資生堂が化粧品原料の生分解性をAIで即時評価する技術と、安全性情報を自動識別するシステムの開発に成功。従来1〜2か月かかった評価を即時化し、化粧品業界の環境対応と安全性保証の両立を加速させる。

ELEMINIST Press
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株式会社資生堂は、AIを活用した「化粧品原料の生分解性評価法」と「安全性情報識別システム」の2つの革新的な技術開発に成功したと発表した。100年以上にわたる研究知見にDXを融合し、環境配慮と安全性保証の両面で化粧品業界の課題解決を目指す。
図1 AIを活用し環境問題およびヒトへの安全性に対する対応強化
持続可能な社会の実現に向け、環境負荷の低い素材の活用促進は化粧品業界共通の課題だ。従来の生分解性評価はデータ取得に約1〜2か月を要するうえ、評価者の経験に結果が左右されるという問題があった。
資生堂は独立行政法人製品評価技術基盤機構(ナイト)の協力のもと、化学構造をもとに成分の生分解性をAIで予測する「AI-QSAR(定量的構造活性相関)」を活用した新評価法を開発した。化審法向けに経済産業省が開発したAIモデルをベースに、化粧品成分の実測データを新たに蓄積してモデルを最適化。これにより、高度な専門知識や網羅的な試験なしに、化粧品原料の生分解性を即時かつ高精度で評価できるようになった。
今後はこのAIモデルを業界共通の基盤として展開し、化粧品業界全体の環境負荷低減に貢献していく方針だ。
図2 生分解性評価を行うAI-QSARの予測イメージ図※2
※2 生分解性する成分の化学構造とその組み合わせによる生分解性のし易さを学習したAIモデルが、評価したい成分の化学構造から自然界に於いて水と二酸化炭素など自然界に存在する物質になり得るかを評価
もう一つの成果は、化粧品原料の安全性情報を迅速に識別するシステムだ。安全性評価では膨大な文献や既存情報の調査・検証が不可欠だが、高度な専門知識と多大な時間を要するため、情報不足で原料の活用を断念するケースもあった。
新システムは、反復投与毒性や皮膚感作性などの評価項目に関する重要情報の抽出を自動化し、文書の関連度を高精度で識別する。これにより属人的なばらつきや見落としのリスクを低減し、専門人材が安全性の最終判断に集中できる体制を構築した。情報不足で使用できなかった原料の活用も可能となり、新たなイノベーション創出にもつながると期待される。本研究は2024年日本動物実験代替法学会第37回大会で発表され、大会長特別賞を受賞している。
図3 安全性評価に役立つAIモデルの概念図※3
※3 AIモデルが、未知の文章に対して、安全性評価の上で重要な情報である可能性をスコアとして正確に算出
資生堂はR&D理念「DYNAMIC HARMONY」のもと、「Sustainability Innovation:循環型の価値づくり」を研究開発の柱の一つに据えている。今回開発した2つのAIモデルは、人だけでなく環境への安全性保証を同時に高めるものであり、その実現に向けたDXの象徴的な成果といえる。今後もAI活用や外部研究機関とのデータ連携を通じてDXを推進し、経験値だけでは生まれないイノベーションの創出を加速させていくとしている。
お問い合わせ/株式会社資生堂
https://corp.shiseido.com/jp/
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