自分の体にいいものを求めるなら、環境にも動物にもやさしいサステナブルなコスメを選びたい。「クリーンビューティー」という概念が広がるなかで意識したいことを、「サスティナブルコスメアワード 2020」を運営する、日本ホリスティックビューティ協会代表の岸紅子さんに伺った。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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欧米を中心にいま、「クリーンビューティー」に注目が集まっている。「オーガニック」「フェアトレード」「ビーガン」などをキーワードに、環境にも動物にもやさしい、サステナブルなコスメや企業を選ぶ考え方だ。
毎日使うコスメだからこそ、自分にも地球にもやさしいものを選びたい。でも、一体何を基準にすればいいのだろう?
そのヒントが、岸紅子さんが環境省アンバサダー仲間とともに立ち上げた「サスティナブルコスメアワード」にある。SDGsを基準に、応募された製品の製造から企業の姿勢までを選考・表彰。人にも地球にもやさしいサステナブルコスメに光をあてる取り組みだ。
日本ホリスティックビューティ協会で実施しているセミナー
岸さんは、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会を2006年に設立した。「健康を中心に置いた美容」を軸に、検定事業やワークショップなどを展開している。
ストレスが溜まると不調が体に現れる。食べるものや身につけるもの一つが、心にも影響を及ぼす。そんな心と体のつながりを意識し、現代の女性にセルフケアの必要性を伝えることを団体のミッションに掲げている。
岸さんの活動の原点は、自身や家族の闘病経験にある。西洋医学に限らず、自然療法や心理的なアプローチを治療に取り入れていくなかで、心の状態は体とつながっていることに気が付いたという。
「私たちが楽しく生きるためには、健康が絶対に欠かせません。ただ、現代の女性は時間もないし、仕事に日々の暮らしにと、苦しくなってしまうことも多い。
私自身も、ワーカホリックでストレス性喘息と子宮内膜症を発症しました。それをきっかけに、日々のセルフケアができる人を増やしたいと考えたことが、NPO法人の立ち上げにつながっています」
先日「柏の葉 T-SITE」で実施されたイベント「サステイナブルデイ」での岸さん(中央)
ウェルネスの啓発、発酵食アドバイザー、パーマカルチャーデザイナー、環境省「つなげよう、支えよう森里川海」アンバサダーなど、広く活動する岸さん。「美容と環境問題」と聞いて、そのつながりにピンとくる人は少ないかもしれない。
「例えば、私たちが毎日使う化粧水。天然素材から抽出したエキスが入っているとすれば、その天然素材は必ずどこかの土壌で育ち、生産者の手によって収穫・製造されています」
その土壌は、安全だろうか。もしくは、収穫の際に、環境破壊を行っていないだろうか。運搬時にどれほどのCO2を排出しているだろうか。製品自体は人体に使い続けて安全だろうか。洗い流した成分や使い終わった容器は、地球を汚さないだろうか……。
私たちの手元に、コスメが届くまでの製造から物流、使用後までのプロセスには、必ず環境問題が絡んでいる。
「買い物は投票」と、岸さんは表現する。
「地球の資源には限りがあります。また地下資源を精製する際には、大量の二酸化炭素も排出します。でも私たち消費者は、限りある資源を大切に使い、極力循環させるという考えに基づくモノづくりをしている企業を『購買』という手段で応援することができます」
日本のオーガニックコスメ市場は、年々規模を拡大している。それに伴い、世間の認知度も上がってきているはずだ。それでも、オーガニックコスメの正しいイメージは広がっていないと岸さんは言う。
「オーガニックコスメに、『効きづらい』というイメージを抱く人はまだ多いと思います。でも、オーガニックコスメの成分は、決して他に負けません。パワフルに作用してくれるコスメも数多くあるんです」
課題はまだある。現在、日本にはオーガニックと表示する際の明確な基準はない。つまり、オーガニックのエキスが一滴入っていれば、“オーガニック”を大きくうたうこともできる。
加えて、オーガニックにこだわって化粧品をつくると、手間暇に応じて原価が上がる。価格を抑えるために、宣伝費をかけられないメーカーも多い。
“本物”と“なんちゃってオーガニック”の両方が、オーガニックとして同じ扱いで売られている現状を目の当たりにしてきた岸さん。
「いい商品が買い叩かれるのは悲しい。頑張っている企業を応援できることはないか」と考え生まれたのが、2019年から実施している「サステナブルコスメアワード」だ。
このコスメアワードのコンセプトはふたつ。ひとつは頑張っている企業に光があたること。次に、消費者が安心して化粧品を使えるわかりやすい基準を設けることだ。
審査はSDGsを基準に行われる。化粧品の製造から廃棄にいたる一生のサイクルを通じ、人にも地球にもやさしいものかどうかが評価される。また、企業自体のSDGsへの取り組みも評価の対象となっている。
表彰されたコスメは、受賞商品だけが使うことを許されるロゴを利用し、消費者に製品の安全性をアピールできる。消費者は、マークを指標に商品を選ぶ。新しいコスメ選びの基準だ。
2019年は、株式会社ビオスタイルの「NEMOHAMOブースターオイル」が最優秀賞を受賞。製品の品質に加え、一貫したトレーサビリティ、繰り返し使えるボトルや環境配慮紙を用いた化粧箱などサステナブルなものづくりの姿勢が高く評価された。
2019年アワード受賞のコスメブランドが一同に介するポップアップショップ「SUSTAINABLE COSMETIC MARKET」もLOFTで開催された
今年のコスメアワードは、さらにパワーアップ。注目したいのが、審査員の豪華さと多様さだ。講談社『FRaU』編集長の関龍彦さん、エシカルファッションデザイナーのマリエさんらに加え、今回は学生審査員も参加する。
「あらゆる人の視点を借りながら、一人でも多くの人が納得できるコスメを選びます。サスティナビリティの第一線で活躍する審査員が一堂に会し、商品を評価する機会はまずない。だからこそ、頑張っているメーカーのコスメが飛躍するきっかけになってほしいと願っています」
生産のプロセスはSDGsに配慮しているだろうか。肌に付けても安心だろうか。そして、そのコスメを使うことで自分の心が豊かになるだろうか。
ブランドや効くかどうかという基準ではなく、質の良さを選択の基準にする。コスメは私たちの生活を豊かにしてくれるもの。だからこそ、消費者が商品を見極める目を養うことで、地球を守り、自分にも還元されていく。
最後に、岸さんから私たち消費者にメッセージをもらった。
「コスメを買うことは、製品が持っている背景と自分がつながることです。コスメはプライベートな製品で、心や体に近いからこそ、私たちに直接影響を与えてくれます。
自然の成分は、自分に備わっている自然治癒力を引き出してくれます。対処療法的ではなく、自分の体や心のつながりに意識しながら肌の状態をよくしていきましょう。
生活のすべてをエシカルなものにするのは、コスト的にも難しいと思います。まずは毎日触れるコスメを、ナチュラルでサステナブルな循環を意識して選んでみましょう。
自分の感性は、自分だけのもの。深呼吸したくなるすてきなコスメを生活に取り入れることで、あなたの人生の豊かさや心の充足感が底上げされていきます」
食べ物を選ぶとき、どんな素材を使っているかチェックするのと同じように、コスメでも製品表示に目を向ける。そして、共感できるストーリーのある品を選ぶ。
「サスティナブルコスメアワード」のロゴマークが付いた製品を選ぶことは、環境を守るだけではなく、自分自身の力をめいっぱい引き出し、暮らしを豊かにしてくれる。
今年はどんなオーガニックコスメに光があたるのか、結果発表がいまから待ち遠しい。
取材・執筆/Ayaka Toba 編集/松本麻美(ELEMINIST編集部)
アワード開催スケジュール
一次選考公募期間:2020年10月7日~11月15日
オンラインQ&Aセッション:2020年10月28日14:00~15:30
二次選考公募期間:2020年11月25日~12月9日
結果発表(WEB):2021年1月13日
表彰式:2021年2月下旬予定
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