プラスチックの種類を知ることから始める循環型社会 一歩先の未来を考える

いまやプラスチックは私たちの日常生活に欠かせないものとなっている。しかし、環境意識への高まりからプラスチックの使用を抑制する動きも出てきた。この記事では消費者として私たちが知っておきたいプラスチックの種類とリサイクルの可否を解説する。

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2020.10.01
SOCIETY
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エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

プラスチックとは

ポリ袋に入ったりんご

Photo by Sophia Marston on Unsplash

私たちの身の回りには多くのプラスチックが使われている

プラスチックが使われているシーンは実にさまざま。身の回りのものだけでも肉や野菜のトレー、買い物袋、ペットボトル、雑貨や家電、服など枚挙に暇がない。プラスチックがまったく使われていないものを探すことの方が難しいだろう。

なかには燃えるごみよりもプラごみの方が多い人、資源ごみの回収日は限られているし分別に手間がかかるので、燃えるごみで出してしまっている、という人も少なくないかもしれない。

ところが、プラスチックの種類は多く、一度混ぜてしまうとリサイクル処理するのはとても困難だ。プラスチック容器包装リサイクル推進協議会の調査によると、家庭で使われたプラスチック製容器包装のうちリサイクルされているのは約46%。新たなプラスチックの材料になるのは、36%ほどである(※1)。

プラスチックは発熱量が高く、燃えると高温になるのでごみ発電には役立ちますが清掃工場の焼却炉を傷める原因にもなっている。

プラスチックは元々、可塑性という意味の英語plasticityに由来している。可塑性とは、形を自由に変形でき、力を取り除いた後のその状態が残る性質のこと。

私たちが日常生活で使っているプラスチック製の皿やコップなどは、熱を加えると粘土のように自在に曲げられるプラスチックの性質を上手に利用しているのだ。

※1 http://www.cjc.or.jp/j-school/c/c-1-5.html

プラスチックの種類について

プラスチックのごみの山

Photo by Weiqi Xiong on Unsplash

分類が難しいと感じるほどプラスチックはたくさんの種類がある

プラスチックにはたくさんの種類があり、成分によって性質が異なる。一般家庭で資源ごみとして回収できるプラスチックを見分ける簡単な方法のひとつは、商品の箱や袋のマークを確認することだ。

飲み物やしょうゆなどのリサイクルできるペットボトルにはPETマークが、それ以外のプラスチックでてきた容器や包装にはプラの識別マークがある。

プラスチックは大まかに、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の2つに分けられる。熱可塑性樹脂とは熱を加えるとやわらかくなるプラスチックのこと。再び冷やすと固まり、比較的安価で加工しやすいのが特徴だ。

私たちの身の回りの多くのプラスチック製品は熱可塑性樹脂と考えてよいだろう。食品用フィルムやペットボトルは、この性質を利用してリサイクルされている。熱可塑性樹脂のプラスチックは耐熱温度100℃を基準に、さらに細かく分類できる(※2)。

一方、熱を加えると硬くなるのは熱硬化性樹脂だ。温度変化による影響を受けにくいのが特徴で、電機部品や飛行機の構造材料や化粧板、浴槽など、機械的強度や耐熱性が必要なプラスチック製品に向いている。

近年は環境意識への高まりなどから、リサイクルできる熱可塑性エストラマーや、微生物が分解できる生分解性プラスチック、植物などのバイオマスを利用するバイオマスプラスチックも登場している。

※2 https://seihin-sekkei.com/plastic-design/thermoplastics

熱可塑性樹脂に分類されるもの

プラスチックの袋に入った食べ物

Photo by Ronise daluz on Unsplash

食品用の包装は私たちにとってもっとも身近なプラスチック

私たちの身の周りには、熱可塑性樹脂のプラスチックがたくさんある。種類をもう少し詳しく見ていこう。

低密度ポリエチレン(LDPE)

もっとも身近なプラスチックのひとつ。ポリ袋、食品容器、ラップ、紙パックの内張などに使われている。リサイクルできる低密度ポリエチレンにはプラマークがついているので確認してみよう。

資源ごみの日に出したプラスチックごみは、リサイクル工場に運ばれてプラスチック製品や化学製品の原料として生まれ変わる。

高密度ポリエチレン(HDPE)

不透明なプラスチックで、スーパーのレジ袋や、化粧品やシャンプーなどの容器、バケツや洗面器、灯油用ポリタンクなどに使われている。衝撃や薬剤に強いのが特徴だ。一般家庭で分別してリサイクルするのはめずらしいかもしれない。

ポリプロピレン(PS)

荷造りひもや、野菜、果物の袋、フィルムに多く使われるプラスチック。ペットボトル飲料のキャップの多くは、ポリプロピレンでつくられていてリサイクルも進んでいる。

塩化ビニル樹脂(PVC)

やわらかいものでは手袋、農業用ビニールハウス、電線コードに、硬いものでは雨樋や水道管、窓のサッシなどに使われている。産業界ではリサイクルが行われている。

ポリスチレン(PS)

コンピュータやプリンターなどの外側の部分や、食品用トレイ、発泡スチロールに使われるプラスチックです。食品用トレーなどの白いポリスチレンは各自治体の資源ごみとして集められ、再資源化も進んでいます。

AS樹脂(SAN)

調味料容器や電気製品、使い捨てライターなどに使われている。

ポリエチレンテレフタレート(PET)

ペットボトルや卵のパックにも使われる、リサイクルしやすいプラスチックだ。回収されたPETの一部は、作業着やワイシャツなどの乾きやすさが好まれる衣料品の繊維に生まれ変わることもある。

アクリル樹脂

透明で割れにくいのでメガネのレンズやコンタクトレンズ、水族館の水槽などに使われる材質。

ポリカーボネート

透明で割れにくく、熱に強いため携帯電話やノートパソコンに使われる素材だ。

ポリアミド(PA)

丈夫で酸素を通さない性質があり、レトルト食品の袋や釣り糸などに使われている。

ポリ乳酸(PLA)

植物性由来の原料でつくられたバイオマスプラスチック。レジ袋や食品容器に使われている。常温ではほとんど分解されず長期間使えるが、土に埋めて水分や適温などの条件が整うと微生物が分解できるようになるのが特徴だ。

燃やしたときの二酸化炭素排出量は石油系プラスチックの2分の1〜3分の1程度。有毒ガスは発生しない。最終的には二酸化炭素と水に完全に分解される。

熱硬化性樹脂に分類されるもの

動きやすい服装の女性

Photo by Philip Martin on Unsplash

プラスチックは繊維製品にも使われている

硬くて薬品に強く、絶縁性、耐電圧、耐熱性のある熱硬化性樹脂は工業用品に広く使われている。ただし、熱を加えても変形しにくいのでリサイクルが難しいのが特徴。いくつか見ていこう。

フェノール樹脂(PF)

もっとも古い人工プラスチックで住宅用断熱材や、電化製品の絶縁体、接着剤や塗料などに使われている。

エポキシ樹脂(EP)

水や薬品に強く、絶縁性が高いので電子回路の基板やICパッケージの封入剤のほか、接着剤としても使われる樹脂です。強度が高いので、家具やボートなどの補修にも多用されます。

メラミン樹脂(MF)

一般家庭でなじみがあるのは、メラミン樹脂のスポンジやたわしではないだろうか。研磨剤の効果があり、洗剤を使わなくても硬い汚れを落とすことができる。家具や化粧板などの塗料にも多く使われている。

ポリウレタン

もともと天然ゴムの代用品として開発された素材。塗料や接着剤のほか、スポンジや充填材などのウレタンフォーム、ジャージや水着などの繊維製品、合成皮革の靴など幅広いシーンで利用されている。弾性と衝撃吸収の高さから、車のヘッドレストやソフトパッドなど幅広い工業製品に活用されているのが特徴。

熱硬化性ポリイミド

自動車、工作機械のほか、半導体性精密機器に使われるプラスチック。軽くて過酷な環境に強い性質から、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げる宇宙ヨットの材質にも利用されている。

プラスチックの種類を理解してリサイクルをはじめよう

ごみを分別する人

Photo by Gary Chan on Unsplash

リサイクルはプラスチックの分別からはじまる

プラスチックは混ぜればごみだが、分ければ資源に生まれ変わる。リサイクルマークのついているブラごみや、ペットボトル、発泡スチロール、食品用トレイは再生できるものがほとんど。リサイクルできるものは捨てずにリサイクルに出したい。

その他のプラごみは、市町村によって扱いが異なる。住んでいる自治体の「燃やせるごみ」とするか「燃やせないごみ」のルールを確認し、使い捨て型からリサイクル型社会への一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

※掲載している情報は、2020年10月1日時点のものです。

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