サイバーカスケードとは、自分と異なる意見を一切排除した、閉鎖的で過激なコミュニティを形成する現象のことを意味する。ここでは、サイバーカスケードが引き起こす問題や、サイバーカスケードを回避するための対策について紹介したい。
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サイバーカスケードとは、同じ考えや思想を持つ人々がインターネット上で強力に結びつくことで、異なる意見を一切排除した、閉鎖的で過激なコミュニティを形成する現象のことを意味する。
2001年にアメリカの憲法学者であるキャス・サンスティーンが提唱した。サイバーカスケードは、集団で議論を行ったあと、人々の意見が特定方向に先鋭化するという「集団極性化」現象の一種であると定義されている。
インターネットでは、同じ考えや思想を持つ人たちが簡単につながりやすい。SNSで検索すれば、簡単に同じ趣味をもつ人と知り合える。
気の合う仲間と共通の話題で盛り上がり、仲間意識を強めていく。そうしているうちに、ふとしたきっかけで自分たちとは違う考え・価値観の人を攻撃したり、極端な方向に先鋭化することがある。これが、サイバーカスケードである。
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ここからは、サイバーカスケードが引き起こす問題について、実際の事例を見ていこう。
地震や洪水、火災などの大規模な災害が発生した後は、サイバーカスケードが発生しやすくなる。代表的な事例として、2019年に発生した沖縄県那覇市の首里城の火災と、2004年の新潟中越地震の事例を紹介しよう。
2019年に首里城の火災が発生した当初、出火原因が特定できていなかったため、さまざまな噂がネットで拡散した。
噂のなかには、「日本を嫌う特定の民族が、日本で凶悪な事件を重ねている。過去には靖国神社に放火したこともあり、首里城の火災もこの民族が行ったことだ」というものや、「火災当日に辞職した議員について話題を逸らし、基地問題で政権と対立する沖縄を屈服させるために、安倍首相(当時)が首里城に放火するように指示した」というものもあった。
火災の原因が不明な段階で、このようなヘイトスピーチや陰謀論が出てしまうのは、考え方が極端に偏っているからに他ならない。首里城の火災に関わらず、大きな災害や事件が発生すると、同様の事例は発生しやすい。
一方、中越地震の際には、「被災地で大人用おむつや貼るカイロが足りず、支援してほしい」という内容のチェーンメールが拡散した。その結果、これらの支援物資が被災地に過剰に届き、現場は混乱状態となってしまった。
サイバーカスケードによる問題は他にもある。差別的な考えを持つ人たちが集まることで、差別が先鋭化することがある。
例えばドイツでは、「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者(ペギーダ)」という反イスラム団体の活動が活発になっている。ペギーダは、ドイツ国旗を手に持ち差別的な言葉を発しながら、移民排斥デモを行うことで知られている。
ペギーダはFacebookなど、SNSを駆使して情報発信を行なっている。彼らはネットを通じて反イスラムデモを企画したり、情報交換・意見交換をしたりしている。同じ考えの者どうしで閉じた空間でコミュニケーションを行うため、その思想は過激化・先鋭化しやすい。
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不確実な情報を拡散し、差別などマイナスな感情を強めるサイバーカスケード。これを回避するためには、次のことを意識するといいだろう。
インターネット上にはさまざまな考えを持った人が集まっている。さまざまな人たちの多様な意見を尊重することで、人々の意見が同じ方向に先鋭化することを回避できる。自分と異なる意見や、少数派の意見を排除しないようにしよう。
何か事件が発生した際に、SNSでわかりやすい情報に安易に飛びつき、それを拡散するのではなく、いったん落ち着いて情報を取捨選択することも有効だ。さまざまな情報を自分の中で冷静に分析することで、不確かな情報の拡散を防ぐことができる。
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