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誰もが利用しやすい状態を指す「アクセシビリティ」。SDGsの原則として「誰一人取り残さない」があるが、よりよい社会を実現するためにはアクセシビリティの考え方が欠かせない。本記事では、アクセシビリティの意味や類義語との違いを解説。身近な12の具体例も紹介する。
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アクセシビリティとは、英語で「Accessibility」。直訳すると「近づきやすさ」や「利用しやすさ」の意味となる。転じて、誰もが平等に利用しやすい状態を指して使われる。
高齢者や障がいを持つ人を含めたすべての人々に配慮された状態があって、はじめてアクセシビリティが実現しているといえる。一方で、特定の誰かが商品やサービスを利用しにくい状態は、アクセシビリティが実現しているとはいえない。
アクセシビリティは、高度情報社会である現代において一層重要視される考え方である。
ウェブアクセシビリティとは、文字通り、ウェブにおけるアクセシビリティを指す言葉。あらゆる人が、ウェブ上で提供されている情報やサービスを利用できることを表している。ウェブサイトが重要な情報源とされる現代において、ウェブアクセシビリティの向上は欠かせない。さまざまな利用者がウェブから平等に情報を入手できるように整える必要があるのだ。
デジタル庁では、「誰一人取り残されない、人にやさしいデジタル社会の実現」を目指すとして、ガイドブックを公開し、ウェブアクセシビリティの向上に取り組んでいる。国内のウェブアクセシビリティの規格として用いられることが多い「高齢者・障害者等配慮設計指針 情報通信における機器、ソフトウェア、及びサービス― 第3部:ウェブコンテンツ」(JIS X 8341-3)を指標として取り組みを行っている。(※1)
2023年3月には、障害者差別解消法が改正された。これまでは事業者における障がいのある人への合理的配慮の提供は努力義務とされてきたが、2024年4月1日からは義務化される方針だ。(※2)法の基本的な考え方では、合理的配慮の提供を行うための環境整備として、情報アクセシビリティの向上に努めることの重要性について触れられている。(※3)
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ウェブアクセシビリティと似ている言葉に、ユーザビリティ(usability)がある。ユーザビリティとは、使いやすさを意味する言葉。ユーザーの使い勝手に重きをおいて使われることが多い。
ユーザビリティはターゲットとしている特定の人に対しての使いやすさを意味するのに対し、アクセシビリティは多様な利用者を前提とした利用しやすさを意味する。アクセシビリティは、ユーザビリティより幅広い利用者を想定しているのが特徴だ。
ユーザビリティとアクセシビリティは、どちらも利用しやすさを指す言葉という点では似ているが、両者は必ずしも通じているわけではない。例えば、アクセシビリティを向上させるために字幕を大きくしたところ、字幕が不要な人にとっては画面が見づらくなってしまったというケースが考えられる。場合によっては、アクセシビリティの向上がユーザビリティの低下を招くことがあるという点をおさえておきたい。
ユニバーサルデザイン(Universal Design)のユニバーサルには、「普遍的な」「万人の」という意味がある。つまり、ユニバーサルデザインは直訳すると、すべての人のためのデザインという意味である。最初から誰もが使いやすいように設計する考え方を指して使われることも多い。
ユニバーサルデザインとアクセシビリティは、誰もが利用しやすい状態という同じゴールを目指しているが、細かなニュアンスは異なる。アクセシビリティは利用しやすさの度合いを表すのに対し、ユニバーサルデザインは考え方やアプローチを指している。両者はゴールが同じなので、ユニバーサルデザインを追求すると、アクセシビリティが向上する。
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iPhoneに、利用しやすさを向上させるための「アクセシビリティ設定」(※4)があるように、アクセシビリティの例は身近に多く存在する。以下では、スマートフォンの機能やウェブコンテンツの工夫、プロダクトなどから12の具体例を紹介する。
手が塞がっているときやメモを取りたいときに重宝するハンズフリー機能。ハンズフリー機能は肢体不自由な人にとっても使いやすく、アクセシビリティの確保の観点からも重要視されている。近年は、電話に出る行為をしなくても自動で応答する機能を備えた電話が増えている。
音声アシスタント機能であるAppleの「Siri(シリ)」は、話しかけるだけでiPhoneの操作を代わりに行ってくれる。Siriを活用すれば、手を使って操作をしなくてもメッセージの送信や電話をかけることが可能となる。
Amazonの「Alexa(アレクサ)」も、アクセシビリティが向上するツールのひとつだろう。自宅の家電のリモコン機能を集約できるだけでなく、音楽の再生や本の読み上げなども可能。ひと言話しかけるだけで操作できる。
文字の読み上げ機能があると、視覚障がいを持つ人や高齢者にとって利用しやすくなる。指定したコンテンツを読み上げる設定や、受信したメールを自動で読み上げる機能を備えた携帯電話が販売されている。また、ウェブページを読み上げるためのツールもさまざまなものが提供されている。
聴覚障がいを持つ人が利用できるように、聴覚に頼らない通知機能を備えた製品が増えている。例えば、スマートフォンの振動によって通知するバイブレーションはそのひとつ。ほかにも、iPhoneでは着信時にLEDライトがフラッシュするように設定できる。
利用者にとって、読みやすい文字の大きさは異なる。とくに高齢者や弱視の人にとって、小さな文字は読みづらい。文字が読みづらいと感じたときに、文字のサイズを変更できる機能があると便利だ。アクセシビリティの確保のためには、初期設定の文字を小さすぎないようにしておくのも重要とされる。
見やすいウェブサイトをつくることは、ウェブアクセシビリティを向上するための取り組みのひとつである。見やすいフォントを採用し、テキストの色味やコントラストを配慮することが重要とされている。色覚異常の人や弱視の人、高齢者にも見やすいウェブサイトであってはじめてウェブアクセシビリティが確保できているといえる。
タイトルがついているだけでも、ウェブページはわかりやすくなる。以下のページに何が書いてあるのかを把握しやすく、利用者が、自分にとって必要なコンテンツかどうかを判断しやすい。逆にタイトルがついていないと、何の情報が書いてあるのか理解しにくく、必要な情報にたどり着くまでに時間を要してしまう。
ウェブコンテンツとして動画で情報を伝える場合には、字幕をつけることが重要とされている。字幕がついていることで、聴覚障がいを持つ人や非ネイティブの人にも情報が伝わりやすくなる。また、周囲に雑音がある環境でコンテンツを再生しやすい点もメリットだ。
シニア世代を中心に普及している「らくらくホン」には、読みやすい文字や大きなボタンが採用されている。最低限の機能がついたシンプルな設計で、操作性にすぐれているものが多い。また、必要な機能だけを搭載したキッズケータイは、操作に慣れていない子どもに寄り添った製品だ。
iPhoneの設定も日々進化している。「アシスティブアクセス」の設定では、限定された機能やシンプルな操作性のほか、テキストではなくビジュアルでコミュニケーションをできる方法を提供している。認知障がいを持つユーザーが簡単に自立してiPhoneを使えるように、わかりやすさが追求されている。(※2)
公共トイレや高齢者住宅には、ワンプッシュで通報できる装置が備えてあることが多い。緊急時に押すだけで状況を伝えられるので、一人暮らしの高齢者や身体が不自由な人のいざというときに役に立つ。
ユニバーサルデザインを取り入れて設計された施設は、通路が広くとってあり、アクセシビリティが高い傾向にある。スペースが確保されていると車いすの人やベビーカー利用者でも通ることができ、誰もが快適に過ごしやすい。
JALでは、旅におけるアクセシビリティの向上を目指してさまざまな取り組みを行っている。すべての利用者の利便性を考慮して、国内基幹空港においてJAL SMART AIRPORTを展開。スムーズな搭乗のための工夫が施されている。
搭乗の際に特別な手伝いが必要な利用者に向けた「SPECIAL ASSISTANCEカウンター」では、障がいを持つ人や妊婦、高齢者などを対象にさまざまなサポートを提供している。(※5)
障がいを持つ人や高齢者を含め、すべての人が平等に生活するためには、アクセシビリティの向上が欠かせない。さらに、多くの情報をウェブから得る現代においては、商品やサービスだけでなく、ウェブにおいてのアクセシビリティの確保も必要だ。
誰もが暮らしやすい共生社会を実現するために、アクセシビリティについていま一度考えたい。そして、社会の一員として、できることから実行していこう。
参考
※1 ウェブアクセシビリティ|デジタル庁
※2 障害者差別解消法に基づく基本方針の改定|内閣府
※3 総務省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針 P2|総務省
※4 iPhoneのアシスティブアクセスについて|Apple
※5 アクセシビリティの向上|JAL
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