「自分との調和が未来を変える」 CHICO SHIGETAが語る、伝えることの重要性

オーガニックコスメブランド「SHIGETA」を主宰するCHICO SHIGETAさんは、18年間住んでいたパリを離れ、タイに家族で移住した。現在の暮らしの様子と、タイに住み始めたからこそ見えてきたこと、編集長を務める「spring step」を通して伝えたいことを伺った。

夏目 円(なつめまどか)

美容ライター/エディター

オーストラリア在住。大学卒業後、出版社にて編集者を務めたのち独立。美容ライター・エディターとして20年以上のキャリアがあり、50歳を機にメルボルンに移住。現地でのナチュラルコスメ、ビュー…

2021.04.29
SOCIETY
学び

エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

オーガニックが身近にある、タイ・ホアヒンに家族で移住

女性と子ども

Photo by CHICO SHIGETA

テラスから広がる広大な自然に包まれて子どもたちと過ごすのが、CHICOさんの幸せな時間

フランス・パリで生まれたホリスティックなビューティブランドSHIGETA。ブランドを主宰するCHICO SHIGETAさんは、長年暮らしたパリを離れ、現在はタイ・ホアヒンという海と山に囲まれた自然豊かな場所に家族4人で暮らしている。

「かれこれパリには18年ぐらい住んでいました。子どもたちが生まれてから、夫と『これからどういう暮らし方をしていこうか』と話し合いました。大好きな仕事も子どもと遊ぶことも思い切りエンジョイしたいと思っていて、この二つを両立するには、パリは難しい場所だと思いました」

夫婦

Photo by CHICO SHIGETA

SHIGETAの共同経営者でもあるご主人のエマニュエルさん。お気に入りの自宅テラスでリラックス

さらに、CHICOさんを動かしたのは、ご主人のある言葉。

「夫が、『君はウェルネスを伝えているのに、どうしてこんなに排気ガスが問題になっている都会に住んでいるの? 僕は、フレッシュなマンゴーが毎日食べたいよ』って言ったんです。その言葉にはっとして、パリを離れて自然な豊かな場所で暮らそうと決めました。引越先にはアジア圏でいくつか候補がありましたが、仕事で頻繁に日本と行き来することを考えた結果に選んだのが、タイのホアヒンでした。私は、10年ほど前からホアヒンにあるチバソムというデスティネーション・スパに招かれて施術をする機会があって、ホアヒンのすばらしさは前から知っていました。プーケットほど観光地化されていないし、病院や学校などの環境も整っています。おいしいマンゴーも食べられるし、子どもたちとも思い切り遊べますからね」

子ども

Photo by CHICO SHIGETA

家のそばには色とりどりの草木が育つ。花を拾って家で飾るのはお子さんの日課

子ども

Photo by CHICO SHIGETA

庭には生命力あふれる植物が育つ

ホアヒンに移住して3年が経ったいま、パリで暮らしていた頃とは生活がだいぶ変わったようだ。朝日とともに目覚め、日中は仕事をし、夜は子どもたちと一緒に夕食を囲む。人間らしい、“ヘルシーな早寝早起き”が習慣になった。

「昔の生活と比べると、だいぶ健康的な暮らしをしています(笑)。ホアヒンは、オーガニックプロダクトが盛んで、スーパーマーケットに行くと、新鮮なオーガニックの野菜や果物が普通に売っています。素材そのものがおいしく、栄養価もすばらしく高い。私が住んでいる地域は、海沿いではなく、山に囲まれています。毎日目にする風景がホントに大自然! 毎日自然なものに囲まれているせいか、不自然なモノに触れると、違和感をおぼえて調子が悪くなることもありますね」

畑

Photo by CHICO SHIGETA

オーガニックで育ついきいきとした野菜たち

野菜

Photo by CHICO SHIGETA

料理が得意なCHICOさんは、地元で採れたフレッシュな野菜を使って食事をふるまう

仕事とプライベートの境界線をつくらない暮らし

大人と子どもが机を囲む

Photo by CHICO SHIGETA

CHICOさんの仕事場で、絵を描いたりお話ししたり。仕事とプライベートは分けない

2020年から世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、テレワークをしている人も多い。CHICOさんも同様に、自宅の一室で仕事をしている。8時に子どもたちを学校に送り出してから18時ぐらいまで仕事をしている生活だという。

「パリにいた時は、仕事とプライベートを完全に分けていましたが、いまは、その境界線がありません。子どもたちが学校から帰ってくると、そばで声がするし、仕事場にわちゃわちゃ入ってくることもあります。でも、私はそれでいいかなって。タイで暮らすようになってから、もう分ける必要なんてないって思っています。仕事もプライベートもひっくるめて、ひとつの“ライフ”。そのバランスが整っていることで、幸せを感じます」

キッチンにたつ子供と大人

Photo by CHICO SHIGETA

子どもたちが興味あるもの、わくわくすることを一緒に体験する

パリで長く暮らしてきたCHICOさん。タイでの暮らしは、自身にきっと大きな価値観の変化をもたらしたはず。その変化について尋ねたところ、“そもそもテンションが違う”そうだ。

「パリは、女でいることを意識させられる街。知性に溢れていますし、自然と背すじがピンと伸びるよう。一方、タイは、いい意味で気が抜けています。“自分”であることを意識するというのかな。パリにいた時はいつも気が張っていたのですが、いまは、自分でも驚くほどに気も肩の力も抜けている。肩の力が抜けたことで、自分らしさを感じています。これからの自分は、きっとこのペースがいいと思います」

自発的に行動力を起こす カギは情報を発信すること

CHICOさん

海外での生活が長いCHICOさんに、日本のオーガニックやサステナブル、エシカルについて率直に聞いてみた。

「いまでこそフランスは、コンビニのように気軽に買えるオーガニックスーパーをあちこちで見かけますが、昔はそんなことはありませんでした。では、どうやってオーガニックが浸透したかというと、それは、消費者の力なんです。消費者が先陣をきって行動を起こしました。子どもに安心して食べさせられるものを考えた女性たちが、『何を食べさせればいい?』と疑問を感じ、そこから自分たちで選択をして、安心で安全な食材を自分たちで選ぶようになりました。こうして、徐々にオーガニックという文化が根付いてきたのです。

一方、日本は、オーガニックに対して興味がある人とそうでない人の差が明らかに大きいと思います。消費者の意識に差があることと、自分の意見を積極的に発言したり、行動する文化ではないからか、フランスのように大衆の意見が下から押し上がり、民衆化していくことが難しいのです。また、その理由は単に興味がないというのではなく、情報そのものが少ないので興味が沸かない。情報が乏しいから、選ぶことができない。サステナブルやエシカルに関しても、フランス人は“そんなことは昔から知ってるし、やってるよ”というスタンスです。すでに情報をキャッチしやすい環境にあるので、意識が根付いています。フランス人は他人ごとではなくて、自分ごととして捉えている。

私は、いろんな世代や職業の方が情報を発信して、伝えていくことで、オーガニックもサステナブルもエシカルも広がっていくと思っています。簡単に情報をキャッチできれば、自発的に考えることができて、行動を起こすことができます。

それともうひとつ、これからの未来を築いていく子どもたちの教育も大切です。自分が感じたことや、考えていることを発信すること、自分で情報を収集する力を身につけること、自分が正しいと思ったことを貫く力や行動力を、しっかり学校で教育してほしい。そうすれば、自発的にものごとを考え、行動力のある子どもたちが増えて、日本の未来はきっと明るい思います」

自分との調和がとれれば世の中は変わる

女性

Photo by CHICO SHIGETA

都会のパリとは違って自然に囲まれたホアヒンでの暮らしは、“肩の力が抜けた自分”でいられる大切な場所

CHICOさんは、“伝える”ということにフォーカスし、オーガニックのすばらしさやライフスタイルがもたらす心と健康への近道を紹介するウェブマガジン『SpringStep』の編集長も務めている。

「ひとりでも多く伝えることで、これからの未来を少しでも明るくしたいと思っています。一人ひとりの意識を変えるには、知ることがなによりも大切ですから。それと、このウェブマガジンを通して目指しているのは、“自分との調和をとること”です。肉体と精神のバランスがとれて、調和がとれれば、自分自身のもつ本来の力がいちばんうまく発揮できると思います。自分との調和がとれれば心も満たされるので、“自分さえよければ”という考え方はなくなります。他人を思いやる気持ちが自然と生まれて、関係がぐんと良くなります。そんな人たちが増えれば、世の中は変わります。自分自身の調和によって、社会を変えることができる。お互いのリスペクト、地球へのリスペクト、もちろん環境へのリスペクトもできる。私はそう信じています」

本を読む女性と子供

Photo by CHICO SHIGETA

双子のお子さんと一緒に過ごす大切な時間。最近は、ココ・シャネル、ヴィヴィアン・ウエストウッド、オードリー・ヘップバーンといった著名人による伝記の絵本を読むのが好き

CHICOさんのインタビューを通して、とにかくひとりでも多くの人に伝えることが、よりよい社会をつくるための最短の近道だと改めて感じた。環境問題を他人ごとではなく、自分ごととして捉えるには、情報を簡単にキャッチできるツールが必要だ。そのために、ELEMISTでは国内外のさまざまな情報を広く発信している。記事を読み終えて、“自分にもできる”と気軽に思ってくれれば、とても嬉しい。



CHICO SHIGETA
SHIGETA主宰、ホリスティックビューティーコンサルタント。
美しい肌と体を育むためには心身のバランスこそが不可欠と考え、長年フランスおよび日本にてビューティーメソッドを探求。その経験と実績をもとにバイタリティー・コーチング®を考案。現在は、パリのセレブリティやアーティストのためのパーソナルコーチとして活動するほか、大手化粧品会社や美容機器会社のコンサルティング及びブランドスポークスマンとしても活躍中。
近著に『「リセットジュース」を始めよう~パリ美人のダイエット』(講談社刊)など、著書多数。オーガニックのすばらしさやホリスティックなライフスタイルがもたらす心と健康への近道を紹介するウェブマガジン「Spring Step(スプリングステップ)」 の編集長も務める。
SHIGETA:
https://shigetajapan.com/
Spring Step:https://springstep.jp/

取材・執筆/夏目円 撮影/岡積千可

※掲載している情報は、2021年4月29日時点のものです。

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