女性の悩みをテクノロジーで解決する「フェムテック」の価値 社会課題と経済成長の両立を担うヒントとは

フェムテックとは、女性の健康をテクノロジーの力でサポートする商品やサービスのことを意味する。近年、女性のニーズが可視化されるようになったことで一気に注目を集めるようになった新しい考え方だ。本記事では、フェムテック登場の背景や、実際の事例、今後の課題について詳しく紹介していきたい。

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2020.10.31
SOCIETY
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女性の悩みを解決する「フェムテック」とは?

「フェムテック(FemTech)」とは、「Female(女性)」と「Technology(技術)」をかけ合わせた造語である。つまりテクノロジーの力で、女性特有の悩みや健康にまつわる問題を解決するサービスやプロダクトのことを意味する。

海外ではかなり大きな盛り上がりを見せており、今後大きく成長する市場として、投資家たちからも注目を集めている。

フェムテック市場の領域

フェムテックがカバーする領域は、月経や妊娠、産後ケア、セクシャルウェルネス、更年期など多岐に渡る。

例えば、生理日予測などの健康管理アプリや、ネット診察サービス、搾乳機やセックストイなどのハードウェア、生理用品やピルのサブスク配達などがフェムテックとしてカテゴライズされている。

販売はECサイトだが製品自体にはテクノロジーを使用していない生理用品や、ナプキン一体型パンツなども、これまではフェムテックとして一括りにされいた。しかし最近では、これらの製品の総称は「フェムケア(FemCare)」と呼ばれ、フェムテックとの使い分けがされている。

フェムテックの盛り上がりの背景

フラッグを持ちデモをおこなう外国人の少女たち

Photo by Natalie Hua on Unsplash

女性の性や身体にまつわる問題はタブー視されがちである背景から、これまで課題解決に向けての動きは積極的ではなかった。それなのに、なぜいまフェムテックが盛り上がりを見せているのだろうか。

その理由の一つとして、フェミニズムなど、女性のエンパワーメントを推進する動きが世界で高まっていることが挙げられる。とくに、性に関する女性のリアルな悩みや本音などを発信した「#MeToo運動」は、このムーブメントを加速させた。

これまでタブー視されていた話題について声を上げやすくなり、女性のニーズが可視化されたことが、フェムテック市場の拡大を後押ししていると考えられる。

さらにSDGsでも、ジェンダーや健康における平等などの目標が掲げられている。これも社会問題の解決と経済発展の両立を、人々に意識させるきっかけとなっているようだ。

その他にも、女性の起業家やエンジニアが増えてきたことや、女性の社会進出による晩婚化や高齢出産などの課題が生まれたこと、技術の発展など、さまざまな要因が重なっていると言えるだろう。

国内外におけるフェムテックの事例

ルナルナ

株式会社エムティーアイが提供する生理日管理アプリ「ルナルナ」は、国内フェムテックの先駆け的な存在。

毎月の生理開始日を記録することで、次の生理日や排卵日、妊娠しやすい時期を予測し知らせてくれる。さらに生理日と生理周期から女性ホルモンのバランスを計算し、スキンケアやダイエットへのアドバイスも受け取ることができる。

Sai+

「Sai+」は医療スタートアップ株式会社Linc’well(リンクウェル)が提供する、女性ウェルネスのためのメディカルブランド。

クリニックと連携することでオンライン診察を可能にし、PMS(月経前症候群)の症状を緩和するサプリメントや低容量ピルなどの処方薬を毎月配送するサービスをおこなっている。

病院の予約や待ち時間などの課題を解消してくれるほか、持ち歩きやすくリサイクル可能なパッケージ素材にもこだわっている。

F check(エフチェック)

「F check(エフチェック)」は株式会社F Treatment(エフトリートメント)が販売している、卵巣年齢チェックキット。

自宅で採取した血液を検査センターに郵送すると、WEB上で自分の卵巣年齢が確認できる。採血は専用キットを使用し、指先から簡単に採取が可能。

忙しくて病院へ足を運ぶことが難しい人でも、予約や待ち時間のストレスなく検査ができる優れものだ。

Cora(コラ)

アメリカ発のオーガニック生理用品ブランド「Cora(コラ)」は、タンポンやナプキンの入ったボックスを毎月配送するサブスクリプションを提供している。

パッケージは白と黒を基調とし、一般的な”生理のイメージ”を覆すようなスタイリッシュなデザインだ。生理の期間や出血量によってボックスの内容をカスタマイズ可能。

また、ボックスが一つ購入される度に、ケニアやインドの女性支援団体に金銭的支援や生理用品の寄付をする取り組みや、アメリカ全土の非営利団体とともに生理用品を無料で提供する活動もおこなっている。

Elvie(エルビー)

イギリス発のブランド「Elvie(エルビー)」は、主に産後ケアの製品を開発している。

製品の一つである「Elvie Trainer」は、加齢や出産などによって衰えやすい骨盤底筋を鍛えるデバイス。アプリと連動させて膣内に挿入することで、骨盤底筋を絞めるトレーニングができるほか、膣内の圧力も確認できる。

ウェアラブル搾乳機「Elvie Pump」はコンパクトなデザインで下着のなかに装着が可能。電動で搾乳してくれるだけでなく、アプリを使用して搾乳の強さの調整や、母乳の状態の記録もできる。

Ava(エイバ)

スイス発のスタートアップが開発した「Ava(アバ)」は、排卵日を正確に予測するブレスレット型のデバイス。

就寝中に着けるだけで呼吸数、心拍数、睡眠の質、体温など、生殖ホルモンの増加によって変化する生理学的パラメーターをモニターし、妊娠しやすい日を予測する。反対に、妊娠しにくい日も予測できるため、避妊をしたい女性にも役立ちそうだ。

フェムテックの今後と普及への課題

抱き合う3人のロングヘアの外国人女性

Photo by Gemma Chua-Tran on Unsplash

フェムテックの世界市場規模は、2025年までに約5兆円にもなると言われている。

現在海外でフェムテック事業を展開している企業は、300社以上。一方、日本でも徐々に市場が拡大しつつあり、50社ほどの企業が市場に参画している。

今後さらに市場を拡大するためには、女性が持つ性や身体の悩みを女性だけの課題とせず、男性側も理解を深める必要がある。そのためにも、女性が抱える問題を語ることをタブー視しない環境づくりは必要不可欠だ。

海外では、すでにフェムテックは女性だけのものではないという思考が広まりつつある。実際に、妊活を女性だけの問題とせず、男性の精子を検査するためのキットも存在している。生理用品においては、トランスジェンダーで「生理のある男性」にとっても手に取りやすいようなデザインの施された商品やサービスが続々と登場しているのだ。

性の垣根なく、誰でも話題にできて、誰でもおしゃれを楽しむようにライフスタイルに取り入れる。そんな新しい価値観を生み出すアイデアが、今後の日本のフェムテック市場に登場することを期待したい。

※掲載している情報は、2020年10月31日時点のものです。

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