緑のダムは人工ダムを代替できるか 気候変動で注目されるダムの役割とは

ダムから流れ出る大量の水

コンクリートダムの人工的なイメージに対する反発として注目されているものがある。森林を活用する緑のダムだ。森林はもともと保水機能や景観の保持、レクリエーションなどの機能を持っている。緑のダムは人工ダムは不要なのか。近年相次ぐ自然災害で見直されているダムを解説する。

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2021.06.30
SOCIETY
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緑のダムの仕組み

森

Photo by Irina Iriser on Unsplash

緑のダムとは、ダムのように雨水を蓄積しゆっくりと川に流していく森林の機能のこと。コンクリートのダムや河口堰などの河川の流れを遮る人口構造物に対する市民からの批判の高まりとともに、ダムの機能を森林が代替できるのではないかという期待を込めて使われるようになった。

通常、木のないところでは雨が降った後の雨水は土と一緒に地表を流れていく。しかし、落ち葉などが地表を覆っている森林では、雨水が土に染み込むスピードがゆるやかになる。

ミミズなどの土壌生物がやわらかくした土が雨水を吸収し、地下水として蓄えるからだ。その地下水がゆっくりと河川にしみだしていくため、渇水や、河川の水量が急激に増えるのを防ぐことができている。森林は洪水や土砂崩れの防止にも有効だ。

なぜ必要か? 自然災害で注目されるダムの役割

日本には約3,000のダムがあるが、そのうち国が管理しているものは556個ある。ダムには川の水をせき止め、川に流れる水の量を調整する機能がある。それにより、大雨による洪水や干ばつに対応することができるようになる。

日本では、飲水や農業用水の80%以上を河川に頼っている。そのため、取水は河川の環境や生態系を維持するために必要な流量を確保しつつ行うことが欠かせない。ダムで河川の水量を安定化し、10年に一度の渇水が起きても必要な水量を確保できるのが目標だ。水資源開発施設の整備が進んだ現代では、水需要の増加に供給が追いつかない時代はほぼ終焉したと言われている。

一方、近年の気候変動で豪雨や洪水のリスクは増加している。これまで豪雪地帯や寒冷地域では雪解けが早まり、干ばつリスクも増大している。自然災害への対応として、河川の水量を人為的にコントロールできるダムの必要性は一層高まっていると言えるだろう。

巨額な費用や自然への悪影響 ダムが抱える問題点とは

川

Photo by matthew Feeney on Unsplash

ダムは私たちの便利で快適な生活に欠かせない存在となっているが、大きな問題もある。主な論点としては、ダムの建設にかかる巨額の費用と期間、自然環境や水環境に及ぼす悪影響、利害関係者の社会的合意の形成の難しさといったことが挙げられる。

ダムの費用対効果分析の評価対象期間は整備期間+50年だ。適切な材料や施工で築造されたものなら、数十年を経ても健全な状態にあると考えられるが、あくまでも試算でしかない。

過去のデータが存在せず、さまざまな前提が含まれていることから、ダムの適切な評価は困難だ。また、造成後の維持補修にかかる費用も莫大なものとなるダムの建設には長期的な見通しが欠かせない。

コンクリートのダムと緑のダムのメリットとデメリット

水道

Photo by Bluewater Globe on Unsplash

ダムの建設には莫大な費用がかかる。造成にかかる費用に加えて、用地の取得やそこに住む人の移転費用と維持管理にかかるコストも忘れてはならない。

日本は人口減少の局面に入っており、ダムを維持する社会的コストは十分に検討する必要があるだろう。環境に与える影響も大きいことから、総合的に考えるとこれからダムを建設するメリットがデメリットを上回るとは言い難い。

他方、森林には土砂の流出や洪水を防ぐだけでなく、景観の保持やレクリエーションなどの機能がある。日本の国土の3分の2は森林である。森の管理にも費用はかかるが、適切に管理すれば一定度の治水機能を代替させることは可能だ。

森林の持つ保水機能は400億トン以上と試算され、国内最大の奥只見貯水池の総貯水量が約6億トン、黒部ダムや宮ヶ瀬ダムが約2億トンである。そのことを考えれば、森林の治水機能がいかに優れているかがうかがえる。

しかし、気候変動に対応できるほどの大雨に対応できる治水を森林に求めることはできない。過去100年で森林面積に大きな変化はないが、洪水や渇水は頻発してきた。豪雨の際には、森林域からも雨水のほとんどは流出することがわかっている。

ダム整備のゆくえ

山

Photo by Jonny Caspari on Unsplash

国土の管理を所管する国土交通省は、現在は歴史上森林が良好に保存されている時期にあり、これ以上森林を増加させる余地は少ないという見解を持っている。

森林は中小の洪水に対しては一定の効果があるものの、治水計画の対象となるような大雨の際には十分な効果を期待できないため、緑のダムが人工ダムを代替することは不可能だ。

また、緑のダムに関する諸現象は、地域性の強いものであり、包括的、抽象的な議論にはなじまないという性質がある。緑のダムを整備するには、対象となる流域をひとつひとつ個別に調べつつ、これまでに蓄積されてきた学術的な研究成果と地域に蓄積されてきた情報を重ね合わせて行っていくことが必要になるだろう。

緑のダムは決して万能ではなく、期待された効果を発揮できないこともあるが無視できるものでもない。一方、ダムは現代人の便利で安全な生活を支えていることも事実だ。

しかし、ダムの適地は残り少なく、あったとしても多大なコストや、環境への悪影響も伴う。国の取り組みとしては、あくまで森林の存在を前提とした上で、森林とダムの両方の機能を活かした治水・利水を目指していくことになるだろう。

河川管理と土地の利用管理は互いに独立したものではない。両者を統合的に扱う長期的な視点が求められている。

※掲載している情報は、2021年6月30日時点のものです。

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