パッシブデザインとは?太陽の光、地熱、風などの自然のエネルギーを利用し、快適に過ごせる環境にやさしい建築デザイン。この記事では、パッシブデザインのメリットや日本における課題、パッシブハウスの事例を紹介する。
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パッシブ(passive)とは日本語で「受動的な」という意味。エアコンや照明をできるだけ使わずに、太陽の光、地熱、風などの自然のエネルギーをデザインの力でうまく利用するのがパッシブデザインである。
建築設計の際にパッシブデザインを取り入れることで、エアコンやストーブの使用を最小限に抑えながらも、夏は涼しく冬は暖かく快適に過ごすことができる。そんなパッシブデザインには以下5つのポイントがある。
「冬は暖かく」のための基本になるのが「断熱」。適切な断熱材を使用して建物の保温性を高めることで、少ない熱で部屋を暖めることができる。また、暖房している部屋としていない部屋の温度差も比較的小さくできる。
保温性を高めた建物で夏に涼しく過ごすには、夏の強い日差しを室内に入れないために遮へいしなければならない。レースのカーテンをしているだけでは十分ではなく、庇(ひさし)や簾(すだれ)、植物を利用した緑のカーテンなどを用いて日光を遮ることが必要である。
夏に快適な建物にするには、風通しの良さは不可欠である。風が体に当たることで涼しいと感じることができる以外にも、建物内に溜まった熱を排出するという効果がある。吹き抜けや高窓などを利用して室内の風通しを良くすることができる。
自然光を取り入れられるデザインにすることで、日中に照明をつけなくても快適に過ごせるようにする。窓を複数つくる以外にも室内のドアを透明にし、光を隣接する部屋で共有するなどの工夫ができる。
断熱性と蓄熱性が高い建物に太陽の熱を取り込むことで、暖房効果を期待できる。ただし地域によって冬の日射量がかなり異なるので日射熱利用暖房が適さない地域もある。
人口の照明よりも太陽の光、クーラーの風よりも自然の風の方が心地よいもの。とくに冬は建物全体が暖かく、暖房のついたリビングから廊下やトイレに行く際などに寒い思いをしなくてもいい。
ヒートショックとは、急激な気温(室温)の変化により血圧が上下し心筋梗塞や脳卒中を引き起こすというもの。建物内の温度をできるだけ均一に保つことでヒートショックの予防にもなる。
照明やエアコン、暖房器具の使用が減らせるので、電気などのエネルギー使用量が減り、環境への負荷も小さくなる。
照明やエアコン、暖房器具の使用が減らせるので、電気代やストーブの燃料代を節約できる。
日本はほとんどの地域で夏と冬の寒暖差がある。夏は涼しく、冬は暖かく保ちたいが、夏の涼しさのために通気性を良くすると冬も熱が逃げやすくなってしまうのだ。
同様に冬に熱を閉じ込めやすいデザインにすると、夏に熱が逃げなくなってしまう。地域の寒暖差や日照時間の差などを考慮しバランスよくデザインする必要がある。
十分に太陽の光を取り込むには、窓にカーテンや障子をつけない方がいい。しかしお隣の家との距離が近く、プライバシーを気にする日本の都会では難しいもの。
大きな窓からたくさん太陽の光を取り込む理想的なパッシブハウスは、日本の都会では現実的ではないかもしれない。
日本の都市部では、建物が乱立しており日光や自然風を取り入れるためのスペースが家の周りにない場合が多い。また、2階のベランダも洗濯を干すために利用されることが多く、そこから日光を十分に取り入れることは期待できない。
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