時速20km未満の4人乗り電動車「グリーンスローモビリティ」 各地に広がる導入事例や車両費用とは

バスの座席に座る女性の後ろ姿

脱炭素化社会の実現に向けて、注目されるのが「グリーンスローモビリティ」の導入である。具体的にどのような移動システムで、どういったメリットが期待できるのだろうか。日本の導入実態と事例から、具体的な利点や課題を解説する。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2021.10.27
SOCIETY
編集部オリジナル

KDDIのつなぐストーリー vol.2|“願い”をもって漁業の現場でデジタルと人をつなげる

Promotion

グリーンスローモビリティとは

グリーンスローモビリティとは、国土交通省によると「時速20キロ未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな(4人以上)移動サービス」を示す言葉である。移動サービスだけではなく、移動に使われる乗り物そのものもグリーンスローモビリティと呼ばれている。

グリーンスローモビリティが注目されるきっかけとなったのは、2015年に採択されたパリ協定である。この協定では、環境問題解決のため、21世紀後半までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするよう定められた。この目標を達成するための、要となるのが「輸送面におけるCO2排出量削減」である。

電気自動車も徐々に普及してきてはいるが、それだけではまだまだ不十分だ。スピーディーに温室効果ガス削減を目指すための手段として、グリーンスローモビリティが注目されはじめている。マイカーではなく、グリーンスローモビリティを使った移動が当たり前になれば、温室効果ガス削減スピードは大幅にアップできるだろう。(※1)

グリーンスローモビリティの6つのメリット

グリーンスローモビリティのメリットは、大きく以下の6つである。

・環境負荷が低い
・速度制限があり、安全性が高い
・高齢者でも運転が可能
・小型モビリティで、狭い道や入り組んだ道でも進める
・開放感がある

グリーンスローモビリティの時速は約20キロ未満。のんびりゆったり進む乗り物である。一般の乗用車に比べて運転がしやすく、周辺住民にもやさしい。

もう一つの特徴は小型の形状だ。乗車人数は限られるものの、その分小回りが利く。狭い道や入り組んだ道でも難なく侵入可能だ。

窓がないのもグリーンスローモビリティならではだろう。暑さ寒さをしのげないというデメリットはある一方、乗車時の爽快感と開放感は得られるだろう。

費用や整備は? 導入への予備知識

では一体、我々の生活のどのような場面で活用するのだろうか。活用場面や導入にあたっての整備状況、現場で抱えている課題などを詳しく解説する。

グリーンスローモビリティの活用場面

グリーンスローモビリティが活用される場面としては、「限られたエリア内における少人数での移動」が挙げられる。具体的には、以下のような例が挙げられるだろう。

・観光地の移動手段として
・イベント会場の輸送手段として
・駐車場からイベント会場までの移動手段として

観光地やイベント会場を巡る手段としても、グリーンスローモビリティは有用である。「マイカーに乗るほどではないが、移動手段があると便利」という場面で活躍するはずだ。

導入にあたっての費用・整備

グリーンスローモビリティ導入にあたって必要となるのは、車両費用である。車両の大きさによっても費用の目安は異なるが、軽自動車をベースにした4名乗り車両であれば250~350万円程度、10名以上が乗れる車両であれば1,500~2,000万円程度が相場だ。(※2)

実際にグリーンスローモビリティを導入する際には、具体的なプランづくりの上で、地域ニーズを把握する必要がある。各種インフラ整備や、運営時の安全対策も欠かせないポイントとなるだろう。準備期間に数年単位の時間が必要になるケースもある。

グリーンスローモビリティが抱える課題

グリーンスローモビリティを導入するにあたって、課題となりやすいのが、地域ニーズの掘り起こしやその他の計画とのバランス調整である。いくらエコなシステムでも、利用者のニーズに合っていなければ、採算は取れない。

一方で、既存の移動手段とどうバランスを取っていくのかも、難しいポイントである。今後の都市計画と、どう融合させていくかも考慮するべきだろう。

また手軽に乗車できるが、一回の充電にかかる時間は5~9時間ほど。走行可能距離は30~100キロ程度だ。充電時間や走行可能距離を意識したうえでの運行体制づくりも課題の一つと言えるだろう。

小型かつ少人数の移動手段ということで、「どのように収入を確保するのか?」という点についても、事前に検討しなければならない。(※3)

国土交通省による推進事業も展開

国土交通省は、グリーンスローモビリティ導入を後押しするための推進事業を展開している。

「グリーンスローモビリティの活用検討に向けた実証調査支援事業」は、グリーンスローモビリティの導入を検討する地方自治体に向けた、実証調査のサポート事業である。車両の無償貸与や、外部専門機関による助言支援が受けられる。(※4)

環境省と連携して行われている「グリーンスローモビリティ導入促進事業」では、地方公共団体のほか、一般企業や一般社団法人なども対象となる。グリーンスローモビリティの導入のための費用の一部が、補助金として交付される仕組みだ。(※5)

各地で広がるグリーンスローモビリティ導入事例

国土交通省が発表しているデータによると、令和3年4月時点で、98の自治体にグリーンスローモビリティの走行実績がある。(※6) 時期や形式はさまざまではあるが、多くの自治体で導入が進んでいると言えるだろう。導入事例を具体的に解説しよう。

グリスロバス/広島県福山市

狭い道路が多く、既存のバスでは対応できない地域も多い、広島県福山市。こうした問題を解決するために、2020年3月よりグリーンスローモビリティが導入されている。名称は「グリスロバス」で、自治体から委託を受けた地元の鉄道株式会社が運行を担う。路線バスの隙間を補うかたちで導入され、主に高齢者の足として活躍。交通系ICカードによる料金支払いにも対応している。(※3)

こあにかー/秋田県上小阿仁村

人口減少率が高く、少子高齢化が進む上小阿仁村。マイカーを運転できない村民の移動手段として、2019年に導入されたのが「こあにかー」である。道の駅を拠点に、高齢者の送迎だけではなく、農作物や日用品などの配送も担う。冬季の寒さが課題ではあるものの、電気毛布と専用バッテリーを車内に積み込むことで対応している。(※3)

ナビヤ アルマ/ 茨城県境町

町民が積極的に関わるグリーンスローモビリティとして知られているのが、茨城県の「ナビヤ アルマ」である。町内の銀行や病院などの生活拠点同士を結び、町民の約9割に利用経験がある。2020年に自動運転車両を採用。自動運転でメディアからも注目され、観光シンボルとしての役割も担う。「横に動くエレベーター」としての理解が進み、各種グッズも発売されている。(※3)

導入自治体も続々 交通の要になりえるか

エコと利便性の両立を目指す、グリーンスローモビリティ。小型かつ安心・安全な仕組みを導入することによって、これまでよりも地域のニーズに合わせた交通システムの確立を目指せるだろう。脱炭素社会の実現に向けた取り組みとしても、高く注目されている。

一方で、グリーンスローモビリティにもまだまだ多くの課題はある。地域のニーズや採算性については、とくに考慮するべきポイントだ。すでに運行がスタートしている自治体も増えているいま、お互いの事例や課題を共有し、よりよい導入方法を探っていくことが、今後の課題となるだろう。

※掲載している情報は、2021年10月27日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends