持続可能性の高い農業生産方式「エコファーマー」の現状 年々減少傾向にある理由とは

野菜

持続性の高い農業生産方式を採用している農業従事者が認定を受けられる「エコファーマー」という制度がある。農産物にはさまざまな認証マークがあるため、混乱してしまう人もいるかもしれない。この記事では、エコファーマー制度についてその概要と成果、そして課題を解説する。

2021.03.15

エコファーマーとは 制度の目的と背景

新芽

Photo by Markus Spiske on Unsplash

エコファーマーとは、持続可能性の高い生産方式を採用している農業従事者のこと。平成11年に制定された「農業生産方式の導入の促進に関する法律(持続農業法)」第4条に基づいて、各都道府県知事に「持続性の高い農業生産方式の導入に関する計画」を提出し、それが認定された農業従事者に与えられる(※1)。

農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しながら、化学肥料や農薬などの環境負荷をできるだけかけない土作りなどを行う持続的な農業である「環境保全型農業」との親和性も高い。

制度の認定要件

エコファーマーの認定を受けるには次の3つのポイントを満たす農業生産方式に取り組む必要がある。

土作り
肥料に、たい肥や栽培した作物をそのまま耕して土にすき込む方法などで土作りを行う。

化学肥料低減
化学肥料を使う場合でも作物の根周辺など局所のみにするなど使用量を減らしたり、肥料の溶け出す量を調節した長持ちする肥効調節型肥料を使ったりして化学肥料の使用量を減らす。

化学合成農薬低減
除草剤ではなく機械で除草を行う、雑草を食べてくれる動物を飼う、害虫の天敵となる虫を利用するなどして化学合成された農薬の使用量を減らす。

2020年3月末時点のエコファーマーの認定件数は全国約8万4000件。農業従事者全体の7%程度を占める。新規に認定されるエコファーマーのうち3割程度が水稲、ナスやキュウリ、トマトなどの果菜類も3割程度となっている。認定件数全体では、半数を水稲が占める(※2)。

認定を受ける3つのメリット

トマト

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エコファーマーに認定されるメリットは次の3つだ。

・「持続性の高い農業生産方式」の導入に必要な機械や資材の購入をする際に借り入れを行った場合、償還期間の延長ができる。
・「環境にやさしい農業」推進事業補助金の支援対象になることができる。
・各都道府県のエコフォーマー版ロゴマークを使える。

なお、先述した環境保全型農業には、エコファーマーとは別に環境保全型直接支払交付金制度という補助金制度もある。これは国が自然環境の保全に貢献する農業生産活動を行う上で発生する追加的コストを支援するもの。

化学肥料や科学合成農薬を5割以上削減する取組と合わせて行う活動や、カバークロップと呼ばれる肥料効果を目的とした収穫しない植物の作付けへの支援などが挙げられる。

こうした支援制度を活用すれば、費用負担を押さえて環境に配慮した農業経営ができるのが大きなメリットだ。有機JASを取得すれば、一般的な慣行栽培で栽培した農産物と比較して1.5倍程度の価格がつくこともある。

エコファーマー制度導入の成果

エコファーマー制度の目的は、環境保全を重視した農業に転換することで、環境と調和のとれた農業生産体制をつくることだ。

それによって、国産農産物への支持を高める。認定制度を導入することで、意欲的な生産者を鼓舞するねらいもある。エコファーマーに認定される農業従事者は、1999年時点で全国13件だったが、翌年には1,000件を突破。

農林水産省は2005年時点でエコファーマー認定数の目標を10万件として設定しており、この目標はよく2006年に達成している。2011年までは順調に認定数を増やした。エコファーマー認定を受けた農産物は、流通や消費者からも一定の評価を得ていると言えるだろう。

認定件数は年々減少傾向に 環境保全型農業の課題

ところが、2011年を境に認定数は減少(※3)。農業従事者の環境保全型農業への関心が高まる一方、エコファーマー認定を取得しても価格の優位性につながらない点が伸び悩みの背景となっている。

環境保全型の農業は、一般的な栽培方法に比べて収量が制限される。化学肥料の使用や、化学合成した農薬の使用を抑えるため、病害虫の被害が発生しやすくなる。仮に一般的な栽培方法で栽培した農産物の1.5倍の価格がついても、生産量が半減してしまうと、全体の売上は減少する。

将来的に人口の減少が見込まれること、家計の農産物にかけられる予算には限りがあることなどを踏まえると、将来的に野菜の消費量が大きく増える可能性は少ないと考えられる。

また、申請時に必要な計画書の作成に手間がかかることも農業従事者の負担となっている。エコファーマー制度や有機JASの認定を取得するには、膨大なコストと労力がかかるため、小規模の農業従事者の負担が大きい。そのため、農薬や肥料を減らし環境に配慮した栽培方法を採用している事業者でも、認定をとっていないところも少なくない。

経済性と環境の両立 持続可能な農業に必要な視点

エコファーマー制度や環境保全型農業は、持続性の高い農業に必要な視点だ。しかし、商業的に行う以上は、経済性も決して無視できない点だろう。

なぜなら、農業従事者のやる気や志だけでは、長く続けるのは難しいからだ。持続性の高い農業をスタンダードにするには、エコファーマー制度を農業従事者へ周知するだけでなく、農産物の価格の形成方法や、補助金のあり方など、全体的な仕組みの構築が求められている。

※1 持続性の高い農業生産方式の導入に関する計画の認定要領
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/shoku/anzen/eco/nintei/
※2 持続性の高い農業生産方式導入計画の認定状況
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_eco/attach/pdf/index-3.pdf
※3 エコファーマー認定件数、1万5000件減る
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2013/07/130702-21444.php

※掲載している情報は、2021年3月15日時点のものです。

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