地球温暖化の防止に貢献する「炭素固定」 2つの種類と推進事例

光を浴びて葉脈が透けて見える木の葉

炭素固定とは、大気中や排ガスなどに含まれる二酸化“炭素を固定すること。その言葉が注目されている背景や仕組みについても可能な限り平易に記述。炭素固定の方法について、いま現在どんな方法があるのかを複数紹介。また、世界で実際に行われている事例も取り上げる。

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2021.05.25
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炭素固定とは

地面が苔むした針葉樹の森

Photo by Wesley Nixon on Unsplash

炭素固定とは、なにを意味する言葉なのか。用語集などを見ると、大気中や排ガスなどに含まれる二酸化“炭素”(CO2)を固定することとある。つまり、なんらかの方法で気体である二酸化炭素を、炭素化合物というモノにすることで固定できるという。 

炭素固定の類義語には、「炭酸固定」、「二酸化炭素固定」、「炭素同化」、「炭酸同化」という単語もある。英語では、「Fixation of Carbon Dioxide」、「Carbon Fixation」、「Photosynthesis」などと表記されることが多い。

ちなみに、「同化」とは、同化反応のことを指しており、代謝のひとつである。

炭酸固定の種類を知ろう

二酸化炭素(CO2)を別のものに代えることなどできるだろうか? 答えはイエス。不思議に思うかもしれないが、古来よりその営みは自然界で行われてきた。その代表例が「光合成」だ。
 
ここでは、「炭素固定」の大きく分けて、自然に行われるものと、人工的に起こす2種類のなかで、代表的なものを紹介する。

自然による炭素固定

まずは、自然発生的に行われる「固定炭素」を見てみてみよう。先に述べたように、樹木などが行う「光合成」が、もっとも知られた「炭素固定」だ。大気中の二酸化炭素と水を材料にし、代謝物として酸素を排出する仕組み。

また、これとは別に、微量ではあるが、硝酸菌などが土壌の化合物を利用して行われる「炭素同化」がある。これは、光合成に対して化学合成と呼ばれる。

人工による炭素固定

では、人工的な「炭素固定」にはどういったものがあるだろうか。代表的なものに「物理化学的な固定法」があげられる。大規模に「地中や海洋などに隔離する方法」も、人工的な炭素固定のひとつだ。 

「物理化学的な固定法」とは、装置を用いて発生源である施設や排ガス中の二酸化炭素を、分離し、回収する方法だ。そのなかにも、排ガスをアルカリ性溶液で吸着し固定する「化学吸収」、高圧下で二酸化炭素を大量に溶解できる液体を用いる「物理吸収」、排ガスを吸着材と接触させる「物理吸着」など固定技術にもさまざまな方法がある。 

「地中や海洋などに隔離する方法」とは、二酸化炭素に大きな圧力をかけて地下に注入する方法。近年、ノルウェーや米国、カナダなど、世界中で実用化が進められているが、費用の面などで課題も残されている。

これらのほかに、プラズマ分解や金属と反応させることによる「分解法」また、「バイオアクターを利用する手法」などもある。バイオアクターを利用する方法のなかでも、光合成を用いるものは有効とされるが、そうでないものは議論の途中のようだ。

なぜいま必要とされるのか?

宇宙から撮影した夜の地球

Photo by NASA on Unsplash

そもそもなぜ、炭素固定が注目されるようになったのか。地球温暖化が、人類共通の大きな問題として認識されるようになったからにほかならない。

地球温暖化の要因である二酸化炭素を、固定化することで空気中から減らすことができると考えられたため。しかも、技術の進歩で人工的に固定できる可能性が広がったことによって、がぜん注目が集まったというわけだ。

環境情報メディア「環境展望台」によれば、日本において2007年度の温室効果ガス排出量はCO2換算で13億7100万トンだった。これは、当時の指標だった「第3回気候変動枠組条約締約国会議(CPO3)」で採択された「京都議定書」(1997年)の基準年である1990年から、すでに8.7パーセント上回っていた。つまり改善されていないどころか、悪化してしまっていた。 

その後、京都議定書は、2015年「第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」で採択された「パリ協定」へと移行。2020年以降の温室効果ガス削減等の新たな枠組みとしてさだめられた。これによって、すべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新することとなった。また、上昇温度を1.5度に抑える努力などが目標として設定された。 

これらとは別に、砂漠化が進んだり、大規模な山火事や集中豪雨に頻繁に見舞われるなど、異常気象による被害を実感する人は世界中で増え続けている。ゆえに、エコ意識への高まるのは当然のこと。生産活動を行い、CO2を排出する側である企業は、エコへの積極的な姿勢を示すことが強く求められるようになっている。 

つまり、高次元の枠組みと市民レベルの意識変化が同時に進んだことにより、温室効果ガスの要因である二酸化炭素を大気中から減らせる「炭素固定」に期待が寄せられているのである。

「炭素固定」に関する取り組みの例

人工光合成

2018年7月の経済産業省資源エネルギー庁ホームページに掲載されたレポートには、「人工光合成」について、以下のように記述されている。

「『人工光合成』は、化石燃料からの脱却など、脱炭素化を実現するためのキーテクノロジー」であると。自然界で営まれる光合成に似た仕組みで、「CO2と水を原材料に、太陽エネルギーを活用する形で化学品を合成する技術」なのだという。

産官学連携で、2012年からプロジェクトが始動している。技術革新が進んでいるものの、太陽エネルギー変換効率のさらなる向上や、低コスト化などまだクリアすべき課題もある。

サンゴ礁エコファクトリー

既存のサンゴ礁を改良したり、または新たにサンゴ礁を創造することで、二酸化炭素を固定する取り組みのこと。

通産省や電子技術総合研究所などが中心に提唱する構想で、ハザマ研究所などが掲げる「スーパーリーフ構想」などもそれに通じる。

ただ、サンゴ礁生態系が酸素を供給する量は、それらが消費する量をどれだけ上回っているかなどの調査が乏しい。調査をさらに進め、データの蓄積が必要なため、実効力を持てるまでに時間がかかることが懸念される。

「炭素固定」の多くを担う森林を大切にすることからはじめよう

地球に模した円形の玉に当て込んだ都市の拡大地図

Photo by Louis Reed on Unsplash

地球温暖化対策が、人類共通の喫緊の課題であることは疑いようがない。「炭素固定」のために開発される最先端技術もその一助になるだろう。

しかしながら、それ以前に、人もまたエコシステムの一部であることを思い出すべきときではないだろうか。樹々や草花らと太陽が織りなす自然の営みに、温暖化抑制効果を押し付けてはいけない。

地球の住人として、二酸化炭素を排出しないために、省エネやリユースなど、一人ひとりがいますぐできることは決して小さくはないはずだ。

※参考サイト
CO2固定技術|環境展望台
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=26
炭素固定化技術の現状と展望(3、4ページ目)|IEEJ
https://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/755.pdf
2020年以降の枠組み:パリ協定|外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000119.html 
CO2を“化学品”に変える脱炭素化技術「人工光合成」|資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/jinkoukougousei.html 
サンゴ礁による二酸化炭素固定|ハザマ研究所
http://www.amsl.or.jp/midoriishi/0503.pdf

※掲載している情報は、2021年5月25日時点のものです。

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