「2021年現在、世界の国の数はいくつなのか?」と疑問を抱く方に向けて、具体的な数や近年の増減について解説する。また、「そもそも国とは何なのか」という点についても、確認しておこう。国に関する基礎知識をわかりやすくまとめる。
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エレミニスト編集部
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ふだん我々が、何気なく使っている「国」という言葉。「そもそも国とは何なのか?」という疑問について、考えたことはあるだろうか。国ができるまでの流れや定義、日本政府承認国家など、基本的な知識を身に付け、学んでみよう。
国ができるまでには、まず「国」をつくるための基本条件を満たさなくてはならない。国であるための条件は、以下の3つだ。
・領土を持っていること
・そこで暮らす国民がいること
・主権を持っていること
領土とは「土地」のことで、主権とはその国の政治について決定する権利を指している。つまり、他国から支配されておらず、独立していることが条件の一つである。また、これらの基本原則を満たした上で、別の既存国家からその存在を認められる必要があるのだ。
他国の承認の形には、明示的承認と黙示的承認の2種類がある。明示的承認とは、承認の意を宣言や通告によって、わかりやすく示すもの。一方で黙示的承認とは、宣言や通告は行わないものの、外交関係を樹立したり、国際的な機関への加盟に賛成したりすることで、承認の意を示すものを指す。承認の形は、どちらであっても構わないのだ。
個別の国同士が承認し合い、外交関係を結ぶケースもあるが、より広く「国」として認められるために必要なのが、国際連合への加盟である。国連に加盟できれば国際法による保護の対象になるだけではなく、世界銀行や国際通貨基金(IMF)など、さまざまな国際的仕組みを活用できる。
国連憲章では、新たな国の加盟について「(国連)憲章に掲げる義務を受諾し、かつ、国連によってこの義務を履行する能力があると認められるすべての平和愛好国に開放」されるとしている。新たに加盟を希望する国は、以下の流れで手続きを踏んでいく。
・国連憲章の義務を受け入れることを正式に表明する
・安全保障理事会にて、理事国15か国のうち、最低でも9か国からの賛成を受ける(ただし常任理事国が反対していないこと)
・総会で3分の2以上の国から賛成が得られる
・承認決議が採択された日から、国連への加盟を認められる
常任理事国とは、中国、フランス、ロシア連邦、英国、米国の5か国を指す。1か国でも反対すれば国連への加盟はできないため、常任理事国の意向が極めて重要な意味を持っている。(※1)
ちなみに、日本という国がいつ誕生したのか、正確な歴史をたどることは難しい。日本建国と聞いて思い浮かべるのが毎年2月にやってくる「建国記念の日」。この日は、紀元前660年に初代神武天皇が即位した日だと伝えられている。
ここをスタートとして考えるのであれば、日本が建国してから、すでに2,600年以上が経過している。とはいえ当時の社会に、「国」や「日本」としての概念があったわけではないだろう。(※2)
日本の初めての憲法となる「大日本帝国憲法」が発布されたのは、1889年であった。これにより、日本は立憲国家として新たなスタートを切る。国連への加盟が認められたのは1956年のことであった。(※3)
日本政府承認国家とは、日本政府が承認し、政府同士の国交を結んでいる国を指す。一方で、国としての存在を認めていない未承認の地域も存在している。北朝鮮や台湾、パレスチナなどが、日本政府未承認国家に当たる。未承認の理由については、歴史上の事情や敵対関係にある国との関係性などが挙げられるだろう。
国連加盟国とは、国際連合への加盟を認められた国のことである。先ほど紹介した手続きを経て、正式に加盟を認められた国を指す。
国連が発足したのは1945年で、発足時に原加盟国として51か国が参加した。その後、1961年には加盟国数が100か国を突破。2021年時点で、もっとも新しい国連加盟国は南スーダンである。加盟が認められたのは、2011年のできごとだった。(※4)
2021年現在、日本が承認している国の数は195か国である。国連加盟国は日本を含めて193か国。日本は国連未加盟のバチカン、コソボ共和国、クック諸島およびニウエを承認している。ちなみに、北朝鮮は日本にとって未承認国家だが、国連には1991年に加盟している。(※5)
国連加盟国数から見る世界の国の数は、発足以降、順調に増加している。とくに増加率が高かったのは、1960年代と1990年代である。1960年代にはアフリカの多くの国が国連へ加盟。1990年代にはソビエト連邦の崩壊により、多くの独立国家が誕生したことが関連している。(※6)
国の数の増減は、決して珍しいことではない。近年も、新しい国ができたり、反対になくなったりしている。
近年になって、日本が新しく承認した国は以下のとおりである。
・クック諸島(2011年3月25日)
ニュージーランドと自由連合関係にあるクック諸島。ニュージーランドとの結びつきが強く、独立国として見る国が少なかったという特徴がある。新たな外交関係を結ぶとともに、日本は31か国目の承認国家となった。(※7)
・南スーダン共和国(2011年7月9日)
スーダンからの独立によって誕生したのが、南スーダン共和国である。激しい内戦の結果、勝ち取った独立であった。南スーダン共和国が独立を宣言すると、日本を含め、国際社会が直ちに承認。国連への加盟も認められている。(※8)
・ニウエ(2015年5月15日)
1974年からニュージーランドとの自由連合のもとで、内政自治を行ってきたニウエ。日本は長く「ニュージーランド自治領の一つ」として扱ってきたが、ニウエからの要請をきっかけに、新たな国として承認した。(※9)
一方で、なくなった国は以下のとおりである。
・ユーゴスラビア(2003年消滅)
もともとは6つの共和国からなるユーゴスラビア。徐々に解体がすすみ、1992年にはセルビアとモンテネグロで新たにユーゴスラビア連邦共和国を結成した。2003年に国家連合方式に移行したことで、ユーゴスラビアは消滅。2006年にはセルビア、モンテネグロともに独立国家となった。(※10)
・ドイツ民主共和国(1990年消滅)
ドイツ連邦共和国(西ドイツ)とドイツ民主共和国(東ドイツ)は、1973年、それぞれが国として国連への加入を果たしている。その後、1990年になってベルリンの壁が崩壊。ドイツ連邦共和国に統合される形で、ドイツ民主共和国は姿を消した。(※11)
我々が「国」を強く意識する瞬間として挙げられるのが、オリンピックである。世界各国のアスリートたちが、それぞれの「国」を代表して晴れ舞台に立つ。
近代オリンピックがスタートしたのは、1896年。第1回アテネオリンピックへの参加国数は、わずか14か国であった。
国際オリンピック委員会はすでに発足していたが、国際的な知名度はまだまだ不十分。「国」を代表する選手たちが戦う大会というよりは、各競技で優れた能力を発揮する選手たちが、個人的に参加するケースが多かったようだ。こうした状況は、その後しばらく続いていく。
現在のような「国を代表する選手たちの戦い」という形が浸透していったのは、1908年のロンドンオリンピックからだ。ちなみに、日本が初めて出場したのは、その次の1912年に開催されたストックホルム大会である。
2021年に開催された東京大会には、206の国と地域が参加。ここには、クック諸島や南スーダン共和国も含まれていた。(※12)
「国とは何か?」と尋ねられたとき、大人であっても戸惑う人は多いのではないだろうか。日本では「国」として認められていても、世界的に見ればそうではないケースもある。当然、世界的に見れば「国」として認めていても、日本の承認は受けていない地域もあるのだ。
また国は、他国の承認によって新たに誕生するケースもあれば、統合や崩壊によって消滅する場合もある。「国」の誕生と崩壊には、さまざまな国・地域の事情が複雑に絡み合っているのだ。
「国とは何か?」という質問にぶつかったときには、今回紹介した情報も参考にしてみてほしい。世界各地の「国」を、より身近に感じられるだろう。
※1 国連のここが知りたい(14ページ目)|国際連合広報センター
※2 建国記念の日
※3 日本の国際連合加盟50周年|外務省
※4 国連加盟国加盟年順序|国際連合広報センター
※5 世界の国数|外務省
国連加盟国加盟年順序|国際連合広報センター
※6 国連加盟国加盟年順序|国際連合広報センター
※7 クック諸島(Cook Islands)|外務省
138-巻頭言「日本がクック諸島を承認」|一般社団法人 太平洋協会
※8 南スーダン共和国、独立|国際連合広報センター
※9 ニウエ(Niue)|外務省
※10 国連加盟国加盟年順序|国際連合広報センター
※11 大会参加予定国・地域情報|東京都オリンピック・パラリンピック教育
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