水道水を浄化せずに飲める国は世界でわずか15カ国。世界で水ストレスに苦しむ人々が存在している。上下水道設備が整った日本もじつは、水ストレスが高い国として発表されている。世界の水不足の現状と引き起こされる原因について解説を加える。
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水ストレスとは、水不足によって日常生活に不便を感じる状態のこと。この状態の程度を数値で表すと、人口一人当たりの年間使用可能水量は1,700㎥(立法メートル)が最低水準となる。
これを下回る場合は、水ストレス下にある状態、1,000㎥を下回る場合は水不足の状態、500㎥を下回る場合は、絶対的な水不足の状態と使用水量により状態分けがされている。
なお、使用可能水量が示すところは飲み水だけでなく、農業、工業、エネルギーおよび環境に要するすべての水量を指しており、一人の人間が人間らしく生活をしていくのに必要最低限の数値となっているから、決して多く見積もられているわけではない。
現在、世界人口の40%以上にあたる36億人が、少なくとも月に一度は水不足に陥る潜在的リス クを持つ地域で暮らしている。2050年には、48〜50%に達するとも言われている(※1)。
ワシントンにある環境研究組織の世界資源研究所(WRI)が2013年12月12日に発表した、世界にある100の河川流域と181カ国で水に関するリスクを調査した「アキダクト(水道)・プロジェクト」のデータによると、水ストレスのランキングがもっとも高いとされている国はシンガポール。
その理由としては、人口が過密状態であること、湖や帯水層から十分な淡水が得られないこと、天然水の供給が過剰に求められていることが挙げられている。
一方で、豊かな水資源を誇ると思われていた日本だが、実は水ストレスが高い国として発表されている。これは日本の食料自給率に起因している。約60%を輸入に頼っているというわけで、食料の輸入はその食料を生産した場合に必要な水も含まれているため、形を変えて水を輸入していると考えるられるからだ。
よって日本は、食料の輸入を通じて海外の水不足にも通じているので、無関係とはいえない。
Photo by Ethan Sykes on Unsplash
水ストレスにより、私たちが当たり前だと思っている日常的な生活が送れなくなる可能性がある。水ストレスにさらされれば、飲み水の確保だけでなく、食料や工業品の生産、命に関わる救助防災活動等、影響範囲は計り知れない。自国にあるわずかな水資源をめぐって他国と争いが起こる可能性もある。
考えられる原因は大きく分けて3つある。まず一つ目に、世界人口の増加がある。このまま増え続ければ、2050年までに約97億3,000万人に達するとも予想され(※2)、増加分の生活水を確保するためにも、さらなる水が必要。
二つ目に、気候変動問題がある。地球温暖化により、干ばつや砂漠化が進み、数多くの国や地域で水不足が問題となっている。
三つ目に水紛争問題がある。日本は島国なため、水紛争にはなじみがないかも知れないが、世界中で限られた水資源をめぐって紛争が起きているのも事実。近国では、韓国北朝鮮間、マレーシアシンガポール間で勃発している(※3)。
水資源の要因は、水不足とはなじみのない国にみえても、グローバル経済においては複雑に絡み合っており、各国の水資源管理対策が求められている。
同時に水資源不足を助長させる温暖化、2050年に頂点を迎える人口増加に関しては、背景に発展途上国の貧困問題が根深い。水資源の未来を考えるのであれば、世界全体が瀕している問題にひとり1人がまず向きあうこと、これに尽きるのではないだろうか。
水ストレスは他国だけの問題ではなく、日本こそ身近な問題として受け止めるべき。まずは小さいことかもしれないが、日常生活でできる節水対策に目を向けるのがいいかもしれない。
※1 1)水資源に関する問題とは|環境省
http://www.env.go.jp/policy/j-hiroba/kigyo/3-2_sankoushiryou_water_190411.pdf
※2 世界人口推計2019年版:要旨 10の主要な調査結果(日本語訳)
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33798/
※3 水資源問題の原因|環境省
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000021.html
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