築120年の古民家を再生した宿「楽土庵」 富山の散居村に10月オープン

改修前の古民家

Photo by 楽土庵

富山県砺波(となみ)市の美しい農村景観・散居村の地に、築120年の古民家を再生したアートホテル「楽土庵(らくどあん)」が10月5日(水)開業する。周囲の景観・空間・アート・料理・アクティビティなどを通じて「富山の土徳」を体感してもらうことがコンセプトだ。

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2022.08.26

富山の伝統的古民家「アズマダチ」を再生した1日3組の小さな宿「楽土庵」

楽土庵の室内

Photo by 楽土庵

株式会社 水と匠は、GRN株式会社と連携し、富山県砺波(となみ)市の美しい農村景観・散居村の地で、築120年の古民家を再生したアートホテル「楽土庵(らくどあん)」を10月5日(水)に開業する。

「楽土庵」は三方を水田に囲まれた「アズマダチ」と呼ばれる富山の伝統的な民家を活かした1日3組限定のスモール・ラグジュアリーな宿。

土・木・和紙・絹など古来からの自然素材を用いた、周囲の自然環境や歴史と切れ目なくつながる空間には、ピエール・ジャンヌレやハンスJ.ウェグナーらの家具、李朝のバンダチや飛騨の調箪笥、ポール・ヘニングセンやジャスパー・モリソンの照明、西アジアのバルーチ族のラグなどのインテリアが飾られる。

楽土庵に置かれているアート

Photo by 楽土庵

また、芹沢(金圭)介・濱田庄司・河井寛次郎・棟方志功といった民藝作家から富山の工芸作家、内藤礼など現代美術家まで、上質な工芸やアートが設えられ、調和している。(「せりざわけいすけ」の「けい」は特殊文字のため代用文字「(金圭)」を使用)

富山の食材

Photo by 楽土庵

敷地内には、富山の海・山・里の豊富な食材を使った富山ならではのイタリア料理を提供するレストラン「イルクリマ」と、民藝・工芸品・富山の食などを扱うブティックを併設。

「イルクリマ」では、辻調理師学校のフランス校で講師を務めながら、フランスやイタリアのレストランで修行した、伊藤雄大シェフを迎え、地元の豊かな食材を使い、イタリア料理のスタイルで料理を振る舞う。

富山の土徳を体感し「人」と「自然」の共生を感じる旅

改修前の「アズマダチ」古民家

Photo by 楽土庵

改修前の「アズマダチ」古民家

この地域には、民藝運動の創始者・柳宗悦が名付けたとされる「土徳(どとく)」という言葉がある。厳しくも豊かな環境のなかで、恵みに感謝しながら、土地の人が自然と一緒につくりあげてきた品格を言い表している。

「楽土庵」のコンセプトは周囲の景観・空間・アート・料理・アクティビティなどを通じて「富山の土徳」を体感してもらうこと。

夕景

Photo by 楽土庵

富山の散居村は、人と自然の共生から生まれる「土徳」の象徴とも言える場所だ。土地の水脈に沿って水路や田畑をつくり、家を建て、自然のグランドルールに則ってつくられた景観がある。

500年の年月をかけてつくられてきた景観は、自然と人との共生の賜物であり、そこでは日本的なサステナブルな暮らしが営まれてきた。

田園のなかに家屋が分散し、その周りを囲む「カイニョ」と呼ばれる屋敷林の樹木は家の木材や燃料となって循環し、多様な生き物を育む場所でもある。張り巡らされた用水路、水をたたえた水田、屋敷林があることで、市街地に比べ地表面の温度を13度も下げるなど環境面でも意義があることがわかっている。

SDGsやサステナブルという言葉が生まれるずっと前から営まれてきた自然と人の共生の智慧を発信し、富山の土徳に触れることで、訪れる人が癒される宿を目指すとしている。

宿泊費の一部を散居村や地域の伝統文化保全活動の基金に

楽土庵の外観

Photo by 楽土庵

コロナ禍を経て、いま世界で注目を集めている新しい旅のスタイル「リジェネラティブ(再生)・トラベル」はまさに「楽土庵」が提案しようとする旅のカタチだ。旅によって自己を癒すだけでなく、その旅が地域も癒し、再生へと向かうことに寄与することを目指す。

かつて、この地を訪れた英国の陶芸家バーナード・リーチは「世界にも類を見ないこの土地の美しさは、百姓によって生み出されている」と絶賛した。しかし、その景観の維持は年々困難になっている。

米の需要の減少や、農家の担い手不足で増える耕作放棄地、ライフスタイルの変化のなかで屋敷林やアズマダチ古民家の減少など、美しい景観だけでなく、文化や信仰、コミュニティが失われようとしている。

そこで、楽土庵は、滞在の収益の一部を、散居村や地域の伝統文化保全にも寄与する「リジェネラティブ(再生)・トラベル」を提唱している。

宿泊料金の2%を散居村保全活動の基金にし、カイニョの整備を行い、その剪定枝を木質バイオマス発電に利用する活動や、カイニョの落ち葉から腐葉土をつくる活動の支援に充てることで、カーボンニュートラルにも貢献する。

今後は、新たな「ナショナル・トラスト運動」となることを目指し、地域と外部をつなぐ、新たな散居村コミュニティを2022年度内に発足したいとしている。また「令和4年度 サステナブルな観光コンテンツ強化事業」のモデル事業としても採択され、観光庁の支援を受けながら活動に取り組んでいくとしている。

お問い合わせ先/株式会社 水と匠
https://mizutotakumi.jp/

※掲載している情報は、2022年8月26日時点のものです。

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