ヘアドネーションとは 必要な長さや条件、寄付先をわかりやすく解説

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耳にする機会が増えた「へアドネーション」というワード。1997年にアメリカでヘアドネーションの団体が立ち上がったことをきっかけに、日本でも広がりを見せている。ここでは、ヘアドネーションをする際に必要な条件、実践するために知っておきたいこと、おすすめの団体を解説する。

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2024.05.24
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ヘアドネーションとは

ヘアドネーションとは、病気やけが、脱毛症などで髪を失った人に対して、寄付された髪の毛を用いて医療用ウィッグを製作し、無償で提供する活動のこと。

その歴史は、1990年代にアメリカで始まった。当時のアメリカでは抗がん剤治療による脱毛が問題視されていた。そんななか、1997年に設立されたNPO団体「Locks of Love」がヘアドネーションの活動を広めていった。日本では、2009年にNPO法人「Japan Hair Donation&Charity(JHD&C)」が設立され、ヘアドネーションの活動が開始。近年、ヘアドネーションは日本でも知名度が高まっており、さまざまな人が活動に参加している。

誰のためのもの?

ヘアドネーションによる医療用ウィッグは、小児がんや白血病などの病気、不慮の事故等で髪の毛を失った人、脱毛症などにより頭髪に悩みを抱えるすべての年代の人々のためにつくられる。

どう使われる?

ヘアドネーションによってつくられた医療用ウィッグは、必要とする人々に無償で提供される。ヘアドネーションによる医療用ウィッグは100%人毛でできているため、見た目や質感がとても自然なことが特徴だ。髪の毛がないことでさまざまな悩みを抱える子どもたちに自信を与え、社会復帰を手助けする重要なアイテムとなっている。

ヘアドネーションに必要な条件とは

へアドネーション 条件 団体 髪の毛

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ヘアドネーションに髪の毛を寄付する際には、いくつかの条件をクリアしなければならない。ヘアドネーションを考えている場合は、髪の毛の状態が以下の条件に当てはまるかどうかを確認しよう。寄付する団体によって条件が異なる場合があるため、団体が出している条件も合わせて確認することをおすすめする。

長さは31cm以上

ウィッグの地肌となる生地に髪を植え付けるためには、髪を半分に折り返す必要がある。ウィッグとして用途をなすためには完成時にある程度の髪の長さが必要であり、使用する髪の長さは31cm以上が求められる。

また、ウィッグを必要とする女の子が望むのは、セミロングやロングヘアのフルウィッグであることが少なくない。製作には40cmや50cm以上の長さの髪が必要となるが、集まりにくいのが現状だ。多くの団体で、これらの長さの髪の毛が慢性的に不足しているという。

乾いた状態でカットされたもの

カットした髪の毛は、しっかりと乾いた状態のものである必要がある。その理由は、濡れた髪の毛は雑菌が繁殖したりカビが生えたりしやすく、衛生面からウィッグの素材としては使えないからだ。

ヘアドネーション用に髪をカットする際は、髪を濡らさずに切る必要がある。ヘアドネーション賛同サロンならば事情を知っているため心配ないが、日頃から通っている美容院や自宅でセルフカットする際は気を付けたい。

切り口が輪ゴムでしっかりまとまっている

髪の毛は一人分ごとに、複数の毛束に小分けにして送る。紐で結ぶと配送中にほどけてバラバラになるリスクがある。ラップやアルミホイルで巻くと開封に時間がかかり、毛束の先端や切り口をボンドで接着すると接着剤がついた部分を切断しなければならず、毛束ごと廃棄になってしまう可能性がある。

これらの問題を防ぎ、髪の毛を無駄にしないために、毛根をできるだけ揃えてゴムでしっかりとくくろう。切ってからくくるのは髪の毛が滑って難しいため、切る前にいくつかの束に小分けにしてゴムでくくり、その状態でカットするのがスムーズだ。

白髪・パーマ・カラーリング・縮毛矯正の髪もOK

白髪やパーマ、カラーリング、縮毛矯正をした髪の毛も、極端なダメージがない限り寄付することができる。ウィッグになったときに自然になじむよう、製作時にトリートメント処理を施し、統一感のある自然な黒色、髪質に整えられる。

千切れるほどのハイダメージな髪はNG

軽く引っ張っただけで切れてしまうほどの極端なダメージがある場合、医療用ウィッグとして使用できない場合がある。

ウィッグはどのようにつくられる?

へアドネーション 髪の毛 ウィッグ

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ドネーションカットされた髪が各団体に届いた後、まず長さやカラー別に仕分けされ、工場でトリートメント処理される。トリートメント処理は、以下の工程で進められる。

1.キューティクルを取り除く
2.染毛する
3.髪をほぐして一定量で束ねる
4.脱水・乾燥
5.髪をとかして汚れやごみを取り除く
6.選毛・仕分け・検品
7.髪を整えて細かい長さで分ける
8.結束作業

これらの工程を終えたものはウィッグメーカー工場に送られる。職人が髪を一本一本手作業で半分に折り返し、ウィッグの地肌となるネットに植え込むことで、医療用ウィッグへと生まれ変わる。

一つの医療用ウィッグを製作するために、ショートヘアでは30~50人分の毛髪を、ロングヘアでは50~70人分くらいの毛髪が必要になる。ヘアドネーションに用いられる髪の長さは31cm以上が基本だが、31cm未満の髪が届いた場合は、美容師の練習用マネキンやシャンプーなどの開発会社に試作用の髪として販売され、その売り上げはウィッグ製作費の一部として役立てられる。

ヘアドネーションが必要とされる理由

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小児がんや白血病などの病気、不慮の事故、加齢やストレス、栄養不足など、髪を失う原因はさまざま。いずれにせよ、髪を失うことは精神面や生活において大きな影響を与える。ここでは、さまざまな側面からヘアドネーションが必要とされる理由について考える。

髪を失うことの心理的負担

多くの人にとって、髪は自身の見た目に大きく影響を及ぼす重要な部分。そのため、がん治療やその他の病気によって髪を失うことはアイデンティティにも影響を及ぼし、精神的にも大きな負担となる。ヘアスタイルの選択肢が制限され、外見が変わることで周囲の目を気にしてしまったり、人前に出ることが辛いと感じてしまうなどの心理的負担や、自信喪失やうつ病などの精神的な健康問題につながる可能性がある。

髪を失うことの身体的負担

髪は頭部の体温を調節する役割を果たしているため、髪を失うことで頭部の体温調節が損なわれる可能性がある。また、髪がないことによって紫外線などの影響を受けやすく、頭皮が傷つきやすくなってしまうなど、頭皮の保護機能が弱ってしまう。

社会がまだ成熟の過程にあること

多様性が受け入れられつつある現代社会において、髪のない人々が自信を持ち、自分らしく生きることができる社会を目指すべきだ。しかし、これまでの文化や価値観を変えることは容易ではない。社会全体がまだ成熟段階にあるために、人の価値を外見だけで測る「ルッキズム」といった偏見がいまだに根強く残っている。

社会の成熟を待っている間にも、傷ついてしまう当事者がいることは否定できない。そのような状況のなかでは、医療用ウィッグを用いることで当事者が少しでも自信を回復すること、前を向いて生きていけることは、必要なことといえるだろう。

"自然なウィッグ"の必要性

医療用ウィッグは、使用者の日々に寄り添うもの。ヘアドネーションによる医療用ウィッグは、人工毛でつくられたものよりも自然でなじみやすい。職人の手で1本1本手植えされ、オーダーメイドでつくられるウィッグは、通気性が高く、自身の頭の形に合った付け心地によりストレスを軽減してくれるという特徴がある。

病気やケガなどで苦しんでいる人々の自尊心や精神面をサポートするために重要な役割を果たすウィッグ。当事者のストレスを少しでも軽減するためにも、職人の手で、オーダーメイドでつくられる医療用ウィッグが求められている。

ヘアドネーションのやり方

へアドネーション 髪の毛 ウィッグ

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STEP1.髪を伸ばす

カットした髪の毛を医療用ウィッグにするには、切り口から毛先までの長さが31cm以上のものが必要になる。カット後のヘアスタイルとのバランスを考えながら、十分な長さになるように伸ばそう。

STEP2.髪の毛を切る

カットは、サロンでも自宅でのセルフカットでも問題ないが、ヘアドネーション賛同サロンであれば無料でカットしてくれる。

カットの際には、髪をいくつかの束に分けてゴムで強めに結び、結び目から1cm上の部分をカットする。束が太いと切り口が斜めになってしまい、十分な長さを確保できないことがあるため、注意が必要だ。また、髪は完全に乾いた状態であることが条件なので、事前にシャンプーをしないことにも注意しよう。

STEP3.ドナーシートに記入する

ドナーシートには、個人情報、髪の毛の情報などを記入する欄があるため、無理のない範囲で記入しよう。ドナーシートは、団体のホームページからダウンロードできる。

STEP4.髪の毛を送る

寄付する髪の毛の用意ができたら、団体ごとに必要なものを準備する。簡易な包装で、追跡可能な方法で送ることが推奨されている。先述したように、ラップで巻く、アルミホイルで巻く、台紙にテープで貼り付けるなどのまとめ方はNG。髪の毛をゴムで括り、束にしてからビニール袋やジップロックなどに入れ、ドナーシートとともに封筒やレターパックに入れて追跡可能な方法で送ろう。

STEP5.証明書やサンキューカードを受け取る

ヘアドネーションに参加後、証明書やサンキューカードを郵送やデジタル上で送付してくれる団体もある。

髪の毛の送り先におすすめの3団体

NPO法人Japan Hair Donation&Charity(JHD&C)

JHD&Cは、2009年に日本で初めてできたヘアドネーション団体。病気やけがなどの影響で頭髪に悩みを抱える18歳以下の子どもたちのために、へアドネーションでつくった医療用ウィッグを無償で提供している。「Onewig」と呼ばれるウィッグは、経済産業省が定める厳しい基準をクリアした、JIS規格適合の小児用医療ウィッグ。学校などでの集団生活で使用することを想定し、自然になじみやすい黒髪でつくられているのが特徴だ。

NPO法人HERO

HEROは、東日本大震災の被災地で、子どもたちにヒーローを通して元気と勇気を与える活動をしている団体。病気やけがなどによって頭髪に悩む18歳以下の全国の子どもたちに、完全オーダーメイドの医療用ウィッグを無償で提供する「ヘアドネーションプロジェクト」を行っている。また、ウィッグを被ったあとのカットも、賛同美容院にて無償で提供している。

株式会社グローウィング つな髪プロジェクト

つな髪は、医療用ウィッグメーカーの株式会社グローウィングが運営する、頭髪に悩む18歳以下の子どもたちを対象とした医療用ウィッグの無償提供プロジェクト。ウィッグの専門知識を生かし、子どもたちの頭髪の状態に合わせて4種類のウィッグから選ぶことができるのが特徴だ。これらの活動を通じて、医療用ウィッグの品質向上や、医療用ウィッグを必要とする人々への理解と支援を促進し、温かい社会を築くことを目指している。

すべての人が自分らしく暮らせる社会へ

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病気やけがなどで髪を失った人は、社会生活や精神面に大きな負担を抱えることが少なくない。そんな人々にとって、ヘアドネーションは大きな支えとなる。

ヘアドネーションを知り、協力したいと思った人は、必要条件をしっかり抑えて取り組んでほしい。アメリカの団体では、長さが足りない髪や破棄せざるを得ない髪が大量に届き、その処理や処分の手間が大きな負担となっていたことが過去にあった。良心により協力したのに、団体の負担になってしまっては残念だ。また、髪の寄付が難しい人は、ヘアドネーション団体へ金銭で支援をするという方法もある。ウィッグをつくるには髪だけでなく、お金が必要となるからだ。

本来ならば、ウィッグがなくとも、誰もが自分らしく幸せな日々を送れる社会であることが望ましい。しかしながら、現段階ではそれを完璧に求めるのはまだ難しい。自分に合ったウィッグを着けることは、髪の悩みに縛られることなく、毎日を自分らしく生きることにつながる。ヘアドネーションは、それを支える取り組みだ。

※掲載している情報は、2024年5月24日時点のものです。

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