木の炭素固定に着目 住友林業の脱炭素化に向けた取り組み

森林の様子

Photo by unsplash

住友林業株式会社は、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、木材の炭素固定への期待とそれに伴う新プロジェクトを発表。日本国内の森林の活用と再生、国産木材の競争力の強化などを狙う。

ELEMINIST Press

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2022.02.25

日本の森林の高齢化が課題 伐採・再植林のサイクル確立を目指す

森林

Photo by Leo Okuyama on Unsplash

住友林業株式会社は、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、木の炭素固定への期待とそれに伴う長期ビジョンを発表した。2030年までに保有する森林の拡大と木材の有効活用、木材コンビナート設立や住宅および非住宅木造建築物のシェア拡大などを目指す。

CO2排出量の削減と同時に、CO2の吸収量の増加が2050年のカーボンニュートラル達成には不可欠だとする住友林業。そこで期待を寄せるのが、木の炭素固定だ。木は成長する過程でCO2を吸収し、炭素として内部に貯留する機能がある。伐採した後も木造建築や家具などの木材製品に活用することで、CO2を長期間、大気に排出せずにすむ。

森林を増やすことがCO2吸収量の増加につながるが、世界と日本では少し課題が異なる。世界では森林減少が課題だが、日本においては森林の放置と樹木の高齢化が課題だ。日本は国土の約7割が森林。森林率はOECD(経済協力開発機構)の中で第3位を誇る。が、その実態は、4割におよぶ経済林(人工林)が十分な手入れがなされていなく、その半分は林齢50年を超えている。

木の多くは若いとき、成長過程でCO2を多く吸収すると言われている。つまり、日本においては今後、高齢化してCO2を吸収しにくくなった木を伐採し、有効活用したうえで、新しい木を再植林して森林を若返らせることが求められる、と住友林業は強調する。

同社は、2030年までに森林保有面積を拡大するとともに、生態系を守っていくうえで必要な保護林と経済林のゾーニングをしっかりと行い、50年を目安に森林が若返るよう、年間で経済林全体の2%のみを伐採・再植林していくと発表した。

国産木材の競争力強化に向けて コンビナート設立

住友林業株式会社 代表取締役社長 光吉敏郎

Photo by 住友林業

住友林業は、先に述べた高齢樹木の伐採および有効活用化に向けて、国産木材の競争力の強化を目的とした「木材コンビナート」を設立する。さらに、木材需要の拡大を狙うために木造建築物のシェア拡大に働きかける。

日本は国内の木材自給率が約41.8%と、アメリカやオーストラリアの自給率約90%に比べ低い。過半数を輸入に頼っているため、2021年に起きた木材不足による木材価格の高騰(ウッドショック)の影響を受けた。

自給率の低さは、供給の不安定さがその要因に挙げられる。林業従事者不足や小規模な製材工場、インフラの未整備に起因するもので、「木材コンビナート」を設立することでそれらの解消を図る。木材製造の生産性向上と安定的な供給を図り、価格競争力の強化を目指す。

そのほか、木材建材商社および住宅メーカーとしての立場から、住友林業は木材を多く利用する木造建築の普及にも注力する。国内の住宅市場のみならず、主にアメリカ、オーストラリアの木造住宅市場でのシェア拡大、さらには商業施設やオフィスビルの木造化も狙う。現に、メルボルンでは15階建て、ロンドンでは6階建ての木造オフィスを計画中だ。

技術の進歩により、CO2排出量削減は進みつつある。しかしながら、私たち個人の生活や生産業、運輸、建設などあらゆる分野での完全な削減は不可能だろう。どうしてもゼロにはできないC02排出量を、森林によるCO2吸収量でオフセットさせることを目指す住友林業の取り組み。森林を多く有する日本ならではの資源の有効活用が期待される。

※掲載している情報は、2022年2月25日時点のものです。

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