Photo by AVENIR
サステナビリティ先進国として知られるドイツで、「サステナブルファッション」はどのような動きを見せているのか。ベルリンのPRエージェンシー代表に、最新の動向について話を聞いた。
宮沢香奈(Kana Miyazawa)
フリーランスライター/コラムニスト/PR
長野県生まれ。文化服装学院卒業。 セレクトショップのプレス、ブランドディレクターを経たのち、フリーランスでPR事業をスタートし、ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積…
ベルリン拠点のPRエージェンシー『compose(コンポーズ)』は、ジェンダーレスでユニセックスなデザインの『リヒャルト・バイル(Richert Beil)』をはじめ、サステナブルとクリエイティブなビジョンを持つローカルブランドに焦点を当て、各ブランドの展示会やショーを手がけている。
代表のクリスティーナさんは、「マインドフルネス、包括的、クリエイティブなビジョン、持続可能なものづくり」といった基準でブランドを選んでいる。SDGsへの取り組みが世界規模で活発化しているいま、サステナビリティ先進国ドイツにおけるファッションはどんな傾向を辿っているのだろうか。
Photo by Richert Beil
毎シーズン独創的なスタイルとコンセプトでコレクションを発表している『リヒャルト・バイル(Richert Beil)』。
Q. ドイツにおける現在のファッションのトレンドは?
「今年の冬のトレンドは、レイヤード、チャンキーニット、ブーツなど。遊び心よりも実用性を重視した傾向にあると思います。
ディテールやカラーも変化し、ピンクやローズ系がトレンドであっても、保温性の高いアイテムを選ぶ際には妥協できません。ドイツでは、冬の寒さに耐えられる最適な防寒アイテムを見つけることはとても重要です。パファージャケットやダウンジャケットなしで冬を乗り切るのは難しいのです」
Photo by People
薬物依存や精神疾患、ホームレスの子どもを助け、教育の場を与えるNPO団体『KARUNA - Zukunft für Kinder und Jugendliche in Not Int. e.V.』がプロデュースするファッションプロジェクト『ピープル(People)』。
Q. メゾンブランドからファストブランドまで、引き続きサステナブルな話題が尽きない。実際の市場や消費者目線はどう感じる?
「消費者はサステナブルを知り自分自身を教育し、長持ちする品質やスタイルを求めるようになっていると感じます。例えば、冬には多くのブランドからパファージャケットが登場しますが、羽毛を使用しないリサイクルダウンを提供するブランドも増えてきています。
また、アップサイクルも大きなトレンド。古着や売れ残りの生地を使ったパッチワークアイテムを発表するブランドも多く見られ、ノスタルジーやドリーミーなデザインがトレンドとなっています。
アップサイクルに関しては、衣服だけに限らず、ジュエリーに対しても認識が変わってきています。例えば『ヨハンナ・ガウダー(JOHANNA GAUDER)』ではリサイクル金属を使用していますが、持続可能な素材として注目されています」
Photo by JOHANNA GAUDER
金細工師であるヨハンナ・ガウダーによって2015年にスタートしたジュエリーレーベル『ヨハンナ・ガウダー(JOHANNA GAUDER)』。
Q. 多くのサステナブルブランドに共通していることは?
「コンポーズで取り扱っているブランドはすべて、サステナブルを提唱するいまの時代にただ乗っているのではなく、その変化を推進しています。彼らは目標に向かって非常に熱心に取り組み、新商品の背景にある物事に関わり、声を上げるコミュニティを構築しているのです。
同時に、美意識が高く、最先端のデザインを提供しているブランドは、サステナブルファッションがこれまで以上に多様で美しいことを証明していると思います」
Photo by Jordann Wood
ベルリン拠点のPRエージェンシー『compose(コンポーズ)』は、ショールームを構えず、イベントごとにコンセプトと合うスペースを借りて展示会を開催している。
Q. サステナブルファッションでもっとも重要なことは?
「もっとファッション業界の全体像を考えて実施されなければならないこと。テキスタイルをどこで、どのように生産するかだけでなく、消費者が望んでいる真のニーズとライフスタイルに応えるものを創造し、提供することが大切だと思います。
ブランドにとってサステナビリティは、伝統や文化、スタッフの環境、顧客とのコミュニケーションに至るまで、すべての核となるものでなければなならない。サステナブルブランドが成功するということは、ファッションを単なる消費という観点でとらえるのではなく、ブランドをきっかけに顧客となった何千人もの人の意識を環境問題へ向けることができると思います」
Photo by Jordann Wood
『コンポーズ』の代表、クリスティーナ・ヘルハケさん。
「ファストファッションは、破壊、汚染、環境・自然・人間への無知を象徴していると思う」語ったクリスティーナさん。その一方で、優れたサステナブルブランドは、ブランド発足の背景だけでなく、生地の手触りや肌触りの良さ、優れた仕立て、包括的なアプローチが可能だという。
フランスでは売れ残った衣料品の寄付またはリサイクルが義務化され、ヨーロッパでは毛皮生産を禁止する国が増加。ファッション業界でも、ますますサステナブルへのシフトが進んでいる。そのようななか、ファッションブランドがどのような動きを見せていくか、ぜひ注目していきたい。
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