ICT化の裏に潜む「デジタルディバイド」とは 日本における情報格差の現状

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デジタルディバイドとは、インターネットやスマートフォンなどの情報通信技術(ICT)を利用できる人とそうでない人との間に生まれる情報格差のこと。情報のデジタル化が進む日本社会において、デジタルディバイドは教育的・経済的・社会的な格差を生む要因となる。

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2021.04.30
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デジタルディバイドとは

ノートパソコンを使用する人

Photo by Glenn Carstens-Peters on Unsplash

デジタルディバイドとは、「デジタル(digital)がもたらす分断(divide)」、すなわちインターネットやパソコンなどの情報通信技術(ICT)を利用できる人とそうでない人の間にもたらされる「情報格差」のこと。

多くの情報がデジタル化された現代社会において、ICTを利用できないことは、情報やサービスを受けられずに教育的・経済的・社会的な格差を生む要因となる。また単に「情報にアクセスできるかどうか」だけではなく、アクセスできるデバイスや情報の質も問題となっている。

デジタルディバイドは、1990年代半ば頃から米国で議論され始め、1999年7月に米国商務省報告書「Falling Through the Net:Defining the Digital Divide」が発表されたことで一般に認知されるようになった。

日本においても、2000年7月の沖縄サミットでIT革命による経済格差が議論に上がったことで、デジタルディバイドが地球規模の問題であるとして知られるようになった。

日本とデジタルディバイドの現状

総務省が発表した2020年版「情報通信白書」では、年収1,000万円以上の層のインターネット利用率が94.5%であるのに対し、年収200円万未満の層の利用率は80.7%とされている。

また年齢別のネット利用率では、13歳~69歳は90%を超える一方、70〜79歳は74.2%、80歳以上は約57.5%と、日本では世帯年収や年齢によって格差が生じていることが明らかになった(※)。

さらに現在、管政権ではデジタル改革という政策を掲げており、行政や教育のデジタル化、テレワーク導入の促進などが進められる予定だ。これにより、学びや業務の効率化に期待ができる一方、デジタルディバイドが広がることも懸念される。

デジタルディバイドの種類と背景

国際間デジタルディバイド

国際間デジタルディバイドとは、先進国や開発途上国などにおける国ごとの情報格差のこと。コストや情勢といった要因で基本的なインフラが整っていない開発途上国では、技術発展が進んでいる先進国と比べて、デジタル媒体やインターネットの普及、情報リテラシーの教育、IT人材の確保といったさまざまな面で遅れが生じてしまっている。

地域間デジタルディバイド

地域間デジタルディバイドとは、国内の都市部と地方部といった地域ごとの情報格差のこと。とくに過疎化している地域では、電話回線やインターネット通信などのICTインフラが充実していない傾向にあり、インフラが整っている都市部との情報格差が生まれている。

個人間・集団間デジタルディバイド

個人間デジタルディバイド、または集団間デジタルディバイドとは、個人の年齢や障害の有無、学歴、所得によって発生する情報格差のこと。一部の富裕層や都市部に住む人、年齢の若い人ほどICTリテラシーが高い傾向にあり、これにより情報格差が生まれている。

情報弱者にもたらす影響

デジタルディバイドによって、ICT技術を利用できていない人々のことを「情報弱者」と呼ぶことがある。デジタル化が進む社会において情報弱者になることは、以下のような影響をもたらすことが考えられる。

高齢者世代の孤立化

日本では年齢が高くなるほど、デバイスの普及率やインターネット利用率が減少する傾向にあり、高齢者は情報弱者になりやすい。

昨今においては、スマートフォンやタブレットを使用したコミュニケーションが主流となっており、それらを所持していない・使い方を知らないことによって、高齢者がコミュニティーから孤立化してしまうことが考えられる。

また支払いのキャッシュレス化や、公共手続きや情報のデジタル化によって、技術の発展に追いつけない高齢者が、情報やサービスの利用を逃してしまうことなども懸念されている。

社会的・教育的・経済的格差の拡大

情報のデジタル化が進んだことで、インターネットやアプリ・SNSを使用して、多くの知識を得たり、人とコミュニケーションを取ったり、勉強や業務の効率化を図ったりすることができるようになった。

また昨今では、WordやExcelが使用できるといったITスキルが高いほど就職に有利とされているほか、インターネットを利用した副業も盛んになっている。

一部のICTリテラシーの高い人は、こうしたICTによる利便性を享受できるが、情報弱者にとっては不利な状況になり、社会的な孤立や、教育や収入の格差を生じさせる可能性もあるだろう。

犯罪や緊急時の危険性

情報弱者になってしまうことで、テロや災害などの緊急時に、何をするべきか・どこに避難するべきかといった情報を受け取ることができず、大きな被害に遭ってしまう可能性がある。

またICTリテラシーの低さから、個人情報をネット上に掲載してしまったり、安易にネット上での決済をしてしまったりすることによって、デジタルディバイドを利用した犯罪に巻き込まれる可能性も考えられるだろう。

環境づくりに向けた対策

ノートパソコンを使用する人

Photo by Christin Hume on Unsplash

デジタルディバイドを解消するには、多くの人がデジタルに親しみ、情報を手に入れられる環境をつくる必要がある。

例えば、公共施設への無料で使用できる端末の設置や、インターネット通信にかかるコストの削減、誰でも簡単に使うことのできるデバイスやサービスの開発といった対策が考えられるだろう。

総務省では、ICTリテラシーの向上を目的として「デジタル活用支援」を実施。ICT機器やオンラインサービスの利用方法について、高齢者などが携帯ショップや公民館といった身近な場所で相談や学習ができる仕組みづくりに取り組んでいる。

また学校や企業においても、パソコン教室の実施やメディアリテラシー教材の普及など、ICT教育を取り入れる動きが高まっている。非営利団体では、貧困が原因で情報弱者となっている子どもたちに、ICT端末を無償で提供するといった動きも見られている。

ICTによる利便性の裏に潜むデジタルディバイド

社会全体のICT化は、今後ますます加速していくことが予想される。行政手続きがすべてインターネット上でできるようになったり、リモートワークが進むなど、生活や業務の利便性の向上が期待できる。

その一方で、誰一人として社会から取り残されてしまわないように、自治体や学校、企業などが、デジタルディバイドの防止や情報弱者へのケアに取り組む必要があるだろう。

※ 総務省「令和2年版 情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd252120.html

※掲載している情報は、2021年4月30日時点のものです。

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