霜害とは? 原因とメカニズムを解説・深刻な被害と農家の対策

霜害

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初夏や晩秋に霜が降りるとどうなるか?霜害とはどんな現象なのか? 霜が降りる条件や地域、農作物への影響について、原因やメカニズムとともに解説する。さらに、霜害による被害と農家が行っている対策を紹介する。

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2021.08.30

霜害とは? 初夏や晩秋に起こりやすい低温被害

霜害

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「霜害(そうがい)」とは、初夏や晩秋に気温が急に下がり、農作物や果樹などに被害が出ること。「初霜」は、秋から冬にかけて最初に降りる霜のことを指す。

秋の季節外れに早い霜を「早霜(はやじも)」と呼び、晩春から初夏にかけての霜を「遅霜(おそじも)」「晩霜(ばんそう)」と呼ぶ。

また植物の低温による被害のうち、凍結による「凍害」と霜害をあわせて、「凍霜害(とうそうがい)」と言う。

霜害が起こる原因・メカニズム

霜害が起こるのはなぜだろうか。霜害が起きる条件や、農作物に与える影響を見てみよう。

霜が降りる条件

初夏や晩秋、高気圧に覆われてよく晴れた日は、地表の熱が上空に逃げて、夜間や早朝の冷え込みが強まる放射冷却現象が起こる。この放射冷却で明け方や朝に気温が下がることで、霜が発生する。

作物の種類やそのときの作物の成長度合いによっても異なるが、気温がおおよそ4℃以下になると霜害が起こりやすくなる。気温が氷点下になると、凍結が発生しやすくなる。(※1)

霜害が起きやすい時期・地域

霜が降りる時期は、地方により異なる。気象庁によると、霜が降りた初日と終日の平年値は次のとおりだ。(※2)

初日終日
札幌10月25日4月24日
東京12月23日2月14日
大阪12月10日3月18日
福岡12月13日3月12日

早霜の被害は秋に、晩霜の被害は春に発生する。日本では「八十八夜の別れ霜」という言葉がある。これは、立春から88日目(現在の5月2日頃)の八十八夜頃に降りる霜が最後の霜で、これ以後は降りないとされることを表している。

霜害は寒さの厳しい地域で起きやすい。また内陸部は放射冷却が起こりやすいため、霜害が発生しやすい。

農作物への影響

農林水産省の調査によると、2013年4月以降の低温による被害を受けた農作物は全国でおよそ74億円。(※3)2021年4月には福島県で、降霜や凍結によって果樹が被害を受け、被害額は27億円5000万円となった。(※4)

霜害を受けやすい作物は、お茶、桑、梨、ぶどうなどの果樹のほか、野菜、じゃがいも、たばこなど。夏に収穫する作物や、寒さへの耐性が弱まった時期は、霜害を受けやすい。

霜害という言葉から、霜そのものが農作物に被害を与えることを連想するかもしれない。しかし、実際はそうではない。霜が降りるほどの低温となることが原因で、農作物の細胞内や外にある水分が凍ってしまい、細胞が壊れて死んでしまう。

農家が行っている4つの霜害対策

焚き火

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農家が行っている霜害対策を紹介する。(※5)

燃焼法

稲わらや固形燃料などを燃やして、空気を温め気温低下を防ぐ方法。火は風上側に多く配置し、畑や農地全体を温める。点火した後は、気温の低下や上昇に応じて、火元の数や火の勢いの調整を行わなければならない。

取り組みやすい方法ではあるが、燃料を十分準備しておく必要があり、夜間に作業するため農家にとっては負担が大きい。

また、黒煙が発生するため、生活環境に影響がないよう注意する必要がある。古タイヤや廃油は環境汚染の原因となるため使用できない。

送風法

「防霜ファン」と呼ばれる送風機を高い位置に設置し、上層の温かい空気を作物に送風する方法。茶畑やみかん畑など、作物が広範囲に植えられている畑で行われる。

防霜ファンは防霜だけでなく、農地や畑の空気を撹拌することで温度を一定に保つ効果がある。また夜間の温度が上がることで、花芽や葉芽の生育を促進する効果がある。

ただし、防霜ファンの設置は高額の費用がかかるため、導入をためらう農家が少なくない。

散水氷結法

スプリンクラー

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水が氷になるときに放出する熱を利用して、気温が0℃以下にならないようにする方法。

霜が降りると予測される夜に散水すると、作物は氷で包まれる。このときに発生する熱で、しばらく0℃の状態が保たれ、それ以下にはならない。氷が冷えないうちにさらに散水すれば、水が氷るときに新しい熱を放出してしばらく0℃を維持する。

作物が凍結する温度は作物の種類や時期によって異なるが、ほぼマイナス2℃とされている。そのため、0℃に保てれば霜害は発生しないことになる。

ただし、水道代金のほか、スプリンクラーの設置や点検などの費用がかさむ。また、気温が5℃以上になり作物の表面に付着した氷が溶けた時点で散水を停止するなど、注意が必要だ。

霜害は私たちの問題につながっている

大切な作物が一度の霜で被害を受けたら、その影響は大きい。これまでの被害状況を見ても、決して無視できるものではないとわかるだろう。

そして農業は、気候や地理的な条件の影響を受ける。だからこそ近年の気候変動は、私たちの毎日の食事にも直結する問題となっていく。「霜害は、農業に携わる人の問題」と決めず、私たち自身の問題ととらえていくことが必要なのではないだろうか。

参考
※1 農業に役立つ気象情報の利用の手引き|鹿児島地方気象台
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/nougyou/document/kyushu_south/kyushu_south.pdf
※2 平年値|気象庁
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php?prec_no=62&block_no=47772&year=&month=&day=&view=
※3 平成25年4月以降の低温による被害状況等について|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/saigai/teion/2504.html
※4 福島県産の果樹、霜の被害27億円 補正予算で対策|日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC265TI0W1A520C2000000/
※5 霜から作物を守る|山口大学農学部
http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yamaharu/tenki20.htm

※掲載している情報は、2021年8月30日時点のものです。

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