身近な差別と偏見「マイクロアグレッション」 無自覚に他者を攻撃してしまう原因とは

夕日に向かって、重ねた手を掲げる男女

私たちの社会に潜む「マイクロアグレッション」。日常生活のなかに隠された、無意識の差別である。マイクロアグレッションに関する基本的な知識と具体例、原因や対処法を解説する。差別のない社会の実現に向けて、「知る」ところからスタートしよう。

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2021.03.29
SOCIETY
編集部オリジナル

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マイクロアグレッションとは、無自覚の「けなし行動」

コーヒーカップ片手に語り合う二人の女性

Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash

マイクロアグレッションとは、マイノリティに対する侮辱や差別的な言動を指す言葉だ。マイクロアグレッションという概念が生まれたのは、1970年代のアメリカでのこと。精神医学者であるチェスター・ピアース氏によって提唱された。

ピアース氏が当時注目したのは、白人と黒人のコミュニケーションのなかに潜む、無自覚な「けなし行動」である。

たとえば日本で暮らす外国人(のように見える人)に対して、「日本語がお上手ですね」と言うのは、一見褒め言葉のように見える。しかしその裏には、「外国人(のように見える人)が、こんなに上手に日本語を話せるわけがない」という差別意識が隠れているのだ。

マイクロアグレッションという言葉を日本語に訳すと、「小さな(マイクロ)攻撃性(アグレッション)」。その意味どおり、一つひとつは見逃してしまいそうなほど小さくても、極めて重大な結果をもたらしかねない「差別的攻撃」なのだ。

マイクロアグレッションと同様の意味で使われがちな言葉に、「カバードアグレッション(隠された攻撃性)」がある。たしかにどちらも、「わかりにくい差別」という点で共通しているが、両者の間には決定的な違いがある。

マイクロアグレッションが無自覚で行われるケースが多い一方で、カバードアグレッションは、明確な攻撃性を持ちつつ、それを巧みに隠す差別を指す。差別をする側の考えには、明確な違いがあるのだ。

マイクロアグレッションと差別の違い

マイクロアグレッションは、差別の一種である。他の差別と異なっているのは、「差別している側にその意識がない」ケースが多く含まれている点だ。

差別する側に「差別している」という自覚がない以上、差別的な言動の改善は見込めない。またマイクロアグレッションを向けられた側にとっても、「日常会話のひとつ」として、見逃してしまうケースも多い。

ただし、ひとつひとつは「マイクロ」であっても、攻撃が積み重なればダメージは確実に大きくなっていく。「自分は受け入れられていない」「よそ者だ」という感覚が大きくなるにつれ、自信喪失・気力の低下・うつといった悪影響を及ぼす可能性も高くなるだろう。

侮辱や差別が生まれる原因

マイクロアグレッションが生まれる原因は、無知や思い込み、無意識である。事情をよく知らないまま、思い込みで無意識に発言してしまうことで、相手を不快にさせる可能性がある。

また社会的マイノリティに属する人々に対して、その経験や感情などを無価値なものとして扱うことも、マイクロアグレッションが生まれる原因のひとつである。

社会全体の制度や仕組み、さらに言えばマジョリティに属する人々の無自覚こそが、マイクロアグレッションを生み出す原因なのだ。

世界と日本の現状

机を挟んで会話する白人女性とアフリカ系アメリカ人の女性

Photo by Christina @ wocintechchat.com on Unsplash

マイクロアグレッションの問題は、「差別」と認識されづらい点にある。発言者自身が「差別」という認識を持っていないために、何気なく口に出してしまいがちだ。

またマイクロアグレッションを向けられた側にとっても、この問題は深刻である。相手にどういう意図があるのかわかりづらいため、「差別だ」と声を上げにくい現状があるのだ。

仮に「差別だ」と声を上げたとしても、周囲の理解を得られるかどうかはわからない。「考え過ぎだろう」「相手にそんな意図はない」など、言われた側の捉え方に問題があると指摘されるケースも多い。

世界的に人種差別に対する意識が高まっているいま、暴力行為の足がかりとなるマイクロアグレッションにも、注目が集まっている。まずはマジョリティがマイクロアグレッションの存在に気づき、自身の言動に潜む「けなし行動」の意味を認識する必要がある。大手企業のなかには、そのための取り組みを積極的に実施している企業も少なくない。

日本の社会にも、マイクロアグレッションは数多く存在している。十分な対策がとられているとはとうてい言えず、今後の課題と言えるだろう。

マイクロアグレッションを身近に感じる15の具体例

マイクロアグレッションを認識するためにも、まずはその具体例を知ろう。

性に関するマイクロアグレッション

・男性と女性スタッフが同席していると、女性スタッフをアシスタントとして扱う
・「旦那さんはどんな人なの?」(結婚していると伝えた際に、異性愛を前提として捉えられる)
・「あなたがLGBTQだなんて意外!真面目なタイプだと思っていた!」
・「社会は男女平等で、誰にでも均等にチャンスはある」(女性が成功できないのは女性が努力していないからだ)
・外見に気を使わない女性を、レズビアンと決めつける

人種・国に関するマイクロアグレッション

・「あなたの肌の色は全く気にならないわ」
・「どこから来たの?」(外国人に見える人に対して)
・「日本人女性は小柄で大人しいからかわいいよね」
・「ブラジル人だからサッカーが得意ですよね?」
・「君はとても聡明で、有色人種っぽくないね!」

その他の身近なマイクロアグレッション

・目が見えない人に対して大きな声で話す
・「お父さんお母さんに伝えてね」(両親がそろっていて異性の夫婦であるという決めつけ)
・「人間は、外観よりも中身が大事だから」
・「お正月休みはいつからとるの?」(宗教の決めつけ)
・「たったそれだけの食事で足りるの?」(大柄な人に対して)

自分の思い込みに基づいた無自覚な言動が、マイクロアグレッションになりがちだ。誰にとっても他人事ではない。

マイクロアグレッションへの対処法

【個人】違和感を認め真意を確認

誰かの意図しない差別的言動にモヤモヤしたときには、まず不快だと思う自分を受け入れよう。「自分の思い込みかも」と悩む必要はない。相手からの何気ない一言に傷つき、引っかかっているのは事実である。

自分が不快に思った事実を相手に伝えるかどうかは、状況と自分自身の感情しだいである。時間を置いて対処したほうがいいケースもあれば、その場ですぐに伝えるべき場合もあるだろう。

相手に伝える場合、その真意を問いただすのがおすすめだ。相手のなかに潜む差別意識を認識するきっかけになるだろう。

【各団体・教育】継続的な意識改革が鍵

マイクロアグレッションをなくすためには、教育の普及が欠かせない。企業・教育機関・自治体のなかには、すでに積極的な啓蒙活動に取り組んでいるところも多くある。

セミナーや授業では、マイクロアグレッションの具体例や影響を挙げながら、どのような言動が相手を傷つける差別に当たるのか、一つひとつ学んでいく。差別は身近なところにあり、誰もが「差別する側」になり得ることを認識するためのプログラムだ。

暮らしやすい世界の実現のために

段差に腰掛けて会話する四人の若者

Photo by Kate Kalvach on Unsplash

マイクロアグレッションは、私たちにとって非常に身近な差別の一種だ。我々の誰もが、加害者にも被害者にもなり得るだろう。日本ではまだまだ「マイクロアグレッション」という言葉自体が一般的ではない。

これから先、マイクロアグレッションの存在を知り、意識することが、グローバル世界の中で誰もが幸せに暮らすための第一歩になるだろう。

※掲載している情報は、2021年3月29日時点のものです。

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