谷、恵比寿の６カ所に畑と田んぼをつくり、そこでは200名を超えるメンバーが活動しているそう。ワークショップなどのイベントが定期的に開催されており、そこで農業を介した会員同士の交流が行われ、コミュニティが形成されている。（※２）

都市農業の課題、問題点

日本での都市農業の課題として農地の確保と周辺環境の問題がある。例えば、街灯のあかりは農作物の生育に障害を及ぼす原因になる。農地に関しては周辺住民への配慮が必要になり、固定資産税や相続税なども大きな問題になってくる。（※３）

その問題をクリアした都心にある都市農業の例として、PLANTIOという会社が手がける「サスティナパーク 恵比寿プライム」がある。プライムスクエアというビルの屋上にある農園だ。

そこに住んでいる人たちだけでなく、恵比寿飲食店のシェフやオフィスで働く人たちが集まるコミュニティファームとして運営されている。

この都市農園で特徴的なのは、IoT機能を用いて、テクノロジーの力を借りながらコミュニティメンバーで協力して野菜を育てていること。専用アプリで自分が育てている野菜の情報を管理でき、AIが栽培に関してアドバイスをくれるのだそう。（※４）

このように今後の都市農業は今ある場所を有効活用し、テクノロジー最新技術を取り入れたエンターテイメントとしての新しい農業の楽しみ方を提案していくアイディアが必要となってくるだろう。

※１ 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/tosi_nougyo/t_kuwashiku.html
※２ Urbanfarmers club
https://urbanfarmers.club/
※３ 都市農業の振興に関わる取り組み
https://org.ja-group.jp/factbook/02_5
※４ サスティナパーク 恵比寿プライム
https://media.plantio.com/urbanfarming/