ウェルネスの意味とは ヘルスとの違いや具体的な取り組み

森の遊歩道を歩く女性

Photo by Emma Simpson on Unsplash

ライフスタイルデザインや自己実現という意味を含んだ「ウェルネス」という語には、時代や価値観の変化に応じて再解釈が行われている。しかし、この語の根源が「輝くように生き生きしている状態」であることは変わらない。言葉の意味や注目される背景、具体的な取り組みの事例を紹介する。

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2022.01.31

ウェルネスの意味とは

ウェルネス(wellness)とは「よりよく生きようとする生活態度」である。良好な状態である心身の健康や、生活環境、社会的環境を基盤とし、自分が望む生き方やライフスタイルデザインを確立させ、自己実現に至ることに重きを置く。

ウェルネスは1961年に米国のハルバート・ダン医師が提唱した。1977年には全米ウェルネス協会が発足し、ウェルネスが広く普及するきっかけとなった。

ダン医師は「輝くように生き生きとしている状態」がウェルネスの根源であると定義した。「本人が病気であるか否かだけに注目せず、健康を手段とし、生き生きと輝く人生を目指す姿勢や志向」。これがダン医師の提唱したウェルネスの意味である。(※1)

その後、時代の流れや人々のライフスタイルの変容によって度重なる再解釈が行われ、少しずつ変化が生まれてきている。しかし、根源が「健康を手段として輝く人生を目指す」であることはいまだに変わっていない。

ヘルスとの違い

「健康」を意味する単語に「ヘルス」がある。ウェルネスもヘルスも、日本語に直訳すれば「健康」だ。だがウェルネスと異なり、ヘルスは「病気ではない状態(肉体的な健康)」を指す。

それに対し、ウェルネスはさらに広範囲の意味を包括する。身体的に病気がではない意味での健康に加え、精神面でも前向きで健康的な状態であることを指している。

ウェルネスは心身ともに健康である状態が重要であるとし、その結果として生活の質を高めることに結び付く手段となる。

なぜウェルネスという考え方が必要なのか

ウェルネスという考え方の柱である心身の健康は、生活の質に直結する。心身のどちらか、あるいは両方に不調があれば、満足できる活動は難しくなるだろう。仕事面への影響を懸念する人もいるかもしれない。

また、心身が病を得てから健康を意識しても遅きに失する。回復し、輝くようなライフスタイルを取り戻すまでには金銭も時間も必要となる。

ことに昨いまは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に蔓延する中、心身の健康に不安を覚える人が増加傾向にある。そのような人は生活の質も、人生の質も低下しかねない。

心身の健康を意識するウェルネスにより、病気や不調を未然に防げる可能性が高くなる。よりよく生きるため、生活の質を高めるために、ウェルネスの概念を取り入れて総合的な健康を意識することは、現代を生きる人々にとって有効な手段の一つになりうるのではないだろうか。

ウェルネスに関する具体的な取り組み

1961年のダン医師の提唱から始まり、その後ウェルネスが広く知られるようになったのは、1977年の全米ウェルネス協会発足がきっかけだ。当時のムーブメントにもなったウェルネスは、やがて海外に広がり、日本にもつたわった。

以来、ウェルネスの実践は広く行われるようになっている。広がった当初は医療分野で注目を浴びていた。しかし、やがて産業や経済においても多くの視線を集めるようになったのである。

とくに飲食品や健康商品を扱う業界ではウェルネスの概念に大きな価値を見いだす人が多かった。「製品を通して心身の健康に役立つ価値を提供する」とし、「ウェルネス」という言葉を使用するようになったのである。

ほかにもツーリズム業界や、美容業界など、驚くほど多数の業種がウェルネスの概念を取り入れている。ウェルネスの概念は広い分野で取り入れやすい特徴を持つため、参入業者が多数にのぼるのは必然とも言える。

いまやウェルネス産業は一大市場として形成され、成長し続けている。ビジネスとしてのファクターはもちろんだが、医療や看護における概念としても重要視されるようになった。

ウェルネスの概念を取り入れている業界や業種の一部を紹介する。

医療・看護

医療・看護業界では、看護学の一環としてウェルネスの概念を取り入れている。2018年には国家試験の項目として新たに追加された。

看護の現場ではとくに母性看護や老年看護で、重要なファクターとして取り扱われる傾向だ。総合的な健康を広く維持するという点において、ウェルネスの概念は医療・看護の分野と相性がいいと言える。

ツーリズム業界

ツーリズム業界では「ウェルネスツーリズム」を提供している。旅先でのフィットネスやレクリエーション、健康に配慮した食事、ヨガや瞑想などを通じてウェルネスの概念を体験するものだ。

もともと人間は癒しを求める旅を好む。歴史上に多く記録されている聖地巡礼や湯治もメンタル面の健康を意識したものだと言われている。

2015年にはウェルネスツーリズムが世界のツーリズム業界全体利益の15.6%を占め、人々がウェルネスに向ける意識の高さを示す結果となった。(※2)

企業におけるウェルネス経営

ウェルネス経営への注目が高まっている。会社が従業員の精神面・身体面の健康を守ろうという意識だ。病気やけがの未然防止や早期発見・対応、再発予防に力を入れる企業が増加している。

心身の健康面に不安を抱える従業員は、生産効率が落ちる傾向がある。雇用側としてもそれは歓迎できない状況だ。会社は従業員が健康的に労働できる環境を整え、それを維持する必要がある。

日本でも大企業がウェルネスを重要なファクターとして取り扱っており、今後もそれを継続していくことが考えられる。

ウェルネスとはライフスタイルデザインの鍵

質の高い生活は広義での健康がキーポイントになる。身体、精神、そして環境の、いずれも「健康」と言える状態であることが、ライフスタイルデザインの成功につながるだろう。

ウェルネスの概念は個人の生活だけではなく、産業や経済にも驚くほど大きな影響を与えている。ウェルネスの概念を取り入れた産業や企業などの今後の成長が、人々の生き生きとした生活の手助けになるだろう。

※1 ウェルネスとはなにか|国立大学法人琉球大学
https://health-tourism.skr.u-ryukyu.ac.jp/wellness
※2 ウェルネスツーリズムとは|国立大学法人琉球大学
https://health-tourism.skr.u-ryukyu.ac.jp/wellness-spatourism

※掲載している情報は、2022年1月31日時点のものです。

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