酪農を持続可能に 人・社会・地球すべての健康を目指す明治グループの挑戦

明治ホールディングス

「健康にアイデアを」をグループスローガンに掲げ、食や健康のプロフェッショナルとして、さまざまな製品を生み出している明治グループ。幅広い分野でのサステナビリティ活動を行うなかで、明治の牛乳生産に欠かせない酪農業界そのものを持続可能にする取り組みにも注力している。今回は、先進的なアクションとして評価されている酪農分野の取り組みについて紹介する。

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2025.09.04
Promotion: 明治ホールディングス

meijiらしい健康価値で、「人・社会・地球のすべて」を健やかに

明治ホールディングス

創業以来100年以上にわたって、人々の生活を健やかにする製品を提供してきた明治グループ。同社では、グループスローガンや、コーポレートCMなどでも「健康」というキーワードを使用しているが、健康の対象は決して人だけにとどまらない。

明治グループが目指すのは、人だけでなく、社会や地球のすべてが健康であること。地球を含むすべてのステークホルダーが健康であってこそ、よりよい未来を実現できると考えているのだ。

「私たちが提供している製品の原材料を生産していただいている農家さんや、原材料そのものを生み出してくれている動物たちも含めて、すべてが健康になることを目指しています。原材料の生産地域や環境全体のことも意識しながら、さまざまな取り組みを進めています」と、コーポレートコミュニケーション部の山下舞子氏は話す。

牛乳に関わるすべての人を笑顔に 明治グループが目指す「酪農」の未来

明治グループでは、「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」を掲げ、幅広い分野においてサステナビリティ活動を行っている。重要項目として挙げられているのは、「気候変動」や「人権・環境に配慮したサプライチェーン構築」などの12項目。

明治グループが扱う主要な原材料のひとつが生乳だ。わたしたちにとって身近な「牛乳」は、牛や酪農家、メーカーなど多くの関係者によって製造販売されている。同グループでは、牛乳をサステナブルに生産・供給するために、牛乳生産に関わるすべての人や牛にとってよりよい未来をつくる活動に力を入れている。

現在、酪農業界は、地球温暖化や土壌汚染といった環境負荷をはじめ、後継者や労働力の確保など、さまざまな課題が指摘されている。

明治グループでは、これらの課題をひとつずつ解決することが、持続可能な酪農につながると考えている。牛乳に関わるすべての人や環境が持続可能な状態のもとで、「牛乳をおいしく、安全・安心に届ける」。そんな未来を目指し、「酪農家支援」「地域貢献」「環境負荷低減」の3つの領域で、積極的に取り組みを推進している。

人の成長を通じて持続可能な酪農経営をサポートする「Meiji Dairy Advisory」

明治ホールディングス

持続可能な酪農を目指すための主要な取り組みが、2018年に開始した「Meiji Dairy Advisory(メイジ・デイリー・アドバイザリー / MDA)」だ。MDAとは、ひと言で表現すると、持続可能な酪農経営を支援する活動のこと。明治グループでは、酪農に関わる人の成長に焦点を当て、現場の人材マネジメントを通じて酪農経営を支援している。

「酪農家の労働力不足や飼料の高騰など、酪農業界の課題は多く、国内の生乳生産は減少の一途を辿っています。さまざまな課題があるなかで、私たちとしては、労働環境をはじめとする“人”に起因する課題が大きいと考えました。そこで、農場の作業や経営管理技術の改善といった人材マネジメントを通じて、現場で働く方々を支援することに注力し、この活動をスタートしました(木村康行氏 / 酪農部)」。

MDA活動において、主役はあくまで農場だ。定期的にミーティングを開催し、明治グループの専門チームが、農場スタッフや経営者と一緒になって“あるべき姿”を考える。具体的には、農場内のコミュニケーションを促進し「日常カイゼン」を行うほか、ビジョンの策定や年間目標の設定を通じて「目標設定カイゼン」を推進。組織として強くなるために、管理職の育成や成長マインド構築などの「仕組みカイゼン」にも取り組む。必要な改善を積み重ねる「カイゼン文化」を養い、最終的には農場が自走できることを目指している。

2024年には、国際酪農連盟(IDF / International Dairy Federation)の「IDF Dairy Innovation Awards 2024」において、MDAの活動がファイナリストに選定された。

MDAに取り組む農場は、2024年度時点で累計56戸。「目標設定をすることで、年々出荷乳量が増えている」「労働時間の短縮を実現でき、休みを確保できるようになった」など、成果を実感している酪農家からの声も集まっている。2026年度までに、パートナー農場100戸を目指し、さらなる取り組みを進めていく。

環境負荷の低い酪農へ 温室効果ガスを削減するさまざまなアプローチ

地球の健やかさも重視する明治グループでは、環境負荷低減のための施策にも取り組んでいる。牛乳においては、まず、商品の原料生産から使用・廃棄までのライフサイクル全体のうち、どこからどれくらいの温室効果ガス(GHG)が排出されているかを明確にするために、カーボンフットプリントの算定を行った。

算定の際には、明治グループの社員が農場へ赴き、集計を担当。牛の飼養頭数や生乳生産量、耕作面積、エネルギー使用量など、幅広いデータを収集し、酪農家と協力しながら、GHG排出量の「見える化」を進めていった。その結果、生乳を生産する酪農由来の排出が全体の9割近くを占めていることがわかった。

「カーボンフットプリントの算定には細かなデータを押さえる必要があり、相当手間がかかります。まずは、酪農家さんに算定の意義をご理解いただき、データをご準備いただくところからスタートしました。ふだんなかなか行わない作業に戸惑いながらも、GHG排出量にご興味を持っていただいていた側面もあります」と、酪農部の橋口和彦氏(以下、橋口氏)は振り返る。

現在は、データをもとに、GHG削減における具体的な施策を進めているところだ。

牛のゲップやふん尿由来のGHG排出削減

酪農における環境負荷の文脈でしばしば指摘されるのが、牛のゲップに含まれるCH₄(メタン)が及ぼす地球温暖化への影響だ。牛乳の生産から消費・廃棄の過程で排出されるGHGの6割程度をCH₄(メタン)が占めており、排出源のほとんどが牛のゲップ由来と考えられている

明治グループでは、2024年5月に、スイス・オランダに本拠を置く飼料・食品添加物大手のdsm-firmenich社と協力し、牛のゲップに含まれるCH₄(メタン)の削減プロジェクトをスタートした。カギとなるのが、飼料添加物「ボベアー®」だ。牛に小さじ1/4杯程度与えることで、ゲップ由来のCH₄(メタン)の排出量を約30%削減できるとあり、酪農における世界的イノベーションとして注目されている。

また、牛のゲップに注目されがちだが、ふん尿にもN₂O(一酸化二窒素)というGHGが含まれている。牛のふん尿由来のN₂O(一酸化二窒素)は、味の素が開発した乳牛用アミノ酸製品「AjiPro®-L」を飼料に混ぜ、アミノ酸バランスを調整することで抑えられる。明治グループでは、2023年3月に味の素と協業し、酪農におけるN₂O(一酸化二窒素)削減のためのビジネスモデルを構築。「AjiPro®-L」によって削減できたGHG排出量をJ-クレジットとして明治グループが買い取り、酪農家に代金が支払われるという内容だ。

「牛のゲップやふん尿由来のGHG削減は、海外では事例がありますが、国内ではほとんど進んでいないのが現状です。「ボベアー®」に関しては活用はまだまだで、これから普及させていく段階。まずは『どうすれば日本の酪農家さんに広まっていくのか』というスキームを考える必要があります。使用が負担にならないように、明治が主体となって酪農家さんと一緒に取り組んでいきます(池下秀介氏 / サステナビリティ推進部、以下「池下氏」)」。

農地にCO₂を取り込む「カーボンファーミング」の推進

2023年8月には、「道東カーボンファーミング研究会」のメンバーになった。カーボンファーミングとは、さまざまな方法により農地の土壌の質を向上させ、土地に貯留する炭素の量を増やしていく農法のこと。酪農におけるGHG排出削減の取り組みのひとつとして、近年注目されている。

カーボンファーミングの具体的な手法としては、飼料用の作物と一緒に別の植物を植える「カバークロップ」や、化学肥料を制限し、堆肥を効果的に使用することで土壌の健やかさにつなげる方法などがある。明治グループでは、牧草地の炭素貯留量の計測や、変化の調査を通して、カーボンファーミングの取り組みを推進する。

牛にも環境にもやさしい、有機JAS規格の「明治オーガニック牛乳」

明治オーガニック牛乳

北海道・津別町の酪農家の方々と連携し、オーガニック牛乳の開発をスタート。

2006年に発売された「明治オーガニック牛乳」は、北海道網走郡津別町の指定牧場で、有機農法で育まれた牛から搾った生乳のみを使用した、有機JAS規格の認証牛乳だ。明治グループは、1997年頃から、自然の力を活かした「牛にやさしい」「環境にもやさしい」牛乳づくりを模索してきた。

たどり着いたのが、環境負荷の低減やアニマルウェルフェアに配慮した循環型酪農だった。津別町の指定農場では、有機酪農が実践され、牛がストレスフリーな環境で大事に育てられている。牛に与えられるのは、化学肥料や農薬を使わずにつくられた有機飼料のみ。牛の排泄物は、堆肥として活用し、豊かな土壌づくりに活かされる。

明治オーガニック牛乳

「明治オーガニック牛乳は、牛も環境も大事にしたいという酪農家さんと私たち明治の想いがマッチした取り組みです。酪農業が環境を破壊する産業になってはいけないというところから、検討が始まり、ノウハウがないゼロの状態からすべて手探りでスタートしました。化学肥料を使えないルールのなかで、穫れる作物の量が違ったり、十分な成長が見られなかったり、有機への移行期間が非常に苦しかったと伺っています(橋口氏)」。

明治グループによる、酪農を持続可能にする取り組みは、酪農家との連携なくして成り立たない。酪農業界の課題を解決に導くために、酪農家はもちろん、国内外の多くの団体と協力し、よりよい未来を追求し続けている。

生活に欠かせない牛乳を、サステナブルな形で届けることが使命

おいしくて、私たちにとって大切な栄養源である牛乳。近年は、環境負荷や人手不足など、酪農業のネガティブな部分にフォーカスされがちだが、決してそうではない。
「酪農業には課題も残されていますが、酪農によって生み出される価値やプラスの側面も多々あります。明治グループが主体となって酪農家さんと一緒に課題を解決し、『酪農は持続可能な産業』だといわれる未来を目指したいです」と、池下氏は話す。

また、橋口氏はこう考える。
「日本の人口が減少し、真っ先に煽りを受けるのは農村部。地域が衰退すると、産業が成り立たなくなるように、酪農家さんが辞めてしまうと、酪農産業が衰退してしまいます。MDAをフックにして、酪農家さんが農場経営や産業そのものを引っ張っていけるような取り組みをこれからも強化していきたいです。産業を強くするために、目の前にある課題をひとつずつ解決していきます」。

「meiji makes milk. meiji makes wellness.」をスローガンに

このような取り組みや酪農の現状を知らせるため、8月1日より明治グループとして、牛乳やヨーグルトの原材料である“生乳”を取り巻く環境やさまざまな問題と明治の取り組みを「meiji makes milk. meiji makes wellness.」というスローガンの下、発信を開始。酪農を取り巻く多くの課題に対し、様々な取り組みによって「人」も「社会」も「地球」も“健康”であるよりよい未来へ向かうことを表現している。

meiji コーポレートCM 「人、社会、地球の健康」篇

明治グループが販売する牛乳は、これからも、もっともっとサステナブルになるだろう。そんなふうに期待しながら、「明治おいしい牛乳」や「明治オーガニック牛乳」を手に取ってみてはいかがだろうか。

取材・執筆/吉田友希 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2025年9月4日時点のものです。

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