Spiber株式会社が進めている生物圏循環システムの研究開発に、株式会社ゴールドウインとPANGAIAが参画。ゴールドウィンとともに、微生物が栄養素として分解できるよう設計された際の製品製造における課題を検知することを目的としたデモプロダクトを制作した。
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構造タンパク質素材「Brewed Protein™(ブリュード・プロテイン™)」を開発するSpiber株式会社は、循環型の廃棄物ゼロ社会の実現を目指し、衣料や農業の廃棄物を、微生物発酵で新たなタンパク質を生産する際の原料に転換する、バイオスフィア・サーキュレーション(生物圏循環)システムの研究開発を進めている。
そして今回、同社の長期的パートナーである株式会社ゴールドウインと欧米に拠点を置くサステナブルファッションブランドPANGAIAが同プロジェクトに参画。
ゴールドウインとは、同社協力のもと、微生物が栄養素として分解できるよう設計された際の製品製造における課題を検知することを目的としたデモプロダクトを製作した。このプロジェクトで試験的にプロダクトがつくられるのは、今回が初めてとなる。
繊維産業は繊維素材のリサイクルという課題に直面していて、廃棄された繊維製品のうち、新たな用途にリサイクルされているのは1%未満と言われている。
それを大きな課題として受け止め、Spiberはバイオベースおよび生分解性を有する繊維、そしてサトウキビのバガスやトウモロコシの茎葉などの農業廃棄物も含め、ごみとされてきたものを最大限に資源として活用することに取り組んだ。
そうして新たにBrewed Protein™素材に再生する循環型エコシステムの実現を目指し、必要な技術の確立、製品設計ガイドラインの作成、インフラ構築等に向け、長期的な開発に取り組んでいる。
アパレル繊維製品に使用されるさまざまな種類の繊維、染料、加工用化学薬品を試験し、何が効率的に栄養素に分解できるかの検証等を進めつつ、同システムの長期的な商業化を目指す。
今回のコラボレーションは「取る-つくる-使う-捨てる」という直線型モデルから「取る-つくる-使う-再利用する」という循環型モデルへの移行に向け、同システムの研究開発の、そして業界全体での導入の促進を目的としている。
各社から、完全循環可能な包括的な製品設計ガイドラインを開発するための各種サポートをしてもらう予定となっている。
今回、同プロジェクト内でゴールドウインとともに製作したプロダクトは、微生物が栄養素として分解可能な条件に基づいて設計され、オーガニックコットン90%、Brewed Protein™繊維10%の割合で配合されており、通常ポリエステルが使用される、タグにはすべてオーガニックコットンを、縫製糸にはセルロースベースの糸がそれぞれ使用されている。
また、商業的に準拠可能な設計にすべく、9月にGoldwinブランドから実際に発売を予定している製品の型が使用された(9月発売製品は循環型使用ではない)。
このプロダクト自体の完全な循環性は今後さらに精査していく予定となっているが、染料などの加工材料の分解性やセルロースベースにしたときの縫製糸の強度など、解決すべき潜在的課題を検知でき、作成を進める完全循環型の製品ガイドラインの完成に向け、多くの重要な示唆、情報を得ることができた。
また、製品をつくるために何が使われたかを詳細に知ることができるという透明性の確保が、循環型社会の実現には不可欠と考え、本プロダクトの製作と合わせ、使用された原材料や素材、加工材料、またサプライチェーン等の詳細な情報にアクセスできる試験的なウェブページも作成し、製品の袖口にQRコードとして縫い付けている。
Spiberは今後も、より持続可能な未来を追求すべく、ゴールドウインやPANGAIAなど強力な参画企業にサポートしてもらいながら、素材のつくり手として研究開発を推進していくとともに、業界全体で限りある資源を有効に活用し、包括的な循環型モデルとインフラを確立させるべく、プロジェクトの推進と合わせ、より多くのブランド、企業への参画を呼びかけていくとしている。
Brewed Protein™素材は、植物由来のバイオマスを原材料に使用した微生物の発酵プロセスにより生産され、さまざまなアプリケーションへ活用できる。
Brewed Protein™ポリマーを紡糸したBrewed Protein™繊維は、シルクのような光沢と繊細さを持つフィラメント糸、さらに上質でなめらかな肌触りのカシミヤや嵩高性に優れたウールのような紡績糸にも加工することができる。
高級獣毛でありながら、さまざまな環境リスクを指摘されているカシミヤ繊維と比較した場合には、温室効果ガスの排出量の大幅な縮小と土地や水の使用量の削減が、また、Brewed Protein™素材自体は生分解性を有するため、最終製品の設計によっては石油由来製品によるマイクロプラスチック排出の課題解決への貢献が見込まれている。
Brewed Protein™繊維の生産規模が拡大していけば、同社が初期的な注力分野としているアパレル産業向けのテキスタイル用途において、従来の動物由来、植物由来、合成素材に代わるソリューションを提供することができる次世代の素材になり得るとして期待が寄せられている。
お問い合わせ先/Spiber株式会社
https://spiber.inc
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