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J-クレジットは、2013年にスタートした温室効果ガス削減に向けた国の取り組みの一つだ。J-クレジットの目的や仕組み、メリットなどの基礎知識から、これからの課題や効果について、わかりやすく解説する。
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J-クレジットとは、温室効果ガスの排出量削減や吸収量を、国が「クレジット」として認証する制度だ。
企業や地方自治体などが省エネルギー機器や再生エネルギーの導入、森林管理などの取り組みを行うと、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量に見合ったJ-クレジットが発行される。このJ-クレジットは他の企業に販売することが可能だ。
温室効果ガスは目に見えないものだが、削減した排出量や吸収量をクレジットとして可視化させたのが、J-クレジット制度だ。
この制度は2013年4月より開始となった。環境省では、2008年11月から同様の制度「オフセット・クレジット(J-VER)」を行っていたが、J-クレジット制度に移行している。
J-クレジットの目的は、温室効果ガスの排出削減と吸収だ。温室効果ガスによる地球温暖化は、我々が直面している非常に大きな課題の一つだ。世界規模で、各国が足並みをそろえた取り組みが求められるなか、日本が行っている取り組みの一つが、J-クレジット制度だ。
また、J-クレジット制度は、クレジットのやり取りによってお金の流れが生まれる仕組みになっている。クレジットを介して、国内で資金循環できる仕組みを整えることで、経済と環境保護の両立を目指している。
J-クレジット制度を管理しているのは、国である。経済産業省・環境省・農林水産省の3つの省庁が制度管理者となり、プロジェクトの登録や承認を行っている。(※2)
「J-クレジット創出者」とは、J-クレジットを生み出す側のこと。主に中小企業、農業者、森林所有者、全国の自治体などが該当する。業種は多岐にわたり、J-クレジットの参加プロジェクトの一例を下記に挙げる。(※3)
・第39回さっぽろホワイトイルミネーション
・宇宙のまち“大樹町”の地球に優しい取り組み2019
・東北楽天ゴールデンイーグルス主催試合(2019)
「J-クレジット購入者」とは、J-クレジット創出者がつくりだしたクレジットを購入する側のこと。大企業、中小企業、地方自治体が該当する。
J-クレジット・プロバイダーは、クレジットの創出および活用を支援する役割があり、下記の企業などがある。(※4)
・株式会社イトーキ
・株式会社ウェイストボックス
・カーボンフリーコンサルティング株式会社
温室効果ガス排出削減・吸収事業を実施または計画している企業や自治体が、プロジェクトの登録を行う。
登録したプロジェクト計画書にもとづき、排出削減量・吸収量を算定するための測定を行い、モニタリング報告書を作成する。審査機関はこの報告書の審査を行う。
審査を通過すると、事業者や自治体にクレジットが発行される。クレジットが発行された事業者や自治体は、そのクレジットを売却して利益を得ることができる。
プロジェクトを計画し登録するまでの期間は、3~6か月程度。モニタリング結果の報告からクレジットの認証・発行までは、平均1~2年のサイクルで行われる。(※5)
クレジット購入者は、クレジット創出者がつくるクレジットを購入できる。たとえ、自社で環境負荷削減へのプロジェクトを実施していなくても、J-クレジットの購入を通して、温室効果ガスの削減を支援できる。
J-クレジットの販売対象となる排出削減・吸収事業と購入後の活用方法を具体的にみていこう。
Jクレジットでは、温室効果ガス排出を削減・吸収する技術や方法を定めており、その種類は70におよぶ。(2023年11月時点)(※5)これらの一部について、6つに分類した上で確認していこう。
1.省エネルギー等
ボイラーの導入、ヒートポンプの導入、テレビジョン受信機の更新、共同配送への変更、自家用発電機の導入など
2.再生可能エネルギー
太陽光発電設備の導入、バイオマス固形燃料による化石燃料、または系統電力の代替、水素燃料電池車の導入など
3.工業プロセス
温室効果ガス不使用絶縁開閉装置等の導入など
4.農業・畜産業
牛・豚・ブロイラーへのアミノ酸バランス改善飼料の給餌、家畜排せつ物管理方法の変更など
5.廃棄物
食品廃棄物等の埋立から堆肥化への処分方法の変更、バイオ潤滑油の使用など
6.森林
森林経営活動、植林活動など
上記の技術や方法により創出された温室効果ガスの削減・吸収量は、クレジットとして取引できる。
一方、創出されたJクレジットを購入すると、温室効果ガス排出量や森林吸収量として各種の報告書に活用できる。報告ごとに活用できる項目の例をあげる。
① 温対法の調整後温室効果ガス排出量の報告
② 省エネ法の共同省エネルギー事業の報告
③ カーボン・オフセット、CSR活動 (環境・地域貢献) 等
④ CDP質問書及びRE100達成のための報告(再エネ電力由来のクレジットに限る)
⑤ SHIFT・ASSET事業の削減目標達成への利用
⑥ 経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成
ただし、使用できるクレジット種別は種類により限られているため、詳しくは各報告書の記載要領を確認する必要がある。
J-クレジット制度のメリットは、以下の通りである。大きく3つの側面から確認していこう。
・省エネや創エネによるランニングコストの低下
・クレジット売却による利益
・環境問題に関心が高い会社としてのPR効果
・クレジット売買に伴う、新たなネットワークの構築
・カーボン・オフセットへの利用
(企業等の活動で発生してしまうCO2を、他の場所の削減分で埋め合わせすること)
・環境問題に関心が高い会社としてのPR効果
・企業としての評価向上
・クレジット売買に伴う、新たなネットワークの構築
・温室効果ガス排出量の削減
・クレジット売買による経済効果の創出
・海外向けのPR効果
このように、環境に配慮した取り組みを行いながら、それぞれの立場でさまざまなメリットを得られる点が、この制度の魅力と言えるだろう。
これまでJ-クレジット制度に登録されたプロジェクトは1,113件(2024年3月時点、累積・移行含む)だ。制度が開始された2013年度は244件で、年々プロジェクト数は増加。制度そのものの認知度が向上している証拠と言えるだろう。(※6)
これに伴い、J-クレジットの認証量も年々増加している。そのため2016年に閣議決定された地球温暖化対策計画で、J-クレジット認証量の目標値の見直しが行われた。2020年度は、目標645万t-CO2に対して、認証量は697.5万t-CO2と目標値を超えた。2023年度には1,036万t-CO2と順調に効果が出ており、2030年に1500万t-CO2に達することが目標とされている。(※6)
一方で、J-クレジット制度について、指摘される課題がある。
・プロジェクト登録までの手続きが複雑で時間がかかる
・クレジット売却までの見通しを立てにくい
・申請準備からクレジット売却益を得られるまで約4年かかる
・1件あたりのクレジット創出量が低く、クレジット創出者がメリットを得にくい
・中小企業にとって、モニタリングの負担が大きい
J-クレジット制度を活用し、今後さらに温室効果ガス排出削減を目指していくのであれば、これらの課題を一つずつ解決していく必要がある。(※7)
多くの課題が指摘されているものの、J-クレジット制度が一定の効果を出しているのは事実である。とくに、資金力の小さい中小企業や地方自治体が、温室効果ガス排出の削減や吸収に取り組みやすことが、この制度の特徴だろう。
温室効果ガス排出削減は、世界が注目する環境問題への取り組みの一つだ。今後もさらなる温室効果ガス削減に向けて、このような取り組みに注目していきたい。
※1 J-クレジット制度について|J-クレジット制度
https://japancredit.go.jp/about/outline/
※2 制度運営体制|J-クレジット制度
https://japancredit.go.jp/about/management/
※3 クレジット活用事例|J-クレジット制度
https://japancredit.go.jp/cp/57/
https://japancredit.go.jp/cp/52/
https://japancredit.go.jp/cp/39/
※4 J-クレジット・プロバイダー|J-クレジット制度
https://japancredit.go.jp/market/offset/
※5 申請手続の流れ|J-クレジット制度
https://japancredit.go.jp/application/flow/
https://japancredit.go.jp/data/pdf/credit_001.pdf
※6 J-クレジット制度について|J-クレジット制度事務局
https://japancredit.go.jp/data/pdf/credit_002.pdf
※7 J-クレジット制度の現状について|経済産業省
https://japancredit.go.jp/steering_committee/data/haihu_160113/japancredit_genjo.pdf
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