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11月25日は国連が定める「女性に対する暴力撤廃の国際デー」。女性や女児に対するあらゆる暴力の撤廃を啓発する日だ。卑劣な暴力は人権を侵害する。昨今、国際社会では女性・女児への暴力撤廃への機運が高まっている。過去から取り組まれている事例や世界の現状を見てみよう。
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「女性に対する暴力撤廃の国際デー」(International Day for the Elimination of Violence against Women)は、毎年11月25日に定められた国際デーである。
1960年11月25日、ドミニカ共和国で独裁政治への反対運動をおこなっていたミラバル姉妹が政府によって暗殺された。
この事件をきっかけに女性に対する暴力が強く意識され、1997年12月17日、国連総会において毎年11月25日を「女性に対する暴力撤廃の国際デー」とする採択がなされた。
この国際デーの目的は、女性・女児へ対するあらゆる暴力の撤廃である。制定に先んじた1993年12月20日、国連は女性が人権を完全かつ対等に享受できる行動を優先するよう強調している。(※1)
暴力は人権を侵害する行為であり、すなわち女性への暴力はジェンダーを勝手な言い訳にした人権侵害行為と言えるだろう。「女性に対する暴力撤廃の国際デー」の制定により、世界は積極的な啓発に取り組みはじめた。
また、11月25日から12月10日の「世界人権デー」までの期間を「性差別による暴力廃絶活動の16日間」とし、諸問題の啓発をおこなっている。
「女性に対する暴力撤廃の国際デー」が制定されてから、各国では数々の取り組みがおこなわれている。ここではその一部を紹介する。
女性に対する暴力への早急な対応が必須であると認識し、その認識をもとに地方公共団体や女性団体などとの連携・協力体制を構築。各自治体の警察機構も参加している。
「女性に対する暴力根絶のためのシンボルマーク」や「パープルリボンバッジ」を活用し、社会の意識啓発に取り組む。その活動は2022年現在も続けられている。(※2)
UN Womenは毎月25日をOrange Day(オレンジ・デー)とし、啓発に努めている。オレンジ色は女性・女児への暴力を撤廃する希望のカラーとのことだ。
毎年11月25日はその規模を拡大して、12月10日の人権デーまで各地でオレンジ色をテーマにしたアイテムの配布やアカデミア講座を開くなど、さらなる啓発拡大をおこなっている。
国際デーにあわせたでき事ではないが、女性に対する暴力撤廃運動として大きな注目を集めた活動が「#Me Too運動」である。活動自体は2006年にタラナ・バーク氏が提唱し、以降、継続しておこなわれていた。
これが爆発的に拡大したのは2017年だ。性暴力やハラスメント被害に遭った人々が「#Me Too」のハッシュタグとともに経験談をSNSへ投稿し、被害者同士の連帯を深めた。また、問題の深刻さを社会的に認知させる結果にもつながった。
チリでは2020年に首都サンティアゴで性暴力と闘う行動を強く求めるデモがおこなわれた。大勢の参加者が女性への暴力反対を訴える歌を合唱。この歌は複数の言語に翻訳され、世界の多くの女性たちを勇気づけている。
チリをはじめとしたラテンアメリカは女性が暴力にさらされやすい社会的背景があり、アルゼンチン・ウルグアイ・ホンジュラスなどでも強い抗議行動がおこなわれた。
先進国、開発途上国を問わず、女性・女児への暴力は世界中でいまだ続いている。2021年、世界保健機関(WHO)は世界の女性の3分の1以上が生涯のなかで身体的・精神的な暴力を経験しているというショッキングな推計を発表した。
その数は約7億3,600万人にものぼると推測される。そのうちの多くが親密な関係のパートナーから暴力を受けたとのことだ。
また、この数値は約10年にもわたって変動が見られない。2013年に発表された「女性に対する暴力の世界的および地域的推定」においても、やはり世界の女性の30%が暴力を受けた経験があると報告されていた。
女性・女児への暴力は経済的損失をも招きかねない。実際、年間で世界のGDPの約2%、金額にして約1.5兆米ドルもの損失が見られるという。
さらに歓迎できないデータも発表されている。WHOをはじめとした研究機関によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大以降、女性への暴力が増加傾向にあるというのだ。UN WomenはDVが25%もの増加がある調査結果を報告している。(※3)
女性への暴力が増加しているのであれば、さらなる支援と啓発が望まれる。
多くの国際デーのように、「女性に対する暴力撤廃の国際デー」は毎年一度訪れる。だが暴力は毎年一度だけ起こるわけではない。世界のどこかで女性や女児が不当な暴力や虐待にさらされる事件がいまだに毎日あとを絶たない。
WHOをはじめ、世界の多くの人々が啓発活動を続けている。いち個人の立場でも理解を深め、女性・女児への暴力の撤廃を目指していこう。
※1 1993年国連事務総長年次報告(59ページ目)|国際連合広報センター
※2「女性に対する暴力をなくす運動」について|男女共同参画局
※3 COVID-19がもたらす 女性・女児への影響と UN Women(国連女性機関)が果たす役割(8ページ目)|UN WOMEN
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