テレワークや在宅勤務が推奨されるなか、「ABW(Activity Based Working)」という新しい働き方が注目を集めている。「ABW」とはなにか。その概念やメリットとデメリットも説明する。働き方の前向きな選択肢として認知し、自らのワークスタイルに役立てよう。
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コロナなどの影響でテレワークが推進される昨今。「ABW(エービーダブリュー)」という言葉が脚光を浴びている。
「ABW」とは、「Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の略。
従来のようにオフィスのなかで、チームや組織、階層などにしたがって働くのではなく、企業側が個々にふさわしいワークプレイスを用意し、ワーカー自らが働く場所を使い分けることを意味する。
世界で初めて「ABW」について語られたのは1985年。「ハーバー・ビジネス・レビュー」内の論文で概念について述べられた。
それから15年後、オランダのベルデホーエン氏が初めて保険会社の建築プロジェクトとして「ABW」を導入。
同年、ベルデホーエン氏が著書を出版し、注目を集めたことで「Veldhoen + Company(ヴェルデホーエン)社」が「ABW」概念の創設的な地位を確立した。
「ABW」を提唱したヴェルデホーエン社。想定されるワーカーの活動を「10の活動」(もしくは、「10のふるまい」とも呼ばれる)に分類した。
一人で作業する場合、二人作業、三人での作業、その他にわけ、作業人数と作業内容にもっとも適した作業環境とはなにかを図でわかりやすく示している(※1)
自由にワークプレイスを選べると聞くと「フリーアドレス」と似ていると感じるかもしれない。「フリーアドレス」はオフィス内で固定席をなくし、席を自由に行き来できること。
それに対し、「ABW」は業務遂行に適した環境をワーカー自らが選ぶことができる。つまり、オフィスの外も選択肢に入るため、自宅やカフェ、公園なども仕事場として含まれる。
1990年代後半から欧米の、グローバルカンパニーを中心に広まってきた「ABW」。これまでにMicrosoftやLEGO、IKEA、MSDなどが導入を進めてきた。
「ABW」発祥の地、オランダの電力会社・エッセントは自宅勤務を推奨。「ABW」導入前に13か所あったオフィスが4か所に集約され、不動産やオペレーションコストを大幅に削減したという。
オーストラリアのグローバルな不動産企業は、「ABW」導入後8割以上の従業員がアンケートで「モチベーションが上がった」と答えた。
日本はどうだろうか。2018年に、「イトーキ」がヴェルデホーエン社の支援のもと、国内で初めて本格的に「ABW」を取り入れた新本社オフィスを東京・日本橋にオープン。
さらに2019年11月から、2社間で資本提携を締結し、「ABW」のコンサルティング事業を開始した。
国内では「ABW」はスタートを切ったばかり。だが、すでに「三井デザインテック」が産学共同で行った調査では、従来の固定就労に比べ「ABW」が就労意欲や個人のパフォーマンスを引き出すワークスタイルとしてより適していることが示されている。
改めて「ABW」のメリットについてまとめてみよう。
まずは、「生産性の向上」がある。固定席では、集中して作業していても臨席の同僚などから相談を持ちかけられたり、電話を受けなければなら居ないこともある。
作業が中断すれば当然ながら、生産性は下がってしまう。1人で集中できるスペースがあれば、効率よく作業を進められる。
続いて、「従業員の満足度の向上」。先に述べた豪州不動産企業のアンケート結果からもわかるように、作業に適した場所で、ときにリフレッシュもしながら仕事を行うことで満足度は高まることは容易に想像できる。
その3、「従業員のワークライフバランス向上」。オフィス外の作業も認められるため、テレワークや在宅勤務などが可能に。
通勤時間の短縮や、移動に伴うストレスの軽減、体調にあわせた勤務などにより、従業員それぞれに適したかたちで就労できる。
その4、「コスト削減」。テレワークや在宅勤務者が増えれば、オフィスはより小さくても十分に機能する。
家賃や光熱費などの固定費や、ペーパーレス化が進むことでコピー用紙や印刷代なども大幅に削減できる。
その5、「優秀な人材を獲得できる」可能性。個々に最適な環境が与えられ、それによってパフォーマンスが高まることは優れた能力を持つ人材にとって魅力的だ。
「ABW」を導入する企業は、優秀な人材を惹きつける可能性が十分にある。
いいことづくめに見える「ABW」。デメリットについても知っておきたい。
もっとも起こりうるのは「コミュニケーションが低下する可能性」。おのおのが場所を選び、社外でも働ける。すなわちそれは、近くに同僚や上司がいないということでもある。
わからないことや相談したい事案ができたとき、すぐに解決できない可能性がある。また、なにげない会話から生まれる突発的なアイデアやひらめきの芽が出てくる機会が減るかもしれない。
「会社への帰属意識の低下」も懸念材料。職場での滞在時間が減り、自宅や社外で個々のペースで仕事を進めていくことで、個の感覚がおのずと強くなることもあるだろう。
※1
ITOKI TOKYO XORK
https://www.itoki.jp/xork/abw/
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