カカオをアップサイクルしたインテリアでカカオ香る部屋−「ひらけ、カカオ。」からライフスタイルブランドが登場

ひらけ、カカオ。

2006年から継続的にカカオ農家支援活動を行っている明治。2022年からはカカオを通じたサステナブルなアクションを広げるためのプロジェクト「ひらけ、カカオ。」を開始している。2023年2月には“カカオ新素材”を使った新しい食品やドリンクが発表され、このほど非食品領域の発表が行われた。この記事では新ブランド発表会のレポートとともに、この取り組みに向けた明治とパートナー企業各社のエピソードについて紹介する。

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2023.07.29
Promotion: 明治

カカオの未活用部位をアップサイクルしたライフスタイルブランド「CACAO STYLE」を発表

CACAO STYLE

明治では、2006年から独自のカカオ農家支援活動である「メイジ・カカオ・サポート」に取り組んでおり、その地域で生産された「明治サステナブルカカオ豆」の調達比率を、2026年までに100%にすることを目標にしている。

あまり知られていないことだが、チョコレートの原料として活用されるのは、カカオの種(カカオ豆)だけであり、カカオ豆を発酵させるエネルギー源として消費されるカカオパルプ(果肉)と合わせても、カカオの実の約3割しか価値に転換されていない。そこでカカオがフルーツであることに着目した明治は、カカオの可能性を1つ1つ開いていきたいと考え、「ひらけ、カカオ。」プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトでは、①ホールカカオ活用への進化、②バリューチェーンそのものの進化、③情報発信の進化という3つの“進化”をテーマに掲げている。

株式会社明治 代表取締役社長の松田克也氏

2023年6月28日に開かれた「ひらけ、カカオ。ライフスタイルブランド発表会」に登壇した、株式会社 明治 代表取締役社長の松田克也氏。

チョコレートの製造工程で取り除かれたカカオハスク(カカオ豆の種皮)は、カカオ豆全体の約10%にあたる。日本のカカオ豆輸入量は年間4.9万トン、これはすなわち4.9千トンのカカオハスクが取り除かれているということになる。実際にカカオハスクは有効活用されることなく、結果として飼料や肥料、燃料などに使用されているというのが現状だ。

そこでカカオハスクのもつ新たな可能性を広げたいという想いから立ち上がったのが、②のバリューチェーンそのものの進化に関する非食品領域のブランド「CACAO STYLE」だ。

チョコレートの香りに包まれた、夢があふれるライフスタイル

CACAO STYLE

「CACAO STYLE」のプロダクトが展示された“カカオの部屋”。ここにあるものすべてにカカオハスクが使用されている。

「CACAO STYLE」は、「衣・住のカカオコーディネートでカカオに関わるすべての人のウェルネスライフを実現」というコンセプトの元につくられた“カカオから生まれたあたらしいライフスタイルブランド”で、カカオハスクのアップサイクルがキーワードとなっている。

生み出されるプロダクトは、容器や小物などの比較的小型なもののみならず、家具や建材、繊維に至るまで多岐にわたる。これらにカカオハスクを活用することができたのは、多くのパートナー企業の協力があってのことだ。もちろん彼らにとっても未知の素材であるから、一朝一夕で製品化に至ったわけではない。

こうした企業努力を重ねて完成したプロダクトはデザイン性が高く、思わず手に取りたくなるようなものばかりだ。カカオハスクの特徴は、なんといってもチョコレートを思わせるようなカカオの香りや色。今回発表・展示された「CACAO STYLE」の商品は、どれも落ち着いた色合いで、うっとりするような香りを漂わせていた。

カカオの不可食部位に新たな価値を見出すことでカカオの価値が高まり、結果的に生産者の生活をより豊かにすることができる。そして消費者側も未知のプロダクトをライフスタイルに取り入れることによって、日々の中で五感を用いた楽しみ方が増すだろう。

CACAO STYLEの床材

カカオハスクの表情が残った床材は、まるで海外のタイルを思わせるような質感。ほのかにカカオの甘い香りが。

「CACAO STYLE」に参加したパートナー企業の想いとは

CACAO STYLE

「CACAO STYLE」の商品に携わったパートナー企業と、カカオハスクを使った建築を手がける建築事務所の方に、今回のプロジェクトへの想いやこだわり、ブランドへの期待感についてお話を聞かせてもらった。

菱華産業 MIRAIWOOD、我戸幹男商店

菱華産業のMIRAIWOODは、木材などの廃材をアップサイクルし、リサイクル可能な植物性プラスチックをつくる技術から生まれた素材で、石油成分を70%以上削減している。「CACAO STYLE」で発表したのは、紙コップ用のハンドル付きスリーブ「CACAOカフェスリーブ」とお菓子ボックス「CACAOキャニスター」だ。

「カカオハスクは油分が多いので、通常のプラスチックと同じように成型すると油がでてしまうんです。その特徴をどう活用するかという部分に、いまも苦労しています。自然なものから生まれた素材の製品が広がれば、サステナブルな世界をつくる1つのチカラになると思っていますので、ユーザーのみなさんにもぜひ目を向けていただけたら嬉しいです」(藤塚氏)
我戸幹男商店は、石川県加賀市の山中温泉地域にある会社。山中漆器の産地で明治時代から事業を継承している。近年は、国内外のブランドとコラボレーションも盛んに行っている。「CACAO STYLE」で発表した「GATOボンボニエール」はMIRAIWOODとのコラボで、伝統工芸である山中漆器の廃木粉にカカオハスクをブレンドし、アップサイクルした漆器。

「GATOボンボニエール」

Photo by 0838

「GATOボンボニエール」

「通常山中漆器で使っている素材は、木全体の数%・薄皮1枚だけを商品にしていて、ほとんどの鉋屑は燃やされたり肥料にされたりしてきたんです。今回それが有効に活用できるので、SDGsの取り組みに加わることができたら、伝統工芸としても良くなっていくのではないかと思います。今回は製作中にカカオの香りが工房に広がっていました」(我戸氏)

VOID brownew

CACAO STYLE「brownew Vase」

Photo by 0908

「brownew Stand」(写真中央)、「brownew Vase」(写真右)

「今回カカオハスクを活用して新しいものをつくらせていただきましたが、大量生産して大量廃棄にしてしまうとそもそもの考え方がズレてしまうので、このプロダクトを買うということ自体がいままでの体験を変えられるように、きちんとストーリーと機能に価値を感じていただけるようにしたいです。

3Dプリントは、大量生産ではなく多品種を少量製造できるという特徴を持っているので、多様な生活スタイルに合わせたものづくりができたらと思っています。また、使い終わったら戻してつくり替えられるという点も活かし、ユーザーさんと継続した関係性をつくっていけたらいいですね」(溝端氏)

VOID株式会社 代表取締役 溝端友輔氏

Photo by 0675

VOID株式会社 代表取締役 溝端友輔氏。

VOIDは3Dプリント技術を持つデザイン会社。カカオハスクをマテリアルの一部に採用したインテリアブランドを「brownew」と名付け、ECサイトをオープンした。「CACAO STYLE」で発表したのは、フラワーベース「brownew Vase」とスタンド「brownew Stand」。

fabula、teco

「カカオハスクは香りが良く、制作中はチョコレートの香りが漂い、幸せな気持ちになりました。一方で単体だと強度を持たせるのがやや難しい素材なので、10%ほどは別の食材を加えています。

一般的には、使われない食品に対して廃棄物や残渣という表現をしますが、私たちはとても大事な原料で循環していく物質だと捉えています。カカオハスクを使ったブランドを通して、原料がここにたどり着くまでに辿った道や背景、関わった人などに想いを馳せていただけたらと思います。生活をより豊かなものにしていく一つのツールとして選んでいただけたらいいですね」(町田氏)

fabulaは東京大学発のベンチャー企業。さまざまな食品廃棄物から新素材をつくる技術を持っている。今回「CACAO STYLE」で発表したのは、なんと8アイテム。その中で販売を行っているのは、「コースター」、「チャーム」と、「お香立て」。

teco は建築の設計事務所で、家具や住宅、公共施設の設計・デザインを手がけている。大阪関西万博2025が公募した若手の建築家によってデザイン提案できる機会に応募し、応募総数256件の中からギャラリー設計者として選定された。

「プロポーザル当初よりfabulaさんと協業して“おいしい建築”“食べられる建築”をコンセプトに提案しています。そのご縁で、今回の明治さんとの取り組みに参加することになりました。これからの建築産業が、閉ざされたものではなくもっと開かれたものとして広がっていけばと考えています。万博でも、カカオハスクを使ったものを製作・展示予定です」(金野氏)

他にも、「CACAO STYLE」には、DNP(大日本印刷)やヘミセルロース、Curelabo、FUJITAKA TOWELなどの企業が参画している。

カカオハスクの活用・アップサイクルは、まだまだ始まったばかりだ。「CACAO STYLE」の今後の展開と、カカオに関わるすべての人を笑顔にしたいという明治の取り組みは、社会全体にいい風を吹き込むことだろう。

撮影/小澤達也 取材・執筆/河辺さや香 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2023年7月29日時点のものです。

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