Photo by AllGo - An App For Plus Size People on Unsplash
ここ数年で美の基準が大きく変化し、多様性を受け入れる考え方が重要視されるなか、「ボディポジティブ」という言葉は大きなムーブメントとなりつつある。これまでの美の定義を覆し、ありのままの自分の体を愛すというこのムーブメントは、一体どのようなものなのだろうか。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
Photo by AllGo - An App For Plus Size People on Unsplash
ボディポジティブ(またはボディポジティビティ)とは、「自分の体をありのままに愛そう」という、欧米を中心に始まったムーブメントのこと。社会や他人が決めた「理想的な体型・外見」に左右されず、自分の身体をポジティブに捉えるという価値観が広まったことで、スリムで痩せていることを良しとする、従来の美の定義は崩れつつある。
最近は体型だけでなく、体の傷や体毛などもその対象となってきている。また、Instagramでは#BoPoというハッシュタグとともに100万件以上の投稿がされている。
Photo by AllGo - An App For Plus Size People on Unsplash
ボディポジティブの考え方が広がった背景には、女性が社会から求められる美の基準に苦しんでいる状況がある。代表的なものとして、外見を馬鹿にしたり批判する「ボディシェイミング」や、外見至上主義と言われる「ルッキズム」があげられる。雑誌や広告、SNSには極端に痩せたモデルが起用されるようになり、「痩せた体形=キレイ」という美の基準が定着。これにより、外見を気にして過度なダイエットや整形に苦しむ人が急増したのだ。実際に、摂食障害が原因で命を落としてしまったファッションモデルもいる。
これらのステレオタイプによる苦しみから解放され、ありのままの姿を受け入れて幸せになろうと考える人が増え、ボディポジティブという考え方が急速に広がった。
Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash
ボディポジティブの考え方を取り入れることで得られるメリットはたくさんある。外見のコンプレックスと向き合い、ありのままの自分を受け入れ愛せるようになることは、自己肯定感を高めることにもつながる。誰かの判断基準ではなく、自分自身の判断基準で体型の見方を変えていくことで、自分の体をポジティブに考えられるようになるのだ。また、過度なダイエットを行うなど体に悪影響を及ぼす危険性のある行為をせず、ありのままの自分の体を愛することは、自身の健康維持にもつながる。
さらに、米学術誌「Journal of Personality and Social Psychology」が発表した研究では、自分の外見や体型に対してネガティブな感情を持つことを許すことでメンタルヘルスが改善されるという結論を導き出すことができたそうだ。このように、心身ともに健康な日々を過ごす上で、ボディポジティブは大きな役割を担っているのである。
Photo by Mimi Thian on Unsplash
世の中の意識が変化していくにつれ、世界ではボディポジティブに積極的な企業が増加している。ここでは、その例をいくつか紹介する。
多様性が広がり、プラスサイズモデルの起用が増えるなか、2013年12月にPlus-Size-Modeling.comがプラスサイズのバービー人形の写真をFacebookに投稿した。これまでのバービー人形のイメージとは異なり、二重アゴとふっくらした手足のバービー人形の姿に賛否が巻き起こった。投稿には17万人を超える人々が「いいね!」を押した一方で、「不健康な習慣を勧め、肥満を推奨している」など6,000人以上が批判のコメントを寄せた。
2013年に発刊されたプラスサイズ向けファッション誌「lafarfa」。主に20代半ば~30代半ばのぽっちゃり女子が読者層で、ガーリー系やコンサバ系からY2Kまで、バラエティに富んだファッションスナップが掲載されている。スナップにはモデルの身長と体重、スリーサイズを明記しており、アイテムのサイズ展開も詳細に表記されている。
さらに、2022年7月にはECモール「la farfa SHOP ONLINE」を開設し、同誌の人気モデルたちがプロデュースしたワンピースやブラウスなどのアイテムは売り切れ続出。一般的なアパレルブランドでは最大でもLLまでの展開が多いが、最大で10Lサイズまでを取り揃えており、そのサイズ展開にも定評がある。
「美しさは不安ではなく自信の源である」という考えから、2004年にスタートしたDoveの「セルフエスティーム(自己肯定感を高める)プロジェクト」。容姿に関する分野の専門家の協力を得て研究に基づいた資料を作成し、これまでに2,000万人以上もの若者に自己肯定感を高めるための教育を提供している。
また、世界152の国と地域に約1,000万人もの会員を持つガールガイド・ガールスカウト世界連盟と協働し、7歳から15歳の子どもたちを対象に、自己肯定感を育てる質の高い教育の開発を目的としてつくられた学習ツールなどを提供している。
Photo by Lucrezia Carnelos on Unsplash
最近では、ボディポジティブから派生し、自分の外見や体型に対する感じ方をそのまま受け入れるという「ボディニュートラル(またはボディニュートラリティ)」というムーブメントも登場している。
「ボディポジティブ」は、自分の外見や体型に対するコンプレックスを肯定することを推奨しているが、なかには無理に自分を納得させることに抵抗を抱く人もいる。そのなかで、自分の体に対して個々が抱くネガティブな感情もポジティブな感情もそのまま受け入れるという考え方は多くの共感を呼び、海外で急速な広がりを見せている。
Photo by Agata Create on Unsplash
ルックスや肌色、肌質、病気や障害の有無で世界の主役を決める時代は終焉を迎え、近年では従来の美の基準を満たしている女性が活躍することもあれば、多様なルックスの女性が活躍することもある。「ボディポジティブ」というムーブメントは、すべての人が自分らしさを大切にする現代において、スタンダードな価値観となっていくだろう。
ELEMINIST Recommends