老舗寝装具店が布団のあり方を見つめる 地球と人にやさしい「sinso」

布団を抱える女性

Photo by Shuhei Tonami

昭和初期創業の老舗「寝装の米林」を原点に持つヨネバヤシリース株式会社は、2022年12月「寝装具のあり方を正し、再構築する」をコンセプトとした新ブランド「sinso」を発表した。サブスクリプションサービスを提供するなかで、契約終了後の布団の「打ち直し」による再利用を目指す。

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2023.03.01
SOCIETY
学び

エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

寝装具のあり方を再構築するライフスタイルブランド「sinso」サービス開始

ブランドタグ

Photo by Shuhei Tonami

ヨネバヤシリース株式会社は、2022年12月12日に「寝装具のあり方を正し、再構築する」をコンセプトとした新ブランド「sinso(シンソー)」を発表した。人と地球にやさしい寝装具のあり方を模索していく新事業のファーストフェーズとして宿泊施設向けの販売およびサブスクリプションサービスを開始している。

2023年には布団やリネン、枕などの寝装具を中心とした一般消費者向け販売を予定しており、同時にルームウェアやタオルへの展開を視野に入れている。

ヨネバヤシリースは、富士山麗の地にて昭和初期に創業した「寝装の米林」という名の老舗寝装具店を原点に持つ。時代の波にもまれ、寝装具店は一度廃業。

その後に河口湖周辺を拠点とした宿泊施設事業へと転換、バックパッカー向けホステル「kagelow Mt.fuji HOSTEL KAWAGUCHIKO」や、かつて撮影スタジオだった建物をリノベーションしたホテル「yl&Co Hotel in Mt. Fuji」を展開してきた。

日本独特の布団文化と、現代の寝装具のあり方を見つめ直す

富士山

Photo by Shuhei Tonami

日本独特の寝具である布団は、かつては家族代々受け継がれることもあるほど長く使えるものとされてきた。手入れをして使い続けるために、かつては町ごとに地元の布団屋があったが、時代の流れとともに効率化を重視する大量生産の社会へ移行した結果、寝具は大量生産のラインに乗った規格化が進み、徐々に消耗品へと変わっていった。

その結果、地元の布団屋の数は減り、いつの間にか布団本来の価値が忘れられ始めている。100年ほどもつと言われている羽毛そのものの耐久性や、布団屋ならではの”打ち直しの技術”など日本の布団文化が従来から持っているメリットを活かせば、地球そして人にやさしい寝具として自然定着するのではないかと考え、新事業の立ち上げがスタートした。

現代における寝装具のあり方を見つめ直し、形骸化されてしまったその価値を再構築していくことが「sinso」の目指すところだ。

sinsoプロダクトの3つのこだわり

地域ごとにベストな羽毛量をカスタマイズ

布団

Photo by Shuhei Tonami

南北に伸びる日本列島には地域ごとの表情があり、それだけ異なった気候が存在する。市販の布団は羽毛量が統一されていることが多いが、sinsoは、ロケーションのもつ特性、標高や温湿度の環境に合わせてオーダーごとに最適な羽毛量を調整。

実際に、sinsoの寝具を導入している「SANU 2nd Home(株式会社Sanu)」では、長野県や山梨県などに計50棟展開する滞在施設向けに、地域ごとに質量を調整した羽毛布団を提供している。

その土地に合った寝装具で快適に過ごしていただけるよう、地域ごとに対応した最適な布団を届けるのがsinsoのベーシックなのだ。

綿100%の洗いざらし = sinsoの定番

シーツを敷く女性

Photo by Shuhei Tonami

sinsoは、布団の気持ちよさを最大限引き出すためにシーツとカバーは綿100%のみを扱い、かつ寝具業界としては非常識な “洗いざらし” で届けることをデフォルトとしている。

肌に気持ちよく馴染むように、そして環境にもやさしい商品を提供するべく、糊付けしてアイロンをかけることをやめたことで、静電気の発生を抑制しただけでなく、高品質な綿の質感が生まれた。擦れた音さえ心地良く、綿本来の良さが引き出されている。

サブスクリプション形式による再利用促進と、打ち直しの技術

ホテルのベッド

Photo by Shuhei Tonami

現時点では宿泊施設向けのみ対応可能としており、販売という方法以外にもサブスクリプションサービスも提供している。(シーツなどのリネン類は含まない)

サブスクリプション契約期間後は同社が回収し、自社工場で丁寧にクリーニングを施した後に再び布団として活用するか、枕やクッションとして再商品化するなどのオプションを見据えている。

また布団屋ならではの打ち直し技術を使うことで、使用済み布団の再生加工を施し、再び宿泊施設で継続利用してもらえる仕組みも提供予定だ。

「打ち直し」は江戸時代から始まったとされる職人技で、布団の再生加工のこと。使用された布団から綿や羽毛を取り出し、ほぐしたり洗浄したりして、ふわふわと柔らかな状態に戻す技術で、昭和30年〜50年くらいまでは多くの家庭で毎年打ち直しをしてきたとも言われている。

元々「田舎の布団屋」をルーツに持ち昔からの技術を持つヨネバヤシリースだからこそ可能になる、再利用オプションとなる。

「sinso」自社クリーニング工場を設立した理由

自社オフィス

Photo by Shuhei Tonami

ブランドの立ち上げに先駆け、2022年9月にオフィスを併設した自社クリーニング工場「sinso office & factory」を設立し稼働。かつて精密機器の製造工場として使われていた物件をインダストリアルな空間にリノベーションし、sinsoブランドの拡張性とポテンシャルを秘めた拠点と位置付けている。

すべては、理想のクリーニング環境を実現するため。寝装具ブランドが自社クリーニング工場を保有するのは珍しいことだが、シンプルに、気持ちいい布団で暮らすことの価値を見出してほしいという想いから、クリーニングがもたらす影響についても考え抜いた。

クリーニング工場

Photo by Shuhei Tonami

同工場ではクリーニングのすべての工程を、工場内で精製したオゾン水を使って行っている。オゾン水は環境残渣のない機能水とされ、抗菌作用に優れるため使用しなくてはならない洗濯洗剤の量を減らすほか、低温洗浄でも十分な洗浄効果が期待できる。

クリーニングの観点においても、地球と人にやさしいブランドとしてアップデートしていくことを目指している。

寝装の米林から、sinsoへ

sinso建物外観

Photo by Shuhei Tonami

ヨネバヤシリース株式会社 代表の米林琢磨氏は次のようにメッセージを発信している。「私たちのミッションは『田舎の布団屋』というルーツを大切にしながら、近年崩れてきてしまっている布団の価値を再構築すること。

高品質な羽毛や綿でつくられた本当に気持ちいい布団を社会に提供し、同時に昔から存在している布団の文化を現代の人々が再認識することで、新しい価値を見出せると信じています。そのために、sinsoを立ち上げました。

形骸化しつつある寝装具業界、そしてクリーニング業界の常識を覆しながら、“地球”と“人”にやさしい布団が再び注目を集めるような社会を実現していきます」(一部抜粋)

お問い合わせ先/ヨネバヤシリース株式会社
http://y-lease.jp/

※掲載している情報は、2023年3月1日時点のものです。

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