東京マラソン×アスエネが挑むCO2排出量削減。見える化から始める持続可能な大会運営

東京マラソン

東京マラソン財団とアスエネ株式会社(以下、アスエネ)が3年間にわたるサステナビリティパートナーシップを締結。東京マラソン2026の事前算定を通じて、CO2排出量の見える化・開示を行った。この施策の意義やサステナビリティへの取り組み、今後のCO2削減に向けた展望について紹介する。

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2026.03.31

なぜいま「東京マラソン×サステナビリティ」なのか

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Photo by ©東京マラソン財団

近年、気候変動対策は国際社会における喫緊の課題となっており、企業活動や日常生活に加え、スポーツイベントにおいてもCO2排出量の把握や削減が求められるようになっている。世界の主要マラソン大会でCO2排出量の算定が進んでいる一方、東京マラソンでは大会全体のCO2排出量を包括的に算定・開示する取り組みは、これまで行われていなかった。そこで東京マラソン財団は、持続可能な大会運営を目指し、CO2排出量の見える化や削減支援を行うクライメートテック企業、アスエネとサステナビリティパートナーシップを締結した。

東京マラソン財団は、東京マラソンにおいて、CO2排出量の見える化を段階的に進め、持続可能な大会運営体制の強化を目指す方針を示している。2027年の東京マラソン20回大会を一つの節目とし、サステナブルな大会づくりをさらに発展させていく考えだ。今回のアスエネとのパートナーシップ締結も、その取り組みの一環。CO2排出量の見える化や削減施策の検討を進めることで、より持続可能な大会運営を実現していく。

東京マラソンのサステナビリティへの取り組み

東京マラソン2026の具体的な施策

東京マラソン財団は、大会のミッションとして「走る楽しさで、未来を変えていく。」を掲げ、廃棄物削減やリサイクルの推進など、環境負荷の低減に向けた取り組みを行ってきた。今大会では、CO2排出量算定のほか、大会フラッグをバッグなどに再利用して販売するアップサイクルや、給水所で使用した紙コップの回収・リサイクル、不要になったランニングシューズを回収してサンダルのソールとして再利用する取り組み、衣類などの不要品の回収BOX設置など、さまざまな施策が実施された。

東京マラソン2026のCO2排出量事前算定結果は2万6029トン

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今回のCO2排出量の事前算定は、東京マラソンにおけるCO2排出量の現状を把握することを目的としている。1回限りではなく、アスエネは2026年から2028年までのサステナビリティパートナーとして継続的に大会に関わっていく。

現状を知るために、Scope1〜3までを対象とした包括的な排出量算定を実施。Scopeとは、企業や組織が排出するCO2を分類した国際的な基準のこと。Scope1は自社の燃料使用などによる直接排出、Scope2は電力などの使用による間接排出、Scope3は原材料調達や輸送、廃棄などサプライチェーン全体で発生する排出を指す。とくにScope3は対象範囲が広く、算定がむずかしいとされている領域だ。

東京マラソン2026におけるCO2排出量の事前算定結果は、事前算定で2万6029トン。これは大会当日だけでなく、準備や物資の製造、参加者の移動なども含めた数値である。一般的に開示されている排出量データの多くはScope1〜2までの算定にとどまるケースが多いため、2万6029トンという数値が多いのか少ないのか、単純な比較はむずかしい。これについて、アスエネヴェリタス株式会社取締役CCO・小池心平氏は、「2026年度から国内で実施される排出量取引制度では、年間10万トン以上のCO2を排出する企業が削減対象になります。これを参考にして比較すると、東京マラソンは一つのイベントでありながら、約2.6万トンの排出量におよぶため、ある程度影響力が大きい数字だと思います」と説明した。

カーボンニュートラルな大会はなぜ難しいのか

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アスエネヴェリタス株式会社取締役CCO・小池心平氏

大規模イベント特有の排出構造

東京マラソン2026は、国内外から約3万9000人のランナーが集い、約1万人のボランティアが大会を支え、沿道では約100万人が声援を送る大規模なイベントだ。事前算定したCO2排出量は、2万6029トンであるが、走る行為自体が大量のCO2を排出するわけではない。算定の結果によると、排出量の多くはScope3に集中している。大会運営そのものよりも、参加者の移動や物資の製造・輸送など、サプライチェーン全体で排出が発生していることがわかった。

見える化が削減の第一歩

脱炭素に向けた取り組みにおいて、「まず排出量を見える化し、現在地を知ることが重要」と話す小池氏。「マラソンでも、まずは自分のタイムを測らなければ、自分が早いのか遅いのかわからない。それと同じようにCO2排出量も、まずは測ってみることで、他の大会と比べて多いのか少ないのかなど、課題が見えてくるのです」と算出することの重要性を話した。

アスエネが東京マラソンで担う役割

CO2排出量の見える化・削減を支援するアスエネ

アスエネは、日本発のクライメートテック企業として、アジアNo.1の導入実績を持つCO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービス「ASUENE」を展開。企業・自治体・イベントなど多様な領域で脱炭素支援を国内外に広げている。2025年には、東京ドームで開催した音楽フェスティバル「ap bank fes ’25」において、CO2排出量の見える化をイベントの前後で実施。東京ドームのRE100対応の再生可能エネルギー由来の電力使用(※1)と、カーボンクレジットによるカーボンオフセット、参加者の行動変容の促進により、100%カーボンニュートラル公演を実現した(※2)。

排出量算定の具体的プロセス

アスエネは協賛にとどまらず、サステナビリティパートナーとして3年間東京マラソンに関わり、CO2排出量の算定と削減支援を継続的に行う役割を担っている。2026年大会では、2025年の活動データをもとに、Scope1〜3のCO2排出量を算定。さらに、どこから多くCO2が排出されているかを知るために、「参加者の移動」「物販や飲食」「参加者の宿泊」「会場運営」など、Scope3のカテゴリー別に分類した。これによってCO2排出量とともに、大会の排出構造を見える化することができる。こうした分析により、何による排出が多いのか、今後はどこから削減を進めるべきか、といった削減計画の検討が可能になるのだ。

大規模イベントで取り組む意義

大規模なイベントでCO2削減に取り組むことは、容易ではない。アスエネ株式会社コーポレート本部PR広報/PA部・伊集理予氏は「多くの人が関わるイベントだからこそ、どうしてもCO2が多く出てしまいます。運営側だけでどうにかできる問題ではないので、2028年までの3年間でどのように啓発していくか、具体的にどのように削減していくかをこれからしっかり考えていく必要があります」と話す。大規模イベントだからこそ困難なことも多い。それでも取り組むことの意義について伊集氏は、「もちろんCO2排出量を削減することを目指していますが、まずは多くの人に“イベント自体や参加することからもCO2が排出されている”という事実を知ってもらうことにも意義があると思います」と話した。

企業の脱炭素にも共通する「見える化」の重要性

今回の東京マラソンで行われた排出量算定は、イベント運営の取り組みにとどまらず、企業の脱炭素経営とも共通する部分がある。大会運営に関わる移動や資材、エネルギー使用などを含め、どこからどれだけのCO2が排出されているのかを見える化したことは、今後の改善につながる出発点となる。現在、上場企業を中心にCO2排出量の開示や削減が求められており、企業のサステナビリティ戦略は大きな転換期を迎えている。

大手企業はすでに排出量算定や開示を進めているケースが多く、最近は“算定するかどうか”ではなく、“どこをどう削減するか”という具体的なフェーズに移っている企業も多い。一方、中小企業では、これから取り組みを始めるケースも少なくない。伊集氏は「まずは自分たちがどれくらい排出しているのかを知ることが重要です。排出量を見える化することで、どこに削減のポイントがあるのかが見えてくるのです」と伝えた。

また、企業活動では事業成長と脱炭素の両立も重要なテーマになっている。「企業は事業を成長させていかなければならないので、売上が伸びればCO2排出量が増えることもあります。これからは事業成長とサステナビリティの成長を両立させていくことが重要になると思います」と話す。脱炭素は一社だけで解決できる課題ではない。パートナー企業や専門家と協力し、仲間を増やしながら取り組みを進めていくことも有効だ。

東京マラソン×アスエネが示す未来への一歩

東京マラソンEXPO

アスエネヴェリタス株式会社取締役CCO・小池心平氏(写真左)、アスエネ株式会社コーポレート本部PR広報/PA部・伊集理予氏(写真右)

小池氏は今回の取り組みの意義について、次のように語る。「地球全体で見れば、どこでCO2を1トン減らしても同じ1トンの削減です。しかし、多くの人が集まる場所やイベントを舞台にすれば、その1トンは数字以上の価値を持ちます。誰もが注目する場所でアクションを起こすことは、周囲の意識を変え、社会全体へポジティブな影響を広げていくことができるからです。」。世界的なスポーツイベントである東京マラソンで始まったこの取り組みは、脱炭素社会に向けた新たな大きな一歩となるだろう。

※1 東京ドームの電力利用:東京ドーム(スタジアム)の物件共用部・自社利用部で使用する電力は、すべてRE100対応の再生可能エネルギー由来の電力を使用。場外のグッズ販売や場内の一部テナント店舗は対象外。

※2 アスエネ「ap bank fes ’25 at TOKYO DOME 〜社会と暮らしと音楽と〜」におけるイベント全体のCO2排出量の事後算定を実施

※掲載している情報は、2026年3月31日時点のものです。

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