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「サードプレイス」とは、人々のストレスを軽減するために大切な場所のこと。近年はコロナ禍の影響で、さらに注目が高まっている。この記事では、サードプレイスの具体的な意味や役割、効果を解説。さらにカフェやコワーキングスペースなど、日本にどんなサードプレイスがあるか紹介しよう。
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サードプレイスとは、自宅でも職場でもない、居心地のいい「第三の場所」のこと。
アメリカの社会学者であるレイ・オルデンバーグ氏が、1989年に著書『ザ・グレート・グッド・プレイス(The Great Good Place)』の中で提唱したものだ。オルデンバーグ氏は、人々が独自のサードプレイスを持つことで、人生のあらゆる方面にいい効果をもたらすと伝えている。
サードプレイスは、自宅や職場以外ならどこでもいいわけではない。以下の条件を満たした場所のみが、サードプレイスになり得ると言われている。
・誰でも利用できる自由で平等な場所
・活気にあふれ、コミュニケーションを楽しめる場所
・アクセスが良く、誰もが気軽に訪れやすい場所
・新しく訪れた人も、フレンドリーに迎え入れられる場所
・居心地が良く、リラックスした雰囲気を楽しめる場所
・ストレスを感じさせない場所
イギリスのパブ、フランスのカフェ、イタリアの食堂などが、サードプレイスの代表例だ。
サードプレイスの意味やメリットを知るためには、ファーストプレイス、セカンドプレイスについても、意味を把握しておくことが大切だ。それぞれが持つ役割を解説しよう。
ファーストプレイスとは、自宅のこと。睡眠、食事、入浴など、もっともプライベートな時間を過ごす場所がファーストプレイスだ。
とはいえ、自宅だからといって、すべての責任から解き放たれるわけではない。自宅を快適に保つためには、相応の手間が必要だ。また、ともに暮らす家族のための義務や責任もある。
セカンドプレイスは、職場のこと。学生の場合は、学校がセカンドプレイスにあたるだろう。人間が経済活動や学習を行う場所であり、疲れやストレスを抱えやすい。
セカンドプレイスは生活を維持させるために必要な場所だが、他者との関わりが多く、責任が重い。そのため、「自分らしく振る舞えない」と悩む人が少なくない。
環境のいいファーストプレイスとセカンドプレイスがあれば、我々の生活は維持できる。しかし、義務感や必要に迫られて出向くのではなく、自分自身の心にしたがって「行きたい」と思える場所が、サードプレイスだ。
サードプレイスは、生活する上で絶対に必要というわけではない。しかし、他者とのコミュニケーションを通して刺激を受け、自分自身をリラックスさせられる場所があると、新たな価値観に触れリフレッシュすることにつながるだろう。
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サードプレイスが注目されるようになった背景に、アメリカの社会情勢の変化がある。自動車に依存したライフスタイルが一般的になり、ファーストプレイス(自宅)とセカンドプレイス(職場)を自動車で行き来するだけになり、社会のコミュニティが失われていった。
個々のライフスタイルを尊重する一方で、ストレスを解消する場所がないという問題点が指摘されていたのだ。
現代の日本においても、こうした背景は決して他人事ではない。人同士のつながりを求めたり、自宅や職場以外の居場所を探したりする人は、決して少なくないだろう。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、我々を取り巻く社会状況は大きく変化した。多くの企業が、セカンドプレイスである職場への出勤を中止し、リモートワークという新しい働き方を導入。さらに、感染予防のためサードプレイスも閉鎖されるケースもある。
慣れない自粛生活や、目に見えないウイルスとの戦いに、ストレスを抱いている人も多いだろう。
こうした状況の中で、注目されているのが「サードプレイスオフィス」だ。会社でも自宅でもない場所をオフィスにして、リモートワークを行う仕組みだ。サードプレイスとオフィスが合体することによって、仕事の効率化やストレス軽減の効果を狙えるだろう。
人々がリラックスできる場所を持てるようになれば、「趣味のサークル活動で全く違うタイプの人と話し、刺激を受けた」というように、人と人との関わりの中で、新たな意識を育てていけるだろう。サードプレイスが充実すれば、こうした経験がより身近なものになると考えられる。
また、息抜きという意味でも、サードプレイスが果たす役割は重要だ。自宅と職場を往復するだけの日常では、息が詰まりやすくなるだろう。しかし、居心地のいい場所でリラックスして過ごせば、心身をリフレッシュできる。
サードプレイスを上手に活用できれば、こうしたストレスが軽減されるだろう。コロナ禍のいまだからこそ、サードプレイスの必要性は増していると言えそうだ。
日本でサードプレイスを探す場合、どのような場所があるだろうか。サードプレイスとして利用できる3つの場所を紹介しよう。
世界的なカフェチェーン、スターバックス コーヒーは1971年にアメリカ、シアトルで創業した。同社は当時から、自宅でも職場でもないサードプレイスの体験の提供を明言している。(※1)
安価な価格で誰もが気軽に入れる店内には、居心地のいい空間が広がっている。コーヒーを飲み、人同士のつながりを深められる場所だ。サードプレイスオフィスとしても活用可能で、リラックスして過ごしたい人に最適だ。
また、スターバックス コーヒー以外でも、コーヒーショップや喫茶店などもサードプレイスになるだろう。
海外では、パブや食堂などがサードプレイスの役割を果たすケースが多く見られるが、日本ではそうした例は少ないかもしれない。その代わりに、サードプレイスとして機能しているのが、地域のコミュニティ活動だ。
地域内のサークル活動やボランティア活動などを通じて、人との関わりを求める人は多い。子育てサークルやシニアボランティアなど、それぞれの世代に最適なサードプレイスが多くある。
業界や職種に関わらず、さまざまな人が集うのが、コワーキングスペースだ。人と人とのつながりが生まれ、サードプレイスとしての役割を担っている。リモートワークをする場所として注目されており、自宅以外に居心地のいい仕事場所を探している人におすすめだ。
サードプレイスは、日本ではまだあまりなじみのない言葉かもしれない。とはいえ、「人同士のつながりを感じられる居心地のいい場所」と聞くと、いいイメージを抱く人が多いのではないだろうか。
何かとストレスの多い時代だからこそ、我々にはサードプレイスが必要だ。居心地がよく、自分らしく過ごせる場所を探してみてほしい。
※1 Starbucks ceo: The third place, needed now more than ever before|Starbucks Coffee
https://stories.starbucks.com/press/2020/starbucks-ceo-the-third-place-needed-now-more-than-ever-before/
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