太陽光を活用した調理法「ソーラークッキング」 災害時のメリットとは

草地に並べられたソーラーパネル

Photo by Michael Förtsch

エコでサステナブルな調理法として注目されているソーラークッキング。どのような特徴を持つ調理法なのかを、具体的に見ていこう。日本においては、災害対策としても注目されている。注目される理由や、具体的な活用方法などを詳しく解説しよう。

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2021.12.31

ソーラークッキングとは

ソーラークッキングとは、その名前のとおり、太陽光を活用した調理方法のことである。太陽の光や熱は、我々にとって非常に身近なエネルギー源だ。これらを上手に活用できれば、調理に電気やガスを消費しなくて済むため、エコでサステナブルな調理法として注目を集めているのだ。

ソーラークッキングはもともと、チリのアタカマ砂漠などの日射量が豊富な地域で行われていた。太陽光という豊富なエネルギーの有効活用のほか、薪などの資源の保護、人々の健康維持などが主な目的であった。

活用のメリット

砂漠地方において、薪の確保は非常に大きな課題である。薪が不足する時期やタイミングがもちろんあるだろうが、人々が薪を求めて木々を倒せば、森林破壊につながっていく。また、室内で薪を燃やすことによる健康被害も、由々しき問題の一つなのだ。ソーラークッキングなら、これらの課題の解決につながるというメリットがある。

日本においては、薪不足や薪による健康被害といった問題は、決して身近なものではない。とはいえ、いざ災害が発生すれば、ガスや電気といったライフラインが遮断されてしまう可能性が高いだろう。

そのときに太陽光だけで調理できるソーラークッキングをできれば、災害後の食糧調達に役立つはずだ。そのため、日本においてはとくに災害/防災対策としてソーラークッキングが導入されている。

ソーラークッキングによる調理方法

いざという場面でソーラークッキングを実践するためには、事前にその方法について、学んでおくのがお勧めだ。ソーラークッキングの調理法は、電気やガスを使った調理法とは大きく異なる。

まず、ソーラークッキングに必要なのが、ソーラークッカーという調理道具である。ソーラークッカーには、以下のような種類がある。

・箱形ソーラーオーブン
・パラボラアンテナ形ソーラーオーブン
・真空管を使った筒形ソーラーオーブン

これらのクッカーは、熱伝導や放射(ふく射)、対流といった仕組みを上手に活用することで、内部の食材に火を通していく。ソーラーパネルのように太陽光をいったん電気に変換するのではなく、太陽光の熱をそのまま食材に伝えていく点が最大の特徴となる。

ソーラークッカーを使えば、チャーハンや焼きそばといった焼きものメニューのほか、お菓子やケーキなどをつくることも可能。ガスや電気と比較すると調理に時間はかかるものの、料理の味にそれほど大きな差はないだろう。

ソーラークッキングを実践する際には、つくりたい料理に合わせて適切なクッカーを用意する必要がある。蓄熱ボックス形のソーラーオーブンは、調理器具を覆ってつくるソーラークッカーで、時間をかけてつくる料理に向いている。ケーキや煮込み料理をつくりたいなら、こちらのタイプがお勧めだ。

一方で、パラボラアンテナ型の特徴は、火力の強さである。ガス火の弱火程度の火力で食材に熱を加えられるため、傷みやすい食材をも扱いやすいだろう。筒形も、食材に効率良く熱を通せるタイプである。

ソーラークッキングの注意点は、やはり「太陽」だろう。ソーラークッキングを成功させるためには、できるだけいい天気の日を狙うのがお勧めだ。また、太陽の位置は時間とともに変化していくものなので、太陽の位置に合わせてソーラークッカーの位置を調整していく必要もあるだろう。

世界と日本での広まり

ソーラークッキングがスタートしたきっかけは、貧困から抜け出すための工夫だったと言われている。孤立した地域で暮らす人々にとって、生活に必要なエネルギーをどう確保するかは、非常に大きな課題の一つ。太陽光という無料で、ばく大なエネルギー源を活用できれば、生活の質の向上につなげていけるだろうと考えた。こうしてソーラークッキングの実験がスタートした。

その後、年月の経過とともに、ソーラークッキングへの注目度はさらに増していく。その大きなきっかけになったのは、環境意識の高まりだろう。薪を燃やして調理すれば、二酸化炭素が排出される。ソーラークッキングの活用の場が広がれば、その分だけ環境への負荷を低減できるだろう。SDGsの認知度アップも、ソーラークッキング普及の要因となった。

日本におけるソーラークッキングの普及は、2005年に設立された日本ソーラークッキング協会が中心となって進められてきた。各種ソーラークッカーを普及させるだけではなく、自分でソーラークッカーをつくり、それを実際に使って調理する体験会を多数実施。子どもたちのキャンプ活動や、災害/防災対策講座の一環としても、ソーラークッキングが行われている(※1)。

調理をするために調理器具から自分でつくるという取り組みは、子どもたちにとっても大人にとっても魅力的なものだ。それはさらにSDGsや災害対策への関心を高めるきっかけともなり、ソーラークッキングは非常に大きな役割を果たしている。

ソーラークッキングに興味を持ったら一度体験を

太陽の熱を活用して調理をする、エコでサステナブルなソーラークッキング。専用のソーラークッカーを用意する必要があるものの、新たな形の調理を通じて、これまでにない経験ができるはずだ。

日本においては、環境対策だけではなく災害対策としても注目されている。とはいえ、いざ災害が発生した際に、初めて一からソーラークッカーをつくるのは簡単ではない。興味を持ったタイミングで、一度実践してみておくといいだろう。キャンプ活動の一つに取り入れてみるのもお勧めだ。

ソーラークッカーを使えば、ありとあらゆる食材の調理が可能である。時間がないときには「下ごしらえだけ」「仕上げだけ」など、部分的に取り入れるのもお勧めだ。ふだんより手間のかかる調理方法をあえて選んでみて、その体験を楽しんではどうだろうか。

※掲載している情報は、2021年12月31日時点のものです。

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