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毎年10月2日は国際非暴力デー。非暴力の重要性を説く国際デーがなぜ生まれたのか、理由や由来、目的に注目しよう。国際非暴力デーの取り組みとともに、暴力がもたらすさまざまな問題点についても解説する。非暴力の重要性を学ぼう。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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国際非暴力デーとは、非暴力の教えで知られるマハトマ・ガンジーの誕生日を記念し、制定された国際デーである。英語表記は「International Day of Non-Violence」だ。2007年6月15日に行われた国連の総会において決議され、同年10月2日に第1回の国際非暴力デーを迎えた。
国際非暴力デーの目的は、「教育や国民意識を高める運動を通して非暴力のメッセージを広める」ことにある。総会では「非暴力の原則の普遍的意義」と「平和、寛容、理解および非暴力の文化を実現する」意思が再確認された。140か国が共同で提案し、制定された記念日である。
マハトマ・ガンジーの出身国であるインドでは、10月2日は「ガンジー記念日」とされている。ガンジーは、インドを独立へと導いた運動の指導者として知られている。インド国民にとっては欠かせない、偉人をたたえるための祝日なのだ。
国際非暴力デーには、非公式な総会本会議にて、事務総長が声明を発表する。2007年の第1回国際非暴力デーには、当時の潘基文(パン・ギムン)国連事務総長よりメッセージが発信された。マハトマ・ガンジーの偉業をたたえるとともに、非暴力の必要性を訴えた。個人から国家まで、真の寛容と非暴力を推進することの意味を発信したのだ。
国際非暴力デーに関連する大規模イベントは、ほとんど見られない。一方で、世界中の子どもたちの命と健康を守るために活動する国連機関・ユニセフは、2013年に子どもに対する暴力の根絶を強く訴えた。日常的な暴力に苦しむ子どもたちがいなくなるよう、より積極的な取り組みを国際社会に求めたのだ。
このメッセージは日本ユニセフ協会からも発信され、「子どもに対する暴力」について学び、関心を持つことの重要性を訴えた。日本においても身近な大人からの暴力に悩む子どもの数は少なくない。厚生労働省が発表しているデータによると、2013年の児童相談所での児童虐待相談対応件数は73,802件。国際非暴力デーの訴えは、非常に大きな意味を持っていると言えるだろう。
しかしその一方で、子どもに対する暴力はいまなお続いている。2020年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数は、20万5,000件を突破。わずか9年で2.7倍以上までに急増している。国際非暴力デーを知り、具体的な行動を起こすことの重要性はますます高まっている。(※1)
暴力は私たちの身近に潜み、さまざまな問題をもたらす。具体的な暴力の例と、それが引き起こす問題点についてチェックしていこう。
テロ攻撃とは、「自身の主義主張を広く知らしめ、他者にもそれを強要することを目的に行う攻撃活動」を指す。ターゲットとなるのは、無実もしくは無関係の人々だ。多数を殺傷することで、その周囲に恐怖心を抱かせ、自分たちの思いどおりにしようという狙いがある。
テロ攻撃と言えば、2001年に発生した9.11同時多発テロを思い浮かべる人も多いだろう。しかし残念ながら、テロ攻撃はこれひとつのみではない。2022年を迎えたいまも、テロ攻撃は世界各地で頻発している。公安調査庁が発表しているデータによると、2021年に発生したテロの数は、全世界で28件。大規模テロが発生すれば何十人、何百人という方が一度に亡くなるケースも多い。(※2)
テロ攻撃の裏には、宗教や民族、政治的対立による紛争や克服不可能な貧困など、さまざまな要素が複雑に絡み合っている。非暴力を実現するためには、国際社会の協力体制のなかで、さまざまな歩み寄りが不可欠と言えるだろう。
戦争や紛争、内戦も暴力行為のひとつである。主に国家間において、自分たちの意志に相手側を従わせるため、武力を用いて争うことを指す。2022年に発生したロシアによるウクライナ侵攻のように、国と国とが武器を持って戦うため、甚大な被害につながりやすい。
国際人道法では、戦争中の武力行為から民間人を守るためのルールを定めている。しかし現実には、戦争中の暴力行為に一般市民が巻き込まれ犠牲になるケースは多い。ロシア軍によるウクライナ侵攻においては、2022年2月から7月までのわずかな期間に、5,000人以上の民間人が死亡したと伝えられる。
内戦は戦争とは異なり、国の内部で発生する紛争を指す。民族や宗教、政治的立場などによる対立によって、武力抗争が発生。戦争ほど大規模にはなりにくいが、国際法が遵守されず、一般市民への被害が広がるケースも多い。
また戦争や内戦が発生すれば、自身や家族の命を守るため難民となる人も現れる。命を守るために必要な選択とはいえ、難民になれば住む場所を追われ、不安定な生活を強いられるだろう。これも暴力が引き起こす問題と言える。
子どもに対する暴力も、我々の身近に潜む問題である。家庭や学校、児童養護施設に労働現場など…ありとあらゆる場所で発生しうる。
子どもに対する暴力は「表面化しづらい」という特徴がある。死に至るような暴力はごく一部であり、そのほとんどは傷痕を残さない。また、暴力をふるう大人側に、「暴力をふるっている」という自覚がないケースも多い。「しつけのため」という大義名分のもと、狭い世界のなかで暴力が日常化してしまいがちだ。
幼少期に受けた暴力は、その後の子どもの生育に悪影響を与える。さらに子どもが自分でSOSを出すことは極めて難しく、周囲の大人の介入によって適切にサポートする必要があるだろう。
家庭内暴力とは、家庭内で発生する暴力を指す。親が子どもに暴力をふるう児童虐待や、配偶者間のドメスティックバイオレンス、さらには子どもが親に対して暴力をふるうケースもある。
家庭内暴力の問題点は、当人たちが「家庭内の問題」として捉えてしまうことで外部機関の介入が遅れがちな点である。各種相談窓口のほか、一時保護システムや専門家による各種支援を活用する必要があるだろう。
国際非暴力デーを前に、いま私たちに何ができるのか、あらためて考えてみよう。暴力とは、誰の身近にも存在し得るもの。しかし自身が直接の被害者にならない限り、見ようとしないまま通り過ぎてしまいがちだ。まずは暴力の存在を認め、その上で非暴力の大切さを学ぶことが大切だろう。
2007年、「10月2日を国際非暴力デーに」と提案したインドのアナンド・シャルマ外務大臣は、ガンジーの言葉を借りて「非暴力は人類に残された最大の力である。それは、人類が発明した最大の破壊兵器よりもさらに強力である」と演説した。さまざまな暴力行為が身近に起こっているいまだからこそ、この言葉の意味を理解するべきだろう。(※3)
非暴力の重要性をメッセージとして届けることは、私たち個人にも可能である。10月2日の国際非暴力デーには、ぜひ身近な人と語り合ったり、SNS上で発信したりしてほしい。それも非暴力社会の実現に向けた、大切な一歩になるはずだ。
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