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SDGsの目標に対して、優先課題分野ごとにどう取り組むのかがまとめられた「SDGsアクションプラン」。社会情勢を踏まえて、毎年アップデートされている。SDGsとの関係や、2023年に新たに加えられた内容を、政府や企業の取り組みと合わせて解説する。
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「SDGsアクションプラン2023」は、SDGs実施指針に基づき、SDGs達成に向けた政府の具体的な施策をとりまとめたもので、2018年版から毎年更新されている。2030年までに目標を達成するために、政府が行う具体的な施策やその予算額を整理し、各事業の実施によるSDGsへの貢献を見える化することを目的として策定している。
SDGs実施指針とは、SDGs達成のための中長期的な国家戦略として位置づけられているもので、日本独自の取り組みの柱として、ジェンダー平等の実現や地域活性化、防災・気候変動対策、環境の保全などの「優先課題8分野」を掲げている。
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先述した「8つの優先課題」は、それぞれ2030アジェンダに掲げられている以下の「5つのP」に対応している。
1.あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
2.健康・長寿の達成
すべての人が生きがいを感じられ、多様性のある包摂社会を目指す。全世代型社会保障の構築や女性活躍、孤独・孤立対策などに取り組むとともに、子どもの貧困対策や持続可能な開発のための教育(ESD)を推進するなど、人への投資を行う。
3.成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
4.持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
社会課題を成長のエンジンへと転換し、持続的な成長を実現させるために科学的なイノベーションを加速させることや、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会の実現に取り組む。また、気象災害や地震による被害を減らすべく、2023年夏を目途に新たな国土強靱化基本計画を策定し、中長期的かつ継続的に、防災・減災、国土強靱化に取り組む。
5.省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
6.生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
気候変動問題を始めとする地球規模の課題に総力を挙げて取り組む。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、温暖化対策やプラスチック汚染対策、生物多様性の保全に関する国際協力への参画などを通じて地球環境課題に積極的に取り組む。
7.平和と安全・安心社会の実現
国民の安全・安心な暮らしを確保するために、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜き、国際社会の平和と安定に貢献する。途上国においては人間の安全保障の考え方に基づき、能力構築や人材育成等に引き続き取り組んでいく。
8.SDGs実施推進の体制と手段
2023年に改定を行う「SDGs実施指針」も含め、SDGs推進円卓会議を中心に、国内外のあらゆる関係者との連携を促進・強化する。また、2023年前半を目処に開発支援のあり方を定めた開発協力大綱を改定。さらに、SDGsが掲げる「国民総所得(GNI)のうちODAの割合を、開発途上国に対して0.7%にする」目標の達成を目指す。
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「SDGsアクションプラン2023」は2022年版と比較すると、項目が追加されてより具体的な内容が記されている。
2023年のSDGsアクションプランには、新たに「ビジネスと人権」に関する内容が追加された。国際的な要請も高まり、企業が人権リスクに対処する重要性が強調され、2023年のプランではスタートアップやイノベーション、人材への投資が重視され、ビジネス展開支援や人材育成も加わった。また、2023年3月に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」にも言及しており、2030年までに陸域・海域の30%以上の保全を目指す取り組みを進め、地域活性化を図るための国立公園満喫プロジェクトや観光の推進が述べられている。さらに、外交の重要なツールであるODAを戦略的に活用し、質の高い成長や国際秩序の維持・強化に貢献するため、「開発協力大網」を改定。
「SDGsアクションプラン2023」では、SDGs達成のためには各国・地域や国際機関との連帯強化が不可欠であることが強調されている。
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各国政府や国際機関では、各国の状況や優先事項に基づいてさまざまなアクションプランを策定している。
国連は、SDGsの推進と達成を支援するために、「2030アジェンダ」や「持続可能な開発のためのパートナーシップ・プラットフォーム」など、さまざまなプログラムやイニシアティブを展開している。国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの国際金融機関も、持続可能な開発を支援するために資金提供や政策アドバイスを行っており、とくに途上国への支援が強化されている。
各国政府のSDGsアクションプランは、国の状況や優先事項、文化的背景に基づいて異なるのが特徴だ。例えばスウェーデンは、SDGsのなかでもジェンダー平等や社会的な包摂に力を入れているが、中国では大気汚染や水質汚染といった環境課題に取り組みながら経済成長を維持するための政策を展開し、環境技術の発展や再生可能エネルギーの導入を重視している。
その他にも、南アフリカでは経済的な不平等や貧困の削減、失業率の改善を重要視し、SDGsを通じて社会的な平等と経済的な発展を両立させる取り組みを行っている。このように、各国によって力をいれるポイントが異なるのが大きな特徴だ。
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企業が持続可能なビジネス戦略とSDGsを統合することは、社会的価値や経済的な効果を生むための重要な取り組みだ。製品やサービスのデザインにSDGsの視点を組み込むことや、環境への影響を最小限に抑えること、労働条件などに対する配慮を行うことが重要だ。企業がこれらの取り組みを積極的に行い、SDGsとの統合を進めることで、より持続可能な未来を築くことができるだろう。
サプライチェーンにおけるSDGsへの取り組みは、サプライヤーやパートナーとの連携による持続可能な調達などを通じて、SDGsの達成に貢献できる手段となる。例えば、廃棄物削減や再生可能エネルギーの活用、適正な労働条件の確保、地域社会への貢献などの活動を行い、SDGsへの進捗や成果をステークホルダーに情報開示することで、透明性の向上や信頼を高めることができる。
「SDGsアクションプラン2030」は、SDSs達成に向けて日本がとくに力を入れて取り組むことを国内外に示すものだ。日本政府がどのような分野を重視し、投資していくのかを知ることができる重要なものだ。
社会情勢などによってその都度新たな内容が追加されるSDGsアクションプランは、ビジネスにおいても、課題に対応しながらそれぞれの目標を達成していくための重要な指針となるだろう。SDGsやサステナブル領域における課題解決に向けて、あらゆる戦略をともに考え伴走するサービスも存在する。よりよい未来を描くために、これらを利用することも目標達成に向けた一つの解決策となるだろう。
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