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国内市場を混乱に陥れるウッドショックとはどのような事態なのか、具体的に解説する。ウッドショックをもたらした原因や、発生している問題点を説明。先行きが不透明な状況だからこそ、対策方法にも目を向けてみよう。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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ウッドショックとは、2021年に発生した木材価格の高騰を指す。木材価格の上昇は当然、住宅価格にも影響を及ぼす。新規で住宅を購入したい顧客だけではなく、住宅を提供するメーカーや流通業者などへの影響も大きい。市場全体の混乱が避けられない状況なのである。
ウッドショックという言葉は、1970年代に発生したオイルショックになぞらえたものだ。当時不足したのは石油であったが、今回は木材である。建築用木材の供給が需要に追いつかないことから価格が高騰、また木材の輸入量不足も指摘されている。(※1)
ウッドショックは複数の原因が複雑に絡み合っており、いつ終わりを迎えるのかわからない状況にある。そのため常に最新情報をチェックする必要があるだろう。
そもそも、いったいなぜウッドショックと呼ばれる事象が起きたのだろうか。複雑に絡み合う原因を、3つ紹介しよう。
ウッドショックが引き起こされた直接的な原因は、世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大である。カナダやヨーロッパは木材産出国(地域)として知られている。しかし、感染拡大のあおりを受けて業務を進められない時期が続いたのだ。働き手が不足すれば、工場ラインは動かせない。そのため製材工場のストップによって供給量が減少した。
カナダやヨーロッパはここ数年、害虫による被害に悩まされていた。その影響で供給できる木材の量が減少し、廃業に追い込まれた製材所も多い。害虫と新型コロナ、2つの被害が重なり木材価格高騰の要因となった。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は我々の生活スタイルを大きく変化させた。実際に店舗へ行って買いものをするよりも、ネットショッピングを利用する人が増加。そして荷物の流通量が増えたため発生したのが、世界的なコンテナ不足である。「中身」は用意できてもそれを運ぶための「箱」を用意できない状況が、ウッドショックを加速させているのだ。
近年、アメリカではマイホーム需要が高まっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、自宅で過ごす時間が長くなっているいま、「より快適な空間を」という思いから新築戸建て住宅を購入する人が増えているのだ。また、アメリカの政策が住宅購入を後押ししたことも、需要増加の要因である。
マイホーム需要が高まれば、それに伴って木材の需要も高まっていく。もともとアメリカは、木材産出国であり、日本に木材を輸出している国の一つでもあった。国内消費が増えた結果輸出量が減少したことも、ウッドショックに影響しているである。
第二次世界大戦後、日本は国内で消費する木材の多くを輸入に頼ってきた。安価で使い勝手のいい輸入木材は、日本の住宅メーカーにとって都合がよかったためだ。このため国内の林業は徐々に衰退。これもウッドショックの原因であると考えられる。
「海外からの輸入量が減ったなら国産に切り替えればいい」と考えるのが道理である。しかし、原材料だけが豊富にあってもウッドショック解消には十分ではない。木材を加工する人材育成や、流通させるためのサプライチェーンの構築が間に合っていないのだ。こうした事情により国産材の供給が追いついていない点も、ウッドショックを慢性的な問題にする要因となっているのだ。
ウッドショックは、我々一般市民の生活にも影響を及ぼす。もっとも、影響を受けやすいのは住宅価格である。材料費が高騰すれば、住宅そのものの価格を上げざるを得ないだろう。また、影響を受けるのは住宅価格だけではない。
・木材調達の目途が立たず、工期が遅れる
・契約しても、家が建たない
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、一時期は大きく落ち込んだ新築戸建の住宅売買業。しかしその後、順調な回復の兆しを見せていた。コロナの影響により自宅で過ごす時間が増え、より快適な空間を求めたのはアメリカ人だけではない。日本でも同様の流れが生まれたというわけだ。
しかし、そのさなかで発生したのがウッドショックである。業界回復の兆しが見えたタイミングでの足踏み状態は、住宅に関わるその他の産業にも悪影響をもたらしている。
ウッドショックは、多くの企業にとっても由々しき問題である。解消のためには、以下のような対策が求められるだろう。
輸入木材の価格高騰を受け、国産木材を活用する動きが強まってきている。日本が有する森林面積は決して小さくない。さまざまな視点を持ち、資源を有効活用できる仕組みをつくり上げる必要があるだろう。
国産木材を活用する仕組みを確立するには、それなりの時間や手間がかかるはずだ。もしそれまでにウッドショックが解消されたら、再度国産木材の需要は再び低迷し、行き場がなくなるのでは……という見方もある。こうした懸念も踏まえ、より最適な道を探っていく必要があるだろう。
ウッドショックによりとくに大きなダメージを受けたのが、低価格帯の住宅メーカーである。コストカットのための輸入木材の使用が難しくなれば、住宅を値上げせざるを得ない。
価格以外に強みがなければ顧客離れが進んでしまう。ウッドショックが長期化すれば、これまでのビジネスモデルの継続は難しくなるだろう。価格以外の新たな強みを模索し、顧客にアピールしていくことが、企業生存のポイントだろう。
原材料調達にこれまで以上の費用がかかる場合、生産性向上やコストの改善により、増加分を吸収できる可能性がある。
DX化も、生産性向上やコスト改善のために検討したい方法である。デジタル技術の活用により、徹底した顧客管理や工程管理が可能になれば無駄の削減にもつながるだろう。効率的な生産体制は、ウッドショック後も役立つはずだ。
2021年に起こったウッドショック。当初は「影響は一時的なもの」と見られていた。しかし2022年を迎えたいまでも、今後の見通しは不透明だ。木造住宅製造業者にとっても、住宅購入者にとっても、頭の痛い状況は当分続くと見られる。だからこそ、長期化を見据えた対策が求められている。
原材料が高騰すれば、住宅価格そのものの値上がりは避けられない。その衝撃を少しでも和らげるためにぜひ活用したいのが、「補助金」である。たとえば「地域型住宅グリーン化事業」では、対象となる地域の工務店で省エネルギー性能や耐久性等に優れた木造住宅を建てたり、木造建築物の整備および木造住宅の省エネ改修を行った場合に、補助金の支給を受けられたりする。
今後の予測が難しい以上、メーカー側と消費者側の双方で補助金の活用を考えていく必要があるだろう。(※2)
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