CO2排出削減は待ったなし カーボンバジェットから見る地球温暖化の現状

カーボンバジェット

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二酸化炭素排出量を削減する上で、ひとつの指標となるのが「カーボンバジェット」だ。カーボンバジェットとはどんな意味があるのか、目標や残りについて整理しながら解説。地球温暖化の現状について考察する。

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2021.08.26
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カーボンバジェットとは

カーボンバジェットとは、気温の上昇を一定のレベルまでに抑えようとする場合に使われる、温室効果ガスの累積排出量の上限のこと。

人が生活する以上、温室効果ガスをゼロにすることは不可能に近い。カーボンバジェットは、気候変動を最小限に食い止めるために、温室効果ガスの排出量を抑えるという考え方にもとづいている。

気温の上昇を何度までに抑えたいかを決めれば、温室効果ガスの過去の排出量の推計から、今後の温室効果ガスの排出量を計算できる。(※1)

カーボンバジェットと地球温暖化の関係

温室効果ガスは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスがあり、地表から出ていく熱を吸収してしまう気体だ。そして、このうち地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きいのが、二酸化炭素だ。

日本が2019年度に排出した温室効果ガスは合計12億1300万tで、このうち二酸化炭素が91.2%を占めている。(※2)

また、気温上昇の幅は二酸化炭素の累積排出量によってほぼ決定され、地球の温暖化を抑えるには、人為的に発生する二酸化炭素排出量を制限する必要があることが知られている。

地球温暖化の現状と問題点

溶ける氷河

Photo by Roxanne Desgagnés on Unsplash

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書によると、1880年から2012年の間に世界の気温は平均で0.85℃上昇したことが報告された。(※3)

とりわけ最近の30年は、1850年以降のどの10年間よりも高温を記録している。地球温暖化は産業革命以降に進んできたと言われ、大気中の二酸化炭素濃度は産業革命前に比べて40%も増加した。

さらに2021年8月に公表されたIPCCの第6次評価報告書では、地球の温暖化がさらに加速し、2021年から2040年の間に、世界の気温が1.5℃上昇する可能性が指摘された。(※4)

今後どうなる?

IPCCの第6次評価報告書によると、今後考えられる変化について、以下のようなことが挙げられている。

気温上昇によって、熱波や激しい降水が発生する頻度が上がり、2100年には海面が28~55センチ上昇し、もっとも最悪のシナリオでは最大1mに達する可能性があるという。

沿岸地域や低い土地、島に住む人々の暮らしに大きな影響を与えることは避けられないだろう。台風による高潮や、沿岸地域の氾濫、海岸侵食による被害をより受けるようになると予測される。

さらに50年に一度のような記録的な熱波は、1.5度の気温上昇では産業革命前に比べて8.6倍も頻繁に起こる。さらに2度では13.9倍、4度では39.2倍になるという。

カーボンバジェットの目標値

カーボンバジェット

Photo by Alexander Popov on Unsplash

日本政府は2021年7月、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%マイナスにする目標を発表。さらに、50%削減の高みに向け、挑戦を続けていくことを述べている。(※5)

他国では、アメリカが2005年比で50~52%減、イギリスが1990年比で68%以上減、フランス・ドイツなどが1990年比で55%以上減などを表明している。

カーボンバジェットの残り

2015年に開催された、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」で、世界の気温上昇を産業革命前より1.5℃に抑える努力をする長期目標が掲げられた。

これに対し、世界の二酸化炭素排出量などの研究を行う国際組織グローバルカーボンプロジェクトは、年次報告書「グローバル・カーボンバジェット2020」で、気温上昇を1.5℃に抑えようとする場合、カーボンバジェットは8%しか残っていないとレポート。

新型コロナウイルス感染症が世界で拡大し、各国の経済活動が抑制された2020年は、化石燃料の排出量は7%減少したが、大気中の二酸化炭素濃度は引き続き増加。このままの排出ペースでは、10年弱でカーボンバジェットに達する可能性が指摘された。(※6)

排出ギャップがある

しかし、カーボンバジェットの残りがどれくらいあるのか、正確に算定するのは簡単なことではない。前提条件が国によって異なる上に、幅をもたせた目標値を定めているからだ。途上国はGDP当たりの削減目標を出しているところもあるため、単純な足し合わせができない。

それに、各国の削減目標と、世界の気温上昇を安全な範囲に維持するために必要な温室効果ガス排出量の水準には、大きな開きがあると言われる。これが「排出ギャップ」と呼ばれるものだ。

この排出ギャップは依然として大きいことから、世界の気温上昇を1.5度未満とする目標達成には、各国の温室効果ガス削減を目標の何倍にも高く設定しなればならないと、指摘する専門家もいる。

参考
※1 カーボン・バジェットとは?|国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/event/cop/cop20/20141204.html
※2 温室効果ガス排出の現状等|経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/ondanka_wg/pdf/003_03_00.pdf
※3 地球温暖化の実態|環境省
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/stop2015/stop2015_ch2.pdf
※4 最新の地球温暖化の科学の報告書:IPCC第6次評価報告書|WWF
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4685.html
※5 日本の排出削減目標|外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000121.html
※6 Global Carbon Budgetレポート | クライメート・ダイアログ
https://climatedialogue.jp/news/annual-carbon-budget/

※掲載している情報は、2021年8月26日時点のものです。

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