リコマースとは 背景にある環境意識や企業の事例を解説

パソコンを開きながら、スマートフォンを操作する女性

Photo by Corinne Kutz on Unsplash

リコマースとは、近年注目されているビジネスモデルである。では、具体的にどういった特徴を持ち、なぜ世界で注目されているのだろうか。その背景に迫る。リコマース市場に注目する企業は、増加傾向にある。3つの具体的事例から詳しく学んでみよう。

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2022.03.31
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リコマースとは

リコマースとは、一度人の手に渡った商品、いわゆる中古品をインターネット上で取引するビジネスモデルを指す言葉だ。リコマースは「recommerce」という英語である。これは「re(再び)」と「commerce(商業・通商)」の、2つの意味を組み合わせてつくられている。

新品では手が届かない商品も、リコマース市場を狙えば驚くほど安価で手に入るケースも多い。インターネット上で中古品をやり取りする仕組みが広がるにつれて、「リコマース」という概念は広まっていった。リコマースの概念は非常に幅広く、取引相手の属性や商品の状態を限定しない。

・オンライン上で行われる個人間の商品売買
・ブランドが行う過去の製品の下取り
・製品寄付による値引きサービス

こうしたビジネスモデルも、リコマースとして定義されている。

リコマースが注目を浴びる背景

リコマースは、注目度が急上昇しているビジネスモデルである。その影響は、日本だけに留まらない。世界中の多くの人々が、当たり前に新品を購入するのではなく、リコマース市場での購入を視野に入れているのだ。これには、以下のような理由が関連している。

世界的に高まっている環境意識

長く当たり前に受け入れられてきた大量生産、大量消費社会。しかし、次から次へと大量の製品が製造・廃棄される社会構造は、多くの環境問題を引き起こしてきた。

たとえば、大量の製品を製造する過程においては、大量の原材料とエネルギーが消費される。また、社会活動に伴って発生した廃棄物の処理も、我々が直面する課題の一つだ。原料調達から製品製造、そしてごみ処理に至るまで、環境に与える負荷は極めて大きい。近年、こうした仕組みを根本から見直すべきだという意識が、世界中で高まっている。

リコマースを活用すれば、一度手にした製品が簡単にごみになることはない。環境負荷を低減させるためにも、あえてリコマースを選択する人々が増えているのだ。

移り変わりの早いトレンドサイクル

洋服や家電製品、モバイルアイテムなど……我々の身近には、非常に短いスパンでトレンドが移り変わっていく商品が少なくない。新たな機能を搭載し、積極的に宣伝される新製品は、我々消費者の心をつかむものだ。しかし、新商品が出るたびに買い替えるのは、資金面から見ても現実的ではない。

このような場合にも、リコマースは人気である。いまある商品を手放し、得たお金で新たな商品を手にできるだろう。いわゆる「乗り換え」によって、金銭的な負担は軽減できる。

また、個人間での売買だけではなく、企業やブランドが「下取り」という形で積極的にリコマースを推進するケースもある。下取りは消費者にとって非常に魅力的な仕組みであり、こちらもリコマースへの注目度を上げる要因の一つだ。

エンドユーザー同士のやり取りの仕組み化

リコマースは、個人間のやり取りにおいても成立する。フリマサイトや物々交換サイト、オークションサイトなど、インターネットを通じて個人間で中古品をやり取りできるプラットフォームはすっかり一般的になった。こうした仕組みが整ったことで、実際にリコマース市場に乗り出す個人も増えているのだ。

リコマース市場で注目の企業事例3つ

リコマースについてより深く理解するため、具体的な事例を見ていこう。リコマース市場で注目される、3つの企業を紹介する。

1.高級ブランド服の「リアルリアル」

ザ・リアルリアル株式会社が運営するネットショップ「リアルリアル」は、会員制オンラインリセールショップである。同ショップで扱うのは、高級ブランドを中心とした中古アイテムだ。委託販売によって売りたい人と購入したい人を結び付けている。

高級ブランド服は、質やデザインに優れている一方で高価格だ。しかしリコマースであれば、上質なアイテムを安価に入手できる。高級ブランド市場のメインターゲットであるミレニアル世代だけではなく、X世代にも幅広く支持され、新たなマーケットを開拓している。(※1)

2.古本売り上げの一部を還元「バリューブックス」

株式会社バリューブックスは、インターネットを中心に、古本の売買を行っている会社だ。一般的な買い取りプログラムのほか、不要になった本を引き取る寄付プログラムでも多くの本を集めている。しかし集めた本のなかには、市場価値がなく廃棄せざるを得ないものが少なくない。

少しでも廃棄する本を減らすため、「VALUE BOOKS ECOSYSTEM(バリューブックス・エコシステム)」という新事業を運用している。リユース率の高い出版社をパートナー出版社として認定。パートナー出版社の本がバリューブックスで売れた場合、売り上げの33%が出版社に還元される仕組みだ。(※2)

3.新モデルを手ごろな価格で購入できる「Apple」

iPhoneやiPadで有名なアップル(Apple)社では、「Apple Trade In」という下取りプログラムを実施中だ。新しい端末を購入する際に古い端末を下取りに出すと、新しい商品の購入価格が割引される仕組みである。

新しい端末をすぐに必要としない場合でも、下取り分の金額をギフトカードで受け取ることが可能。アップル製品以外にも、他社のスマートフォンやコンピュータも下取りの対象となる。また、古い端末が下取りプログラムの対象にならない場合でも、無料でリサイクルが可能だ。(※3)

今後も拡大が予想されるリコマース市場

環境意識の高まりや中古品への抵抗感の薄れなど、リコマース市場は今後も拡大していくと予想される。「よりお得によい品物を手に入れたい」「環境負荷の少ない行動を心がけたい」といった消費者意識から、より一層広がっていくだろう。

リコマース市場は、まだまだ多くの可能性を秘めている。リコマース市場ならではの新たなスタイルは、今後も増えていくはずだ。リコマースの定義を知ったうえで、市場の今後にぜひ注目してみてはどうだろうか。

※掲載している情報は、2022年3月31日時点のものです。

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