Photo by Christina @ wocintechchat.com on Unsplash
サステナブルなビジネスを知る上で現代の日本社会において、企業にとって欠かせないテーマとなりつつある「サステナビリティ 」。両立が容易でないとされるサステナビリティとビジネスを、世の中の企業はどのように推進しているのだろうか。成功事例をもとに、そのポイントやメリットを紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
わたしたちの買い物が未来をつくる|NOMAが「ソラルナオイル」を選ぶワケ
Photo by Michael Olsen on Unsplash
サステナビリティとは、日本語で「持続可能性」を意味する。1987年に環境と開発に関する世界委員会(WCED)が公表した報告書「Our Common Future」で初めて用いられ、その中でサステナビリティは「持続可能な開発とは、将来の世代が自らのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たす開発である」と定義された。環境や社会、人々の健康、経済などあらゆる場面において、目先の利益やパフォーマンスを追求するのではなく、より長期的なシステムを使って事業を行おうというのが、サステナビリティの考え方だ。
2015年にはSDGs(持続可能な開発計画)が採択されるなど、世の中ではますますその重要性が認識されるようになった。近年ではさまざまな広告やメディアで使用されるようになり、日本社会にもサステナビリティの概念は広まりつつある。
SDGsとESGは、それぞれ異なるものを対象としているのが大きな違いだ。SDGsは国という大きなものから個人という小さなものまで、非常に幅広いものを対象としている一方で、ESGは企業や投資家を対象にしている。
このような違いがあるものの、2つは密接に関わり合っているとも言える。ESGは、環境・社会・ガバナンスという3つの視点を持ち、社会の中で企業を中長期的に成長させていくために欠かせない要素だ。企業がESGを意識した経営を行うことは、結果的にSDGsの目標達成につながる。そのため、2つの取り組みを同時に進めていく企業が多い。
サステナビリティの概念は日本社会に広く浸透しつつあり、現代においては企業の環境保護活動や社会貢献活動などに高い注目が集まっている。そのため、企業が長期的に活動していくためには、自社の利益だけを追求するのではなく、個人や社会に還元し、環境保全や社会課題の解決に取り組むことが必要だ。サステナブルな取り組みは、今後あらゆる企業にとってその重要性が高くなっていくだろう。
Photo by Medienstürmer on Usplash
ビシネスとサステナビリティを両立させるためには、サステナビリティに関する知識を身につけ、ビジネスの視点で理解していく必要がある。ここでは、2つを両立させるために必要なポイントを3つ紹介する。
環境保全は、企業の存続と事業活動を継続するためにも意識すべき取り組みのひとつだ。環境に配慮した製品や循環型社会を考えたサービスの開発を行うことは、企業のサステナビリティに対する取り組みを世間に広めるためにも重要となる。また、サステナブルな事業を自社の既存の事業とコラボレーションさせて製品化を進めるなど、利益を得ながらサステナブル経営の実現を図ることも必要だ。
製品やサービスの開発後、それらを社会に広めるために必要なマーケティングやプロモーションの領域をサポートしてくれるサービスも存在する。これらは、ビジネスとサステナビリティを両立させるために重要なサポートとなるだろう。
多くの事業活動による環境負荷は大きく、環境にできるだけ配慮した取り組みを模索する必要がある。サステナビリティに力を入れている企業が行っている取り組みとしては、梱包材の削減や徹底的なごみ分別、リサイクルやリユース、FSC認証やMSC認証のある原料の使用などがあげられる。製品やサービス意外に自社で取り組んでいる環境に配慮した活動を社外に開示することで、企業やブランドとしての信頼度や価値の向上に向上につなげることができる。
サステナブル調達とは、製品の原材料や部品の調達から製造、在庫管理、配送、販売に至るまでのサプライチェーンにおいて、環境や社会に配慮した持続可能な調達を目指す取り組みのこと。サプライチェーン全体を把握し、労働環境なども管理することが重要だ。
サプライチェーン全体の管理にはコストがかかるが、結果的に原料の安定調達や品質向上につながり、地域の雇用創出や生産コストの低減なども期待できる。そのため、サステナビリティとビジネスの実現を目指す上では大切な項目だ。
Photo by Agata Create on Unsplash
サステナブル経営を行うことで、企業にとってどのようなメリットが得られるのだろうか。3つのポイントに絞って紹介する。
社会や環境に配慮した企業活動を通じて、顧客や取引先からの信頼も向上し、企業やブランドイメージの向上が期待でる。評価が上がれば、それに連動して企業価値も高まるため、優秀な人材の確保や業績アップが期待できる。
生産過程での資源やエネルギーの消費量を減らすことで、生産効率を高めるだけでなく、コスト削減につながったという例もある。こまめな節電や廃棄物の削減が大切だ。
企業の持続可能な存続や成長のためには、従業員の満足度も大きな鍵を握る。労働環境の見直しや改善を行うことで、従業員の働く意欲や満足度が高まり、生産性の向上や離職率の抑制なども期待できる。目先の負担だけでなく、その先にある成果を見据えて考えていくことが大切だ。
Photo by Nicholas Doherty on Unsplash
お菓子などの製造を手がける食品メーカー、カルビー。同社は、企業活動を通じて社会価値を提供し、持続的な成長と持続可能な社会を実現することを使命としている。サステナブル経営を目指しており、「食の安全や安心を確保」「多様性を尊重した全員活躍の推進」や「10年間で女性管理職の20%以上の引き上げ」といった取り組みを積極的に行っている。
22年3期の実績として、温室効果ガス総排出量11.4%削減、製品フードロス11.8%削減、女性管理職比率 23.3%、男性育児休業取得率 28.8%、障がい者雇用率 2.66%など目標に近い形で達成し、社員の意欲向上や環境、社会への貢献を実現している。
家具メーカーであるIKEAは、「森林を管理し、管理下にある木材を試用して価格・デザイン性だけでなく環境負荷も削減」「廃棄物を削減できるデザインや素材の提案」など、家具の素材選びをはじめ環境や気候への影響を考えたサステナブル経営を行っている。
2030年までに達成すべき目標とプランを設定し、具体的な数値目標を示している。気候変動に対する取り組みでは、節水や節電、ごみの分別の啓発をしながら、健康的な生活を送れる商品とアイデアを提供。原料の85%が植物由来のバイオプラスチックなどを販売し、2016年度には全世界で2,000億円の売上を達成。また、同社で使用している木材の99.5%は適正に管理された持続可能な森林由来の証であるFSC認証取得の木材、もしくはリサイクルされた木材から調達し、使用している。
電気機器メーカーのCanonは、社会的ニーズのある事業部門の強化や持続可能な社会に役立つ製品開発などを積極的に行っている。2021年5月には、サステナビリティに関する活動を強化するためにサステナビリティ推進本部を設置し、対処すべき課題について各部門と連携しながら取り組みを進めている。2050年までにCO2排出量ゼロを目標に掲げ、資源消費の抑制と高度な資源循環に対する取り組みや、女性管理職候補者育成研修を行うなど、女性の活躍を推進する取り組みも進めている。
これらの取り組みが評価され、環境コミュニケーション大賞の環境報告書部門で連続して「優良賞」を獲得。信頼される高い技術で製品を提供するなかで、環境や社会に対して行うサステナブルな取り組みが注目を集めている。
環境負荷が高い産業と言われているファッション業界のなかで、商品のライフサイクルを延ばす取り組みを行っているのが、アウトドアブランドの「THE NORTH FACE」だ。
成長に合わせてサイズを変えられる子ども服や、体型の変化に適応するマタニティウェアなど、環境の変化があってもできるだけ長く着用し続けられるような工夫を行っている。さらに、破損した商品の修理保証制度を設けているほか、過去に販売したすべての商品のリペアサービスも行う。年間約14,000点のリペアを行い、商品のライフサイクルを延ばす努力を続けており、こうした取り組みはブランドとしての価値や信頼を高めている。
ユニリーバは、ビジネスを通じてSDGsの17の目標すべてに貢献している。SDGsが採択される前の2010年に、事業成長とサステナビリティを両立するビジネスプランを導入。2020年までに10億人以上が健やかに暮らせるために支援する、環境負荷を削減するなどの目標を掲げた事業戦略「サステナブル・リビング・プラン」を実施。さまざまな取り組みを通じて、消費者の製品使用1回当たりの廃棄物量を32%削減、すべての工場で埋め立て廃棄物ゼロなど、多くの成果を上げた。さらに、後継プランとして「ユニリーバ・コンパス」を発表し、環境や社会の課題を解決しながら成長し続けることを目指している。
同社は、サプライチェーン全体のサステナブルな取り組みについても積極的に情報を開示している。これらの取り組みが高く評価され、世界34カ国において「大学生が選ぶもっとも働きたい企業」の消費財部門で選出され続けている。
Photo by Guillaume de Germain on Unsplash
世界規模で環境問題や社会問題が深刻になるにつれて、大手企業だけでなくあらゆる企業にサステナビリティへの取り組みが求められつつある。
ビジネスとサステナビリティの両立は容易なものではないかもしれないが、少しずつでも取り組みを始めていくことが企業やブランドの信頼、そして価値の向上にもつながる。これまでに紹介した企業の成功例やポイントをもとに、サステナブルなビジネスを成功へ導くために必要なことを改めて考えてみることをおすすめしたい。
何から始めればいいのか、どのように取り組みを進めていけばいいのかを模索している場合は、さまざまな解決策でサステナブルな企業姿勢や目標達成に向けた事業活動の前進をサポートしてくれるサービスなどを参考にするのもいいだろう。
ELEMINIST Recommends